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27 スケルトン達のホーム

 とりあえずその日は、日も暮れてきたので、一旦エアリーズの街に帰る事にした。

 獣人の村ではペロが心配して待ってたが、俺の元気な顔を見ると、うれしそうに飛びついてきた。しっぽの振りが尋常ではない。

 ペロには、今日の出来事は内緒だと念を押し、エアリーズのロメオの工房に向かうと、中からカナヅチの音が聞こえて来る。


『ガーン、ガーン、ガーン』

「もう、手がしびれて無理…。」


 工房にはマーティンのボコボコになったゴーレムが横たわっており、マーティンとテッドが、胸と背中の装甲に使われていた鉄板をカナヅチで叩いて直していた。


「リュウお疲れ様。今日はどうだった? 何か新しい情報があったか。」

 ニキがマーティンとテッドの監督を止めて話しかけてくる。

 ここで、今日会ったスケルトンの事を言うべきか考えたが、討伐されてはかなわないので、少し探りを入れてみる。


「いや〜、魔境で骸骨がいこつの兵士に会ってさ、びっくりしたよ。」

「ゲェ〜! そ、そりゃスケルトンじゃないか。俺は昔からスケルトンだけはダメなんだよ。よく無事だったな。」

「あ、あー。すぐに逃げたから大丈夫だった。」

 やはり、スケルトン達と友達になったというのは言わなくて良かったらしい。


「なにい! スケルトンだとー。それはいけない、すぐに討伐に向かわなくては。ニキ、リュウ、すぐにゴーレムを直してくれ!」

 マーティンとテッドが鬼の形相でこちらに向かってきた。


「うまいことを言って、ゴーレム修理から逃れようとしてもダメだ! リュウ、そのスケルトンは魔境から出てきたのか?」

 メアリーは、ピシャリと言うと、冷静に状況確認してくる。

「いや、向こうも俺に驚いて魔境の中に逃げて行ったから、大丈夫だと思う。」

「なら問題ないな。二人は明日もゴーレムの修理を続けるんだ。」


 マーティンとテッドに思いっきりにらまれた。何やら「話を合わせろよ。」とぶつぶつ言っている。


………


 翌日、ふたたび魔境に一人で入り、例の廃屋に向かった。

 今度は、すんなりとお屋敷に入れてくれ、2階の部屋に案内された。

 ソファーに座り、魔導書を眺めていると、コトリと音がして、テーブルの上に湯気のたつハーブティーが置かれていた。

 すぐ脇に骸骨のサラが立っている。


「これは、もしかして屋敷の裏に植えてあったハーブか?」

「そうです。ハーブティーが好きだったので、今も大事に育てているです。もう、私は飲めないですが…。」


 俺は、しんみりしつつハーブティーを一口飲んだ。

「美味しいよ。骸骨の呪いを解いたら、一緒に飲もうな。」

「リュウ様、お優しいお言葉ありがとうございます。しかしもういいのです。私達は魔物として生き、魔物として死んでいくです。」


「俺は諦めないぜ。そうだ、サラは闇魔法やみまほうについて知っている事はないか?」

「闇魔法は、竜神様の御使様みつかいさまだけが使える魔法と言われてるです。確かここの魔導書に記載があったと思うです。」


 サラはそう言うと、本棚から一冊の魔導書を取り出して、闇魔法について書かれた箇所を示してくれた。


「なになに…、闇魔法は魔物を使役する魔法であり、竜神の御使だけが使用できるとされている。なお、使役できる魔物は、長き時を生きたドラゴンなどの意思を通じ合える魔物のみである。なぜなら、魔物に主人と認められて契約を結ばなければならないからである。」

 ん? これはいけるんじゃないか? サラ達は意思が通じる魔物である。


「サラ、ここに記載のある契約ってどうするんだろな?」


「一般的に、契約魔法は意思の力で発動するとされてるです。契約する双方が、契約の内容に合意すれば成立するはずです。」

 なるほど、サラ達がうんと言ってくれればいいんだな。問題無さそうだ。


「えーと続きはと…、闇魔法で主従関係が結ばれると、その主人はいつでも契約した魔物を呼び出し、また送り返すことができる。その魔法の言葉は『召喚サモン』と『送還リターン』である。」


 ふむ、魔法の言葉も分かった事だし、一つ試してみるか。

「サラ、今すぐに君達を元に戻す方法は分からないけど、この屋敷から外に連れ出す方法があるんだが、試してみないか?」


 サラはキョトンとしている(ように見える)。

「リュウ様が、この闇魔法の事を言っているのであれば、それは無理な話です。これは竜神様の御使様だけが…」

「俺がその御使なんだ。」


「何ですと? リュウ様、今何とおっしゃられましたか?」

 いつの間にか、執事のセバスや警備隊長のディエゴ達が部屋の入口に立っていた。

 こいつら、盗み聞きしていたな。


「ああ、俺が竜神様の御使なんだよ。多分闇魔法が使えるはずだから、試してみたいんだ。」

「それならば、ぜひお願いしたいです。」

 サラはすぐに了承してきた。


「ちょっとお待ちください。サラお嬢様を使役するなど許されません。どうせサラお嬢様が可愛いからと、いやらしい事を考えているに違いありません。そのような事、死んだ旦那様に顔向けできません!」

