34 地龍の討伐と謎の敵
「ゴーーーアーーー!」
時は少し遡り、地龍がエドワードの土魔法による攻撃を受け、咆哮を上げている。
メアリーは、エドワードが「大地の勇者」と呼ばれ、カサンドラ共和国との国境の守りを任されている事は知っていたが、実際に戦っている姿は初めて見た。
もちろん、キングブリッジ学園時代に、学園のゴーレムで対戦している姿は見た事があるが、こんな強力な軍事用のゴーレムで戦っているのは初めてだったのである。
エドワードのゴーレムが、その巨大な拳を地面に叩きつけると、次々に地面が盛り上がり、巨大なトゲとなって地龍に襲いかかる。
地龍も巨大なトゲを硬いウロコで弾きながら、エドワードのゴーレムに突進してくるが、エドワードのゴーレムが直前で避けるので、当たらない。
ただ、巨大なトゲに当たったのか、地龍の顔や胸の辺りには、たくさんの傷があり血が噴き出している。
「うーん、動いてる地龍に当てるのは、なかなか難しいね。すまないが、メアリー達で地龍の動きを止めてくれないか?」
エドワードの提案に、メアリーは「分かったわ。」と応じ、すぐに仲間達に指示を出した。
「まずは、マーティンとハンスが地龍を撹乱して動きを止め、その後、テッドとマーティンは左側から、オリバーとハンスは右側から、地龍を挟んで、動けないようにしてちょうだい!」
「「「「了解!」」」」
すると、マーティンとハンスの高速ゴーレムが、地龍の周りをグルグルと回り始め、それにつられて地龍が首を右へ左へと振ると、地龍の動きが止まってしまった。
「オラー! ここで止めるぜ!」
テッドとオリバーのゴーレムが、その巨大な盾を前に出して地龍に突進し、左右から地龍を挟み込む。
すぐにマーティンとハンスのゴーレムも一緒になって地龍を挟み込んだ。
「ゴーーーアーーー!」
地龍が左右から挟み込まれ、咆哮を上げている。
「上出来だよ!」
エドワードはそう言うと、ゴーレムの巨大な両手を大きく振り上げ、地龍の目の前で振り下ろした。
『ズガーン!』
特大のトゲが地龍の胸の辺りに突き上げ、大量の血が噴き出している。
テッド達四体のゴーレムが左右に離れると、さすがの地龍も、たまらず横倒しになった。
「これで最後よ。」
メアリーはそう言うと、血が噴き出している地龍の胸にゴーレムの剣を突き刺す。
すると、地龍の胸から炎が噴き出した。
メアリーのゴーレムの剣に仕込んでいる赤龍の魔石の力である。
「ゴーアー…。」
地龍は、力なく一声鳴くと、ぐったりと力尽きた。
………
メアリー達はゴーレムを降り、地龍の前に集まっていた。
俺達もニキのゴーレムで丘を下り、皆んなと合流する事ができた。
地龍の大きさは、確かに4トントラック並みの大きさで、間近で見るとその迫力はケタ違いである。
しかもゴツゴツしたコブのようなウロコで覆われており、これが突進してきたら人間などひとたまりもない。
「すげえな! 本当に地龍を討伐しちまうとは!」とニキが言うと、「すごいのは、エドワードのゴーレムだ。」とマーティンが言う。
「皆んなで力を合わせたから、ようやく討伐できたんだよ。トドメはメアリーだったしね。」
「ええ、そうね。でも、あなたの攻撃で胸に穴が空いたから、剣が刺さったのよ。」
エドワードとメアリーの会話に、「疾風」のハンスが加わってくる。
「しかし、エドワードのゴーレムは、普通のゴーレムとは思えんな。まるで、軍隊のゴーレムのようだ。」
「僕のゴーレムの事は、秘密という事でお願いしますよ。」とエドワードが言うと、ハンスも「ふむ。力のある冒険者ほど、ゴーレムの性能は秘密にしたがるものだからな。分った。」と応じていた。
「ところで、そちらは大丈夫だったのかい? 何やらカミナリが落ちたような音がしたけど。」とエドワードが聴いてきた。
地龍と闘っていたというのに、丘の上の様子まで気を配るとは、とんでもない冒険者だ。
「カミナリが落ちた?」とニキが首を捻るので、俺が「ああ〜、それならフレアキャットを黒いゴーレムが討伐した時の音だな。」と答えた。
「フレアキャット? 黒いゴーレム? どういう事。詳しく話しなさい。」とメアリーが詰め寄ってくる。
仕方なく、地龍の討伐の様子を見ていた時に、フレアキャットに襲われた事、黒いゴーレムが助けてくれた事、ニキが気を失った事を説明した。
「ふむ。黒いゴーレムが誰なのか気になるところではあるが、ニキが戦闘中に気を失うとは珍しいな。」とメアリーが言うから、俺が「ニキの寝顔も可愛いかったよ。」と言ったら、ニキにおもいっきり尻を蹴り上げられた。
………
ジェミナイの街のカサンドラ共和国側の国境警備隊の応接室では、二人の男が話をしていた。
窓から差し込む光が逆光となり、二人の顔は見えないが、一人は小太りの男で、成金趣味の装飾品を身につけ、貴族のようである。
もう一人は、堂々とした体格であるが、黒い神父の服に身を包んでいる。
「先程、魔境を監視している部下からの報告で、地龍が討伐された事が確認された。これ以上、奴らの足止めは難しそうだな。」
「魔境の調査との建前らしいですが、真の目的は獣人の解放とか。それでは、我々サターン神教の教義が誤りであったと言われてしまいます。伯爵の力で、カサンドラ共和国への入国を拒否する事は出来ないのですか?」
「奴らは、我が国が発行した正式な魔境の調査許可証を持っている。発行したのは国王との事だ。あの若造め!」
「あの若い国王は、サマル王国の国王と友人と聞きますな。若者にありがちな正義感でしょうか?」
「うむ。あの若造には、魔境の価値が分かっておらん! 魔獣から取れる素材に魔石、地上に湧いてくる魔素石まで、魔境ビジネスは多大な利益を生むのだ。そのためには、多少の犠牲はやむを得まい。」
「そのために、サターン神教は存在します。すべては、人族の利益のために。それこそが神の意思です。」
「うわさでは、魔境の調査が終わると共に、獣人の地位を元に戻して、サターン神教も追い出すよう、両国で宣言するらしい。」
「伯爵、それは困りますね。」
伯爵と呼ばれた男が身を乗り出す。
「それを阻止するためには、例の計画を早く進める必要があるが、どの程度進んどるのか?」
「ええ、準備は予定どおり進んでいます。しかし、計画実行には、もう少し時間が必要です。」
「うむ、仕方あるまい。魔境の調査とやらは、もう一度、最初からやり直してもらおう。」
「国王に進言されるので?」
「保安官が魔境の調査中に、消えていなくなれば、再度やり直すしかないだろう?」
「なるほど、確かに魔境では何が起こるか分かりませんからね。クックックッ。」
ここまで毎日投稿してましたが、さすがに厳しくなってきました。
今後は、不定期投稿しますが、何とか最後までたどり着くよう頑張りますので、よろしくお願いします。




