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42 次の街へ

 異世界の翌日、俺達はキャンサーの宿屋にいた。

 メアリーが昨夜遅くまで深酒をしたらしく、酷い二日酔いでベッドから起き上がれないようだ。

 めずらしい事もあるもんだ。


 宿屋にもう一泊すると告げ、俺の部屋にメアリーを除く全員が集まった。


「今日は思わぬ休日になったが、一日何をする?」

 そう俺が尋ねると、マーティンがこめかみを指で押さえながら答える。

「のんびり観光という訳にはいかないだろう。この街のどこにブルーノ保安官達がいるか分からんし、メアリーを一人置いておくのも危険だ。」

 テッドとニキも一緒に頷いている。


「つまり、今日は一日ここで大人しくしてるしかないという事さ。」


 次の街に急ぎたいところだが、やむを得ない。

 ここで俺は、今後の旅の行程を確認する事にした。


「ところで、これからどういう街を旅して行くんだ?」

「キャンサーの次はさらに南下してトーラスの街へ行き、次が港町のパイシースだ。ここで船に乗って、カサンドラ共和国とはおさらばだな。」


「魔境はどうなってるんだ?」

「港町パイシースの手前までしか魔境はない。ただ、パイシースから船に乗って東に向かうんだが、そこから左手に見える半島の陸地は全部魔境になっていて、その先の半島の先端にあるリオの街だけが魔境に飲み込まれずにポツンとあるんだ。」


 どうやら半島の付け根に魔境は広がっていて、その先端のリオという街だけが存在するらしい。

 ここでテッドも解説してくれる。

「リオは、サマル王国の領土で、昔はスペンサー伯爵の領土を通って陸地を行けてたんだがな。魔境が広がってからは、船でしか行けなくなっちまったんだ。」


「いずれにせよ、リオまで行ければサマル王国に戻れるから、そこまでは気を緩めず行こう。」

 マーティンの一言でその場は、お開きとなった。


 結局その日は、宿屋の裏庭でニキと一緒にゴーレムの点検をしたりして、そのまま宿屋から動く事なく一日を終えた。


………


 翌日のニューヨークでは、俺は休日だったので、朝からゴードン工房に行く事にした。

 昨夜は、ディエゴ警備隊長らスケルトン兵士への格闘術の訓練が、夜遅くまで行われている。

 さすが元兵士なだけあって、飲み込みが早く、驚かされるばかりだ。


「こちらの格闘術というのは、一つ一つの技が合理的に考えられていて、勉強になるし面白い。」とディエゴ警備隊長が言う。

 他のスケルトン達にも、おおむね好評であるようだ。


 既に格好も、全員が迷彩色の服を着ており、軍隊用の編み上げ靴を履き、手には黒いグローブをはめている。

 顔が骸骨がいこつである以外は、完全にアメリカ陸軍の兵士である。


 たった一晩であるが、動きも素人のそれではなく、経験者の動きになってきている。

 昨夜は寝ずに一晩中やっていたらしい。

 サラにユーチューブの動画とかを見つけてもらって勉強したとか。


 ちなみに、スケルトンに睡眠は必要ないらしい。

 その気になれば、休み無く永遠に戦えるとの事。なんて恐ろしい。


 その後、俺とディエゴ警備隊長と模擬格闘戦をやってみたところ、なんとか俺がディエゴ警備隊長への関節技が決まったところで俺の勝ちとなったが、そもそもスケルトンには腕とか足の筋がないから、逆関節などない。

