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54 海賊船への反撃

・・・メアリー視点へ・・・


 やはり海賊船は、ブルーノ保安官の差し金だった。


「ダーッハッハッハッ! 今度こそ、お前達は終わりだー!」

 ブルーノ保安官が私達の前に仁王立ちして、勝ち誇ったように言う。


「山賊に誘拐犯、そして今度は海賊と一緒に私達の命を狙うなんて、保安官として恥ずかしくないの?」

「ほざけ! 最後に勝ったのはワシらだ。おいロドリゴ、こいつら船ごと燃やしてしまえ!」


 海賊どもの中から、ひときわ人相の悪い大男がブルーノ保安官の前にやって来た。

「ブルーノの旦那、さっきも言いやしたが、船と獣人達は売り物なんで、全部燃やすなんてしませんぜ。」


「チッ! しかしこいつらは必ず始末するんだぞ。」

「分かってるよ。一人ずつ縛り首にして、海に捨てていけば、あとは人魚がきれいにしてくれるさ。」


 海賊どもがマストに縄をかけ、縛り首の準備を始めた。


「私達はどうなってもいいわ。だから、マリオ達は助けてあげて!」

 私はマリオ達だけでも助けなければとの一心で、ブルーノ保安官に頭を下げた。


「ダーッハッハッハッ! ようやく小娘がワシに頭を下げたわい。これで怒りも少しは収まったというものだ。」

 ブルーノ保安官は、満足そうに私の顔を覗き込む。

「しかし、ダメだー。お前達はこれから死ぬんだよ。」


 私がブルーノ保安官を睨んでいると、突然、見張りの海賊が叫んだ。

「大変だー! 親分、旗がこちらに向かって来ている!」


「何だ? もっと分るように言え!」

 海賊のロドリゴが見張りの海賊を叱りつけている。


「旗だ! ドクロのマークの旗が海面を走ってるんだ!」

 見張りの海賊の指差す方を皆で見ると、確かに黒い旗が海面を滑るようにこちらに向かって来ている。


 その旗は、みるみる海面から上に伸びていき、マストになり、海面が割れるようにして船が浮かび上がってきた。

 見たこともない湾曲した木造の船体の上から、海水が滝のように流れ落ちると、何とその甲板には、たくさんの人魚とスケルトンがイスに座っていた。


「幽霊船だーーー!」


 誰かが叫ぶと、商船の上は大騒ぎとなった。

 昔話として幽霊船の話は聞いた事はあったが、実際に見るのは初めてだ。


 幽霊船は商船に横付けすると、スケルトン達が剣を振り回しながら乗り込んできた。

 すでに逃げ腰だった海賊どもは、われ先に海賊船の方に逃げて行く。

 商船は海賊船と幽霊船に挟まれたような状態となり、ヒモで縛られた私達が商船に残され、突然の出来事に呆然としてしまった。


 ブルーノ保安官が「あいつらを燃やせ!」と叫びながら海賊船に逃げていくが、海賊どもも逃げるのに精一杯のようである。


 そして、海賊船が商船から離れていくのと同時に、ひときわ大きいスケルトンが人を両脇に抱えて乗り込んできた。

 頭には、昔の海賊船のキャプテンが被るような黒い帽子を被っている。


 そのスケルトンが、縛られている私達を見回すと、おもむろに抱えていた二人の内の一人を甲板に投げ出した。

 投げ出された人は「うぐっ!」と小さく声を上げたが、私はその投げ出された人の顔を見て驚いた。

 それは、海に落ちたはずのリュウだったのである。


………


・・・リュウ視点へ・・・


 俺と気を失ったニキは、ディエゴ警備隊長の両脇に抱えられて、商船に戻ってきた。


 ディエゴに甲板に投げ出された時「うぐっ!」という声が出たが、気を失っているふりなので、そのまま目をつぶって様子をうかがう。

 そしてディエゴは、ニキを甲板にそーっと寝かすと、ヒモで縛られているメアリー達を見回した。


「俺は、幽霊船の船長だ!」


 俺はハラハラしながら、ディエゴの芝居を薄目を開けて見ている。

 そうなのだ、これは俺とニキを商船に戻すために、ディエゴ達スケルトンを使ってひと芝居打ったのである。


 ちなみに、潜水艦の上にカモフラージュとして載っている幽霊船は、ニューヨークの遊園地で廃棄予定だったバイキングの船である。

 遊園地のバイキングって、湾曲した船が前後に揺られる絶叫マシンのあれである。


 バイキングのシートに少数のスケルトンだけだと迫力が無いので、潜水艦をストレージから出した時に巻き添いを食って浮かんでいた人魚の皆さんを座らせ、シートベルトで固定してある。


