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50 船を探して

ここから第三章です。

第二章のタイトルを変更しました

 俺達はリオへ行く旅客船を探して、パイシースの船会社を回っていた。

 やはり、どの船会社も俺達の乗船はできないと言う。

 理由を尋ねても、窓口の従業員ではよく分からないの一点張りで、要領を得ない。


 俺達は困り果てて、波止場の堤防に腰を下ろして、港に停泊している帆船を見ていた。

「こんなに船があるのに、俺達を乗せてくれる船が一隻も無いなんて…。」

 ニキが頬杖をつきながら、ため息混じりにつぶやく。


 これは、いよいよゴードンに帆船を購入してもらい、こちらに持ってくるしかないようだ。

 しかし、サラ達に船を操作してもらうとした場合、スケルトンの姿をどうごまかすか?

 以前サラが被っていたマスクは、この真っ昼間で見られたら、かなりの確率でバレるだろう。


 そんな事を考えていたら、港に停泊している一隻の商船の上で、積荷の運搬の指示を出している人の中に、見覚えのある顔がある事に気が付いた。

 トーラスの獣人達の救出で一緒だったマリオである。


 俺達が気付くのと同時にマリオも俺達に気付いたようで、大きく手を振ってくる。

「オーイ! 今から、そっちに行くから待っててくれ。」

 マリオはそう言うと、商船のタラップを降りて俺達の前までやって来た。


「会えて良かった。昨日は大したお礼もできずに別れたから気になってたんだ。もし時間があれば、今夜夕食を一緒にどうだい?」


 俺達は顔を見合わすと、メアリーがにこやかに話し出す。

「ええ、時間はたっぷりあるから、ご一緒しようかしら。色々聴きたい事もあるし。」


「何か困り事かい? もしトーラスの一件なら、俺達の責任だから全面的に力になろう。」

「いいえ、トーラスでの件は、その、全く関係ないって訳ではないのだけど、基本的には私達の問題よ。」

「何やら色々込み入った事情がありそうだな。じゃあ夕方、あそこに見えるパオロ商会に来てくれ。その時に話を聞こう。」


 マリオはそう言うと、ふたたび商船に戻って行った。

「人助けはしとくもんだな。意外と問題解決の糸口は、こんなところにあるかもしれないぜ。」

 マーティンの言葉に全員が頷き、ぜひ解決してほしいと強く願うのだった。


………


 夕方、俺達は指定されたパオロ商会に行くと、中では大勢の人や獣人達が忙しそうに働いていた。

 受付に行くと、うさぎ型の女性の獣人が笑顔で迎えてくれる。


「いらっしゃいませ。本日はどのような御用でしょうか。」

「私はサマル王国から来た保安官のメアリーと言います。こちらで働いているマリオさんはいらっしゃいますか。」

「皆さんがサマル王国の保安官…この度はありがとうございました!」


 受付の女性が突然立ち上がって、お礼を言うから驚いた。

 俺達が驚き呆気に取られていると、受付の女性はハッとして顔を赤らめながら説明してくれる。

「あ、突然すみません。実は、さらわれた獣人の中に、私の付き合っていた人がいて…。」


 俺達は、なるほどと頷き「そりゃあ良かったな。」と言い合った。

 そんな話をしていたら、二階へ続く階段をマリオが降りて来た。


「やあ、よく来てくれた。こっちだから二階に上がってくれ!」

 俺達はマリオに続いて二階への階段を上がって行くと、会議室のような部屋に案内された。


「昼間の様子だと、込み入った話のようだったから、夕食はここで食べようと思ってな。」

 その部屋には、大きなテーブルに白布がかけてあり、人数分の椅子が用意されている。

 しかもテーブルの上には、うまそうな料理や酒が並べられていた。


「うわー! うまそうな匂い!」

 さっそくニキが目を輝かせている。

「さあさあ、パイシースで一番のレストランから取り寄せたんだ。皆んな席についてくれ。」


 俺達が適当に席についたところで、マリオによく似た男が部屋に入ってきた。

 マリオがその男を紹介してくれる。


「こちらこの商会のオーナーのパオロ。俺の兄さんだ。」

「パオロです。この度は弟がお世話になり、そして獣人達の解放を手伝っていただき本当にありがとうございました。皆さんには、感謝しかありません。」

 パオロとマリオの二人は一緒に頭を下げてくる。


「いえいえ、保安官として当たり前の事をしただけです。どうぞ頭を上げてください。」

 メアリーの言葉で、ようやく二人は頭を上げた。

 俺達もそれぞれ自己紹介していくと、ようやく全員が椅子に腰掛けた。


「それでは、良き出会いに感謝して乾杯しましょう。乾杯!」

 パオロの音頭で乾杯し、さっそくパイシースの料理を頂く事にした。


 さすがパイシースで一番のレストランから取り寄せたと言うだけあって、俺達は久しぶりに美味い料理や酒を腹一杯堪能した。

 俺達の食事が終わるのを見計らって、テーブルの上は片付けられ、お茶やコーヒーが運ばれてきた。


「さて、何か困り事との話を聞きましたが、もし宜しかったらお聞かせ願えますか。私達で力になれる事なら、何でもさせていただきます。」

 パオロがにこやかに聴いてくる。


 そこで俺達は、リオへ行く船に乗せてもらえない事、その理由は俺達がサマル王国の保安官で、魔境の調査をしているが、その妨害をする者がいる事などを説明した。


「ふむ、皆さんの状況は分かりました。しかし、なぜ魔境の調査の妨害をする必要があるのか?」

 パオロはあごに手をやり、考え込んでいる。


 そこで俺達は顔を見合わすと、メアリーが頷き、さらに説明をする。

「我々は魔境の調査とは別に、魔境周辺の獣人達の置かれた状況を調査するという目的もある。その結果によっては、獣人達の待遇は改善されると考えています。」

「そうすると、それを良く思わない連中が妨害をしているという事ですね。」

 さすがにパオロは商会を経営しているだけあって、理解が早い。


「分かりました。リオへ行く船は当方で用意致しましょう。」

「しかし、パイシースの船会社は全部当たったけど、どこも受け入れてくれなかったのだが。」


「当商会で所有している商船があるので、それをご利用ください。客船と違い必要最低限の装備しかありませんが、必ずや皆さんをリオへ送り届けてみせます。」

「やったー!」

 ニキが声を上げ、皆んなで喜び合った。


 ここで俺は、心配している事をパオロに聴いてみる事にした。

「パオロさん、ありがとうございます。ところで、所有する商船で俺達を送るとすると、こちらの商会にもご迷惑がかかるかもしれません。」


「なぁに、危険は承知の上です。それに私達は商人です。あなた方の調査が上手く行く事が、我々の利益につながると判断したまでですよ。」

「ありがとう、世話になる。」

 メアリーは立ち上がると、パオロと固い握手を交わした。


 やれやれ、これで俺もニューヨークの工房の怪しげな帆船を使う必要は無さそうだ。

 とはいえ、いつブルーノ保安官達の嫌がらせがあるかも知れないから、気を抜く事はできないが。


 俺は船が見つかった安堵と、これからの船旅の事を思い気を引き締めるのだった。

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