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46 人質奪還作戦

 俺達は捕らわれている獣人達を探すためにトーラスの北側にある墓地に来たが、俺はすぐに街の南外れにある竜神の教会に引き返す事になった。


 慣れない街を夜に一人で縦断するとなると、なかなか難しい。

 なんせ街の中の道は曲がりくねっているのだ。

 ついさっき通った道のはずだが、逆に戻ろうとすると、全く知らない道のように見える。さらに街灯もないから、余計に分からない。

 俺はたっぷり1時間以上の時間をかけてトーラスの街の南側にある竜神の教会にたどり着き、教会の扉を開けた。


「シスター! 大丈夫か?」

「どうされたのですか?」

「あれ? 確かシスターが大怪我したって話を聞いて、慌てて引き返したんだけど。」

「いいえ、私は何事もありませんが?」

「そうなのか? 良かった〜。」


 俺はホッとして、ある事に気が付いた。これは、何かの罠だったのではなかろうかと。

 俺一人が獣人の捜索から外れる事に意味は無いように思うが、胸騒ぎもするので、俺は急いで墓地に引き返す事にした。

 正直、俺の足腰はフラフラである。


………


 その頃、トーラスの街の北側にある墓地では、メアリー達による獣人達の捜索が始められていた。

 メアリー、マーティン、テッド、ニキ、そしてマリオの5人で、墓地の入口からそれぞれ別れて墓の中を一つ一つ確かめていく。

 既に暗くなったため、松明を持って探すのは骨の折れる作業となった。

 カルロス神父は、墓地の入口に待機して、獣人達が見つかれば預かる役目となっている。


 メアリー達が墓地の中に入って行き、姿が見えなくなると、カルロス神父の下にブルーノ保安官が現れた。

「奴らは、予定通り墓地の中に入って行ったようだな。」

「何も知らずに、ご苦労な事だよ。」


「獣人達は、どの辺りに隠してあるんだ?」

「墓地の奥の方の墓に、バラバラに隠してある。途中、腕利きの手下を5人程潜ませてあるから、そこで何人かは始末できるだろう。」

「それなら、わざわざ獣人を墓の中に隠す必要は無かったんじゃないのか?」

「奴らの実力が分からんのに、迂闊うかつな事はできんよ。それに、足腰の立たない獣人達を担いでフラフラになって帰ってきたら、ここで一網打尽さ。」

 カルロス神父が後ろを振り返ると、人相の悪い男達がゾロゾロと現れた。


「クックックッ、これでようやく奴らの最後だな。ダーッハッハッハッ!」


………


 サラ達は、墓地の奥の方から墓を一つ一つ確認していく。

 スケルトン兵士は、全員が暗視スコープを装着しており、暗闇でも昼間のように見えているため、動きが非常に素早い。


 スケルトン兵士達は、墓の扉を開け中を確認すると「クリア!」とヘルメットに装着されたマイクを使って連絡していく。

 執事のセバスが背負った野外無線機には、次々にスケルトン兵士達の無線が入ってくる。

 その横で、サラが腕組みをして獣人発見の連絡を待っている。もちろん、骨伝導タイプのヘッドセットを装着している。


「獣人を発見しました!」

 さっそく一人のスケルトン兵士が獣人を発見したようだ。


「獣人の様子は?」

「かなり弱ってますが、息はあります。」

「回復魔法をかけて、墓から出してあげるです。」

「ラージャ!」


 続いて他のスケルトン兵士から無線が入る。

「墓地の中を、人相の悪い奴がうろついています!」

 サラ達に緊張が走る。

「どんな様子か詳しく報告するです。」

「人相や雰囲気は殺し屋のような感じで、明かりをつけずに、墓に隠れるように立ってます。あっ、手にはナイフを持っています。」


 どうやら敵のようである。

「すぐに無力化して拘束するです。他にもいるかもしれないので、注意するです。」

「ラージャ!」


 殺し屋の背後に現れたスケルトン兵士は、殺し屋に当て身を喰らわせ、首を絞めると、一瞬で意識を刈り取っていく。


 さらに別のスケルトン兵士から無線が入る。