 あとはディエゴの演技力に期待するしかない。


 ディエゴは寝ているニキを指差す。

「貴様らは、魔境の神聖な海を汚した! こんなゲロ臭いささげ物などいらん! 早く持って帰るがよい。」


 ニキすまない。この話はきっと長年語り継がれるだろう。

 メアリー達の様子を見ると、ディエゴの説明に皆うんうんと頷いている。

 やれやれ、どうやらこれで上手くいきそうだ。


「ドーン!」

 突然、商船の横の海に水柱が上がった。


 性懲りも無く、逃げて行った海賊船から魔銃砲による攻撃がされたようだ。

 ブルーノ保安官が「幽霊船ごと燃やしてしまえ!」と叫んでいる。

 しかし逃げながら撃っているため、まったく当たりそうにない。


 皆で呆れて海賊船の方を見ていたら、幽霊船の後ろの海面から突然火柱が上がった。


『ドッゴーーーン!』


 轟音を響かせながら、黒い何かが空に垂直に飛んでいく。

 まさか、サラが潜水艦からミサイルを発射したか?


『ゴゴゴゴー!』


 ミサイルと思われる黒い物体は、炎を噴き出しながら空高く昇っていく。

 メアリー達やスケルトン達も空を見上げて呆然としている。


「ま、まさかトマホークミサイルか?」

 俺は小さくつぶやき、自分の記憶を探る。


 確かアメリカ海軍の潜水艦には、核弾頭を装填したミサイルがあると聞いたことがある。

 核弾頭だと、この辺り一帯が吹き飛ぶぞ!


 空高く昇ったミサイルはキラリと光ると、今度はこちらに向けて落ちてきた。


『ゴゴゴゴー!』


「ワア〜〜〜!」

 空を見上げていたメアリー達やスケルトン達も、身を寄せあって絶叫している。


『ドゴーーーン!』


 ミサイルは、ブルーノ保安官の乗る海賊船の船尾に命中して、大きな水柱を上げた。


 どうやら海賊船が木造船だったため、爆発せずに船を突き破って海中に落ちたようだ。

 しかし、海賊船の船尾はめちゃくちゃで、二つあった風魔法の推進機は吹き飛び、船底から海水が浸水しているようだ。


 海賊船から「ワー! 助けてくれー!」というブルーノ保安官の声が遠く聞こえる。

 海賊船は徐々に傾いているが、運が良ければパイシースの港までたどり着けるだろう。悪ければ、人魚のエサだ。


 さて、ここで全員が我にかえり、恐る恐るディエゴの方を見た。

 頼むディエゴ、ここは上手く説明してくれ。


 ディエゴは、全員を見回すと、これをどう説明したものかと、ひたいのあぶら汗を拭いている。もちろん汗など出ていないが。


「う、う、う…」


「う?」

 全員が続きの言葉を待っている。


「う、海神様うみがみさまはお怒りじゃーーー! き、貴様らが神聖なる海で騒がしくするから、海神様はお怒りなのじゃぁ! 即刻、立ち去れーぃ!」


 メアリー達の方を見ると、全員がカクカク頷いている。

 どうやら上手く誤魔化せたようだ。


 ディエゴ達スケルトンは、メアリー達を縛ってあった縄を持っていた剣で切ると、さっさと幽霊船バイキングに乗り込んでいく。


 解放されたメアリー達やマリオ達乗組員が、商船の甲板から幽霊船の方を見ていると、幽霊船のマストの陰から、執事のセバスが姿を現した。

 手にはマイクを握っている。


「それではまもなく出発しますので、シートベルトをしっかり締めてくださ〜い。」

 スケルトン達もシートベルトを確認している。

 セバスは全員の確認が終わったのを見て「それでは出発しまーす。」と言うと、マストの陰に消えていった。


『ジリリリリ!』

 どこからかベルが鳴ると、スケルトン達がこちらに向かって手を振りだし、そのまま幽霊船はブクブクと海の中へ沈んで行った。


 どういうリアリティを追求してんだよ!

 確かに以前、リアリティのある帆船をと言った覚えがあるが、遊園地の絶叫マシンのリアリティなんか要らないんだよ。

 スケルトンにつられて、何人かの獣人が手を振っているが。


 こうして、ともかく俺達は海賊の脅威を跳ね返したのだった。


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