 セバスがまくし立てる。いやらしい事なんて、骸骨だしなぁ。


「セバス、リュウ様はそんなお人ではないです。私達が魔物なのに、人間に戻る方法を考えて下さってる立派な方です。」

「それは、そうですが…。分かりました。我らも一緒に契約してくださいませ。」

 警備隊の皆さんも、「俺も、俺も」と手を挙げている。


「ああー分かった。それじゃ一緒に契約するから、それでいいだろ?」

 どうせ、皆んな連れて行くつもりだったから、ちょうどいい。


 俺は、部屋にスケルトン達を全員集めて、整列させ、俺の前にそれっぽくひざまずかせた。

 数えてみると、スケルトンの警備隊は10人おり、その前に警備隊長のディエゴと執事のセバス、先頭にはサラがいる。


「それでは、これから闇魔法による主従の契約を行う。」

「私達は、リュウ様を主人と認め、使役される事を誓います。」

 その瞬間、部屋の床に光り輝く複雑な魔法陣が浮かび上がり、リュウとスケルトン達を包み込んだ。


 光がおさまると、変わらぬ姿のまま、俺達は部屋にいた。

 スケルトン達が、どこか亜空間とかに収納されるとかではないらしい。

 ただ、闇魔法による契約はされた事は、その後に「召喚サモン」と唱えた時に、誰を呼び出すか頭に浮かんだことから間違いない。

 試しに、サラを呼び出したところ、それまで立っていたところから、自分の目の前に瞬間移動した。

 さらに、「送還リターン」してみると、俺の目の前から元に立っていたところに瞬間移動した。

 それだけの事であるが、スケルトン達からは、「おお〜。」という、感動の声が上がっていた。


 さて、これは問題だぞ。

 この13人のスケルトン達をこの屋敷から出してやると言った以上、どこかに召喚元となる場所が必要である。

 つまり、こいつらのホームを用意しなければならなくなった。


………


 俺はサラ達と契約した日、現実世界に戻ってからニューヨークのゴードン工房に来ている。

 メアリー達と魔物であるスケルトンを連れて旅をする事はできない。

 そうすると、スケルトン達が住めるところは、ここしかないからである。


「みんなに相談したい事があるんだ。」

 ゴードンとニキが作業の手を止めて、こちらにやって来てくれる。

「あれ? エドガーは?」と俺が聞くと、「あそこのテントで寝てるわよ。」とのこと。

 どうやらエドガーは、この前渡した魔石の研究に没頭しており、寝る間も惜しいからと工房の中にテントを立て、寝泊まりしているらしい。


「じゃあ後でいいか。実は闇魔法で異世界の魔物を使役できるようになったんだけど、住処すみかを作る必要があって、ここを住処にしてあげたいんだが、いいかな?」

「ついに闇魔法を試したんじゃな!」

「ええ〜、生きた魔物を? まさかフェンリルなの?」

 最近、ニキはラノベにハマっており、異世界の情報にかなり詳しくなっている。


「いやぁ、フェンリルとかじゃないんだけど…、会話できる魔物なんだ。」

「魔物と会話できるなんて素敵! 私はモフモフ系がいいなぁ。」

「ワシは、ドラゴンとかがいいな。一度見てみたかったんじゃ。」


 …どうしよう。二人はモフモフ、ドラゴンと盛り上がっている。

「ま、まぁ実物を見てもらった方が早いかな。それじゃあ呼ぶよ。『召喚サモン』」


 目の前に13人のスケルトンが現れた。


「「ギィヤー!! が、が、骸骨がいっぱい〜!」」


 二人は、絶叫して工房の隅に逃げていった。


「うーん、何だね? うるさいな…」

 エドガーがテントからゴソゴソ這い出してきた。

 エドガーには事前説明できてないから、さらにやばいかも。

 エドガーは、スケルトン達を見て、目をクワッと見開き固まっている。


「え、エドガー。こちら俺が異世界で使役する事になったスケルトンの皆さんです。」

「サラと言います。よろしくです。」


「どうして骸骨がしゃべれるんだー! 身体の構造はどうなってる? 是非調べさせてくれ!」

 エドガーはサラに突進し、セバス達に止められていた。

 こいつは、確かにこんなやつだった。

 

 ここまでお読みいただきありがとうございます。

 最近PVなるものの存在を知り、この小説にも読者がいる事を知りました。本当に嬉しいです。

 ここで区切りをつけ、第一章とします。

 明日から第二章を始めますので、よろしくお願いします。

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