「今度は、殺し屋と思われる男達が2名います。応援をお願いします。」

 どうやら殺し屋2名が固まって待ち伏せしているらしい。


「近くにいるのは誰?」

「お嬢様、俺が行きます。」

 すぐに警備隊長のディエゴから無線が入る。

「よろしくお願いするです。」


 するとまた、先程のスケルトンから無線が入る。

「2名の殺し屋の方に、松明たいまつを持った女性が近づいています。…なんか『ナンマイダブ』とか唱えながら歩いてます。」


………


・・・ニキ視点へ・・・


 俺は、トーラスの墓地を一人松明を持って步いている。

 どうしてこんな肝試しみたいな事をしているかというと、リュウがシスターを見に行った後、メアリーが一緒に行くかと聴いてきたが、それでは俺はただの足手まといだから、一人で大丈夫だと見栄を張ったためだ。


 それにしても、夜中の墓地なんて恐ろしすぎる。

「ナンマイダブ〜、ナンマイダブ〜。」


 おのれ誘拐犯達め、見つけたらタダじゃおかねえぞ。

「ナンマイダブ〜、ナンマイダブ〜。」


 足をガクガクさせながら歩いていると、突然、墓の陰から人が二人出てきたから驚いた。

「ギャーーー!」

 俺はビックリして松明を放り出すと、男達2名がヘラヘラ笑いながら近付いて来た。


「へっへっへっ、こんなところまで来て残念だったなぁ。かわいそうだが、ここで死んでもらうぜ!」

 男達が何やらごちゃごちゃ言っているが、俺はそれどころじゃない。男達の後ろに、松明の明かりに照らされたスケルトンが浮かび上がったからである。


「う、後ろ! 後ろ!」

「なんだぁ? 後ろがどうしたって…ギャー!」


 二人組の後ろには、服を着たスケルトンが立っていた。


 スケルトンは意外に素早く、一人があっという間に後ろから首を締められ、崩れ落ちてしまった。


 もはや俺の味方は、この男だけだ。

 男は逃げ出そうとするが、逃すものか。

 俺は後ろから男にしがみつき、スケルトンへの盾にする。


「このガキ離しやがれ! ギャー! スケルトンこっち来るな!」

 男はナイフをブンブン振り回すが、スケルトンはナイフをひょいひょい避けて近づいてくる。


 しかし、ついに俺は男から振り解かれ、草むらに投げ出されてしまった。

「あぁ〜、ちょっと待ってー!」

「へっへっへっ、あばよー! ギャー!」


 逃げ出そうとした男の目の前に、なんとさっきのよりデカいスケルトンがもう一体現れた。

 そして、男はスケルトンにキ○タマを蹴り上げられた上に、首を締められて一瞬で崩れ落ちた。

 なんと頼りがいのない奴だ。


………


・・・サラ視点へ・・・


 私が殺し屋2名が出たという現場に駆けつけると、どうやら殺し屋は倒した後だった。

 警備隊長のディエゴが殺し屋を後ろ手に縄をかけ拘束している。

 その横では、ニキさんが腰が抜けたのか、地面に尻もちをついて、両手を合わせて「ナンマイダブ、ナンマイダブ」と唱えている。

 何かの呪文だろうか?


 ディエゴ達は、松明があるので暗視スコープを外しており、二人のむき出しの骸骨の顔が、地面に落ちた松明の明かりにゆらゆら照らされて、何とも言えない雰囲気をかもし出している。

 ニキさんは怖がりだから、恐ろしかろう。


 私は、ニキさんを怖がらせないよう、そっとニキさんの背後に回ると、優しく肩に手を置いた。

「大丈夫です。安心するです。」


 にっこり微笑んで話しかけたが、ニキさんは「ひっ!」と鶏が絞められたような声を出して気を失ってしまった。


「お嬢様、そりゃまずいですぜ。」

「…とりあえず、ニキさんをなんとかしないとです。」

 執事のセバスが、野外無線機を背負ってやって来る。

「お嬢様、獣人達は10人全員を発見したようです。潜んでいた殺し屋も全員拘束しました。」


「それじゃ、ここから一番近い獣人に、こちらに来るよう誘導して、ニキさんを一緒に連れ帰ってもらうです。」

「ラージャ!」




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