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30 封鎖された国境

 「鉄壁てっぺき」のオリバーや「疾風しっぷう」のハンスから国境封鎖の話を聞いた俺達は、ジェミナイの宿屋で朝食を取りながら相談する事とした。


「国境が封鎖されたというのは、本当か?」とメアリーが聞くと、「ああ本当だ。」とハンスが答える。

「俺達はカサンドラ共和国の冒険者だ。ご存知のとおりエアリーズのバトルトーナメントに参加してたのだが、ゴーレムの修理が終わり帰国しようと昨日の昼頃ジェミナイに到着したところで、国境が封鎖されてるのを知ったのさ。」


「封鎖の理由は何なんだ?」

 マーティンが首をひねりながら聞く。

「何でも、地龍アースドラゴンが出たんで、カサンドラ共和国側が国境を封鎖しちまったらしい。」

「地龍と国境封鎖と何の関係があるんだ?」

「地龍がサマル王国側の魔境に出たので、警備のために国境を封鎖して警戒しているとか何とか言ってたが、詳しくは分からん。」


「メアリー、どうする?」とマーティンが聞くと、メアリーは「一度、国境警備隊にいって話を聞いてくるわ。」と答えた。


………


 ジェミナイの国境警備隊の応接室では、メアリーが国境警備隊長のエドワード・オースティンと話していた。


 エドワードは、20代後半の白人で、体は引き締まり、いわゆる細マッチョな上に、ブロンドの髪がゆるやかにカーブしているイケメンである。


「ちょうどいいところに来てくれたよ。こうして会うのも、キングブリッジ学園を卒業して以来かな?」

「そうね、もう10年になるのね。あなたは立派になったわ。『大地の英雄』と呼ばれているのよね。」

「やめてくれよ、しがない国境警備隊だよ。君だって、国王から重要任務を命じられるほど立派になったじゃないか。」

「ふふふ、それで今日来たのは、国境封鎖の件よ。どういう事なの?」


「うん。知っての通り、昨日、魔境に地龍アースドラゴンが出た事を理由に、カサンドラ共和国は突然ジェミナイの国境を封鎖してしまったんだ。」

 ここまでは知っている話であり、メアリーがうなずく。


「カサンドラ共和国は、地龍はサマル王国側の魔境に出たから、サマル王国で討伐せよと言ってきているんだ。」

「なんてバカなことを! 魔境に出る魔獣に国境は関係ないわ。」

「そうだね。しかし、カサンドラ共和国は地龍を討伐しなければ国境封鎖は解除しないと言っている。」


「つまり、地龍討伐のリスクを、サマル王国側に全部押し付けたいという事ね。抗議できないの?」

「抗議しても聞く耳持たずだね。サマル王国側で討伐せよの一点張りさ。このまま封鎖が続くと困るのは商人達一般市民だね。」


 メアリーはため息をついた。

「そこでだ、ちょうどいいところに君達が来たんだ。すまないが、君達で地龍を討伐してくれ。」


「ちょっと待って! 地龍討伐は、軍隊でなけりゃ無理よ。それこそ、国境警備隊を使えばいいじゃない。」

「それが、ここから西にあるリブラ平原の国境付近で、カサンドラ共和国に動きがあるとの情報があって、国境警備隊を動かせないんだ。それに、今回の地龍は群れからはぐれて一頭だけだから君なら何とかなると思うんだけど。」


「無理よ、地龍なんて…仲間の協力も得られないわ。」

「もちろん、君達だけを危険な討伐には行かせないよ。今回は君達と一緒に僕が行く。」


………


 今日もジェミナイのテッドお勧めの酒場で、皆で夕食を食べる事になった。

 昨夜のメンバーに加えて、メアリーが連れて来たイケメンの青年も一緒である。


「ジェミナイで冒険者をしているエドワードだ、よろしく。」

 ひととおり挨拶が終わると、メアリーが話しだした。


「実は国境警備隊から地龍の討伐を頼まれたの。冒険者ギルドに討伐依頼をしてあるそうだけど、誰も受け手が無くて、こちら国境警備隊から直接依頼を受けた冒険者のエドワードと、一緒に行く事になったわ。」


「地龍なんて無理だぜ。」とすぐにマーティンが反応した。

 他のメンバーも渋い顔である。


「おや、国境警備隊から君達は、強力なゴーレム乗りだと聞いてたが、違うのかい?」とエドワードがにこやかに聞いてくる。


「そういえば、どこかのオッサンのゴーレムは、地龍の突進を止めたとか何とか言ってたなぁ?」とテッドがオリバーの方をチラ見する。

「なっ! 疑っておるのか? 地龍ごとき軽くひねってやるわ。そういうお前はどうなんだ? 地龍と聞いて怖気おじけ付いたか。」

「はぁー? 俺がいつ怖気付いたって? 俺のゴーレムが地龍に負けるはずはねえ。」


 エドワードがしてやったりの表情で「それで、どうするんだい?」と言うと「地龍討伐の依頼を受けてやるわ!」とテッドとオリバーが答えた。


 結局、翌日、俺達にオリバーとハンスも加えて地龍討伐に行く事になった。

 地龍は、メアリー達6台のゴーレムで討伐する事とし、俺とニキは離れたところから様子を見て、危なくなったらジェミナイの街に連絡に走る役割になった。


………


 翌日、ニューヨークのゴードン工房に行き、俺は異世界で地龍討伐に行く事を説明した。


「ついにドラゴンと対決するんじゃな。地龍アースドラゴンというのは、どんなドラゴンなんじゃ? やはり空を飛ぶのか?」とゴードンがサラに聞いている。

「地龍は、ハードベアーを倍にしたくらいの大きさで、地上にいる魔獣では一番大きいです。空は飛べないです。」


「俺がバーゴーの魔境で見たハードベアーは、2トントラックくらいの大きさだったから、単純に4トントラックぐらいの大きさか。そんなのが突進してきたら、ゴーレムでも止められないぜ。」


「1台のゴーレムでは無理です。普通は軍隊が出動して複数台のゴーレムで止めるです。さらに、地龍は頭から尻尾にかけて硬いコブのようなウロコにおおわれていて、普通の攻撃も通用しないです。」


「そんなの、どうやって討伐するっていうんだ?」

「リュウ様のゴーレムの電流の攻撃なら、おそらく地龍の動きを一時的に止められるです。」


 皆でなるほどとうなずいたところで、俺は大事な事に気がついた。

「ところで、俺は異世界のニキと一緒に行動するんだが、どうやってニキに気付かれずにゴーレムに乗るんだ?」


 皆んな顔を見合わせている。

「確かに、一緒に行動しているのに、隠れてゴーレムを出す訳にはいかんし、ゴーレムに乗って戦っている時もどうするか問題じゃな。」とゴードンはアゴをさすりながら言う。


「それじゃあ、リュウの身代わりを置けばいいんじゃない? 蝋人形ろうにんぎょうみたいにそっくりなやつ。」とニキが言い出した。

「でも俺に似た人形を置いてても、すぐにバレるんじゃ…」

「簡単だよ。」


 それまで黙って聞いていたエドガーが急に話に割り込んできた。

「私に任してくれたまえ。」


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