 何なら関節外れるし。

「これは、俺の勝ちって事で良いのかな?」

「そういうルールですから、リュウ殿の勝ちです。さすがは我らの主人ですな。」


 そうやって、和気あいあいとしていたら、サラが「私もやりたいです。」と言い出した。

 すでに格好は他のスケルトン達と同じように迷彩色の服を着ており、スケルトンだが小さくて可愛い。


「とんでもありません! サラお嬢様が格闘技など、危ない真似はおやめください。」

 さっそく執事のセバスが止めに入ってきた。


「サラ君には、他に重要な役目があるから、そちらをお願いするよ。」

 エドガーが話に入ってくる。

「サラ君は、全体の取りまとめと指示をしてくれたまえ。小型の野外無線機を使うから、機器の使用方法をこれから理解してもらうよ。」


 なるほど、複雑な機器を駆使してスケルトン兵士達に指示を出す役目は、サラにピッタリだろう。


「ところで、今後はどんな予定なんじゃな?」

 ゴードンがこれからの俺達の旅の行程を聞いてきたので、俺はトーラスから港町パイシースに行き、そこから船に乗ってリオに向かう旨を説明した。


「ふむ、海か。船の上にゴーレムは出せるのかな?」

「船がどれくらいの大きさかは知らないが、ゴーレムは出せないだろうな。」

「それじゃあ、何かあった時のサポートの方法を考えておくか。」

 ゴードンは、アゴをさすりながらパソコンの置いてあるテーブルに向かって行った。


「リュウ殿、これまで身に付けた格闘術を実戦で試したいのですが、どこか機会がないでしょうか?」

 ディエゴ警備隊長が実戦の催促をしてくる。

 他のスケルトン兵士達も期待のこもった目で見てくる。目玉は無いが。


「そういう事なら、次にキャンプする事があったら、周りの警備をお願いするかな。もちろん誰にも気付かれないようにな。」

 スケルトン兵士達からは「おお〜。」という歓声が上がっていた。


………


 異世界の翌日、ようやくメアリーの二日酔いも治り、次のトーラスの街に向けて出発する事になった。


「昨日は、一日すまなかった。」

「まぁ、いい休みになったと考えよう。ところで、何があったかは教えてくれないのかい?」

 マーティンがメアリーに深酒の理由を聞いている。


「今はまだ、自分の頭の整理もできていないの。いつか話せる時が来たらこちらから話すわ。」

 メアリーが自分から話すのを待つしかないようだ。

 あのメアリーが悩む程の事ならば、簡単な問題ではないのだろう。今はそっとしておく事にした。


………


 俺達は、キャンサーの街を出発し、次のトーラスを目指して魔境を左手に見ながら、街道を南下して行く。


 キャンサーを完全に抜け出すまで、ブルーノ保安官達の妨害がないか、辺りを警戒しながら慎重に進んだが、特にこれといった妨害は無かった。

 少し拍子抜けである。


 途中で日も暮れてきたので、魔境のすぐ横でキャンプする事になった。


 俺はトイレに行くと言って、魔境の中に入り、誰もついて来ていないのを確認して、サラ達全員を召喚した。

 皆アメリカ陸軍みたいな格好をしている。

 武器は大振りのサバイバルナイフを携帯しているようだ。

 頭にも迷彩柄のヘルメットを被っているし…、いるのか?

 執事のセバスは、背中に野外無線機を背負ってサラにくっついている。

 なお、サラはヘルメットではなく、迷彩柄の帽子であり、司令的なポジションか?

 そして骨伝導タイプのヘッドセットを装着している。むちゃくちゃ良く聞こえるだろう。


「それじゃあ、約束通りに警備をお願いする。くれぐれも、他の皆んなには気付かれないように。」

「イエス、サー!」


 続いてサラが、スケルトン兵士達に向き直った。

「それでは、これから初の任務を行うです。訓練の成果を十分に発揮するです。」

「イエス、マム!」


 おいおい、どこの軍隊だよ。

 俺は一抹の不安を残しつつ、皆の元に戻った。


 夕食を終えて、焚き火を囲んでゆっくりしていると、ニキがソワソワしだして、隣のテッドに話しかけている。

「な、何かよ、魔境がやけに静かじゃねえか?」

「そういえば、いつもはコボルトの遠吠えとか聞こえるのに、今夜は何も聞こえねぇな。」

「こんな夜は、スケルトンが魔境をうろついているから静かなんだって聞いた事があってさ〜。俺スケルトンがダメなんだよ。」

「なんだそんな事か。大丈夫だよ、俺達がついてるぜ。」


 ふむ、ニキはなかなか鋭いな。まさかスケルトン兵士に護られているとは思うまい。

 ニキからすれば、恐怖でしかないだろうが。


 その頃、魔境の中では、スケルトン兵士による蹂躙じゅうりんが静かに行われていた。

 魔境のあちこちで、ゴブリンやオーク達の後ろにいつの間にかスケルトン兵士が現れ、口を手で覆うと、一瞬で首をサバイバルナイフで切り裂いていく。

 スケルトン兵士がコボルトの群れを見つけると、ヘルメットに装着された無線機でサラに連絡が入り、サラが近くのスケルトン兵士に連絡する。

「A2地点にコボルトの群れです。フォーメーションBで殲滅せんめつするです。」


 こうして、スケルトン兵士達の初めての実戦訓練は、無事に終えられたのであった。

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