表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/88

25 魔境の廃屋

 獣人達の村からエアリーズのロメオの工房に戻ると、マーティンとテッドは、まだ魔石に土魔法を込めていた。


「ひっ、ひっ、ふ〜」

「もう…ムリ…」


 マーティンとテッドは、全身汗だくとなり、魔素石の上に突っ伏している。

 ニキが魔素石の状態を確認し、メアリーにうなずくと、ようやくメアリーが本日の作業終了を宣言した。


「お二人とも、お疲れ様でした。大変でしたね。」と俺が声をかけると、「誰のせいで、こんなに苦労したと思っているんだ!」と軽くキレられた。


「それで、獣人達の村では、何か収穫があったのかしら?」とメアリーから聞かれたので、今日の出来事や地龍アースドラゴンの事、隣国からの難民の事などを、かいつまんで説明した。


「カサンドラ共和国は、思った以上にひどい状況のようね。」

「しかし地龍は厄介だな。それが本当なら、こんなとこでぐずぐずせず、いっきに国境を越えて、カサンドラ共和国に入るべきだ!」

 マーティンとテッドが握りこぶしを作り、メアリーに力強く国境越えを主張している。


「あら、貴方たちはゴーレムの修理が終わらないと、ここからは動けないわよ。」

「そうだぜ。今回は、罰としてゴーレムの修理をするんだから、俺とリュウはやらないからな。」

 メアリーとニキから冷たくあしらわれ、マーティンとテッドは、ヘナヘナと座り込んだ。


「えーっと、それじゃあ俺は、明日はどうしようか?」

「リュウは、地龍の動きが気になるから、もう一度獣人の村で聞き込みをしてちょうだい。」

 メアリーの指示で、明日も獣人の村に行く事になった。


………


 犬型の獣人であるペロは、ふたたびリュウが村を訪れてくれた事がうれしかった。

 昨日は、母親の傷を一瞬で治してくれ、母親と抱き合って喜んでいたら、村長の小屋に行ってしまい、お礼の言葉も言えなかったからだ。

 犬型の獣人は、種族特性のためか、よくしてくれた人にベッタリになる性格のため、もう一度会いたいと思っていたところだった。


 そのリュウは、ペロ達から地龍の事が聞きたいと、ペロ達の小屋をわざわざ訪ねてきてくれたのだった。

 なぜなら地龍に遭遇したのは、ペロ達親子だったからだった。


 そもそも僕らは、カサンドラ共和国にある国境に近いキャンサーの街に住んでいた。

 その頃は、お父さんも生きていて親子3人貧しいながらも、幸せだった。

 ところが、そんな幸せは長く続く事はなかった。


「急いで村を出るぞ。みんな支度をしてくれ。」

「あなた急にどうしたの?」

「保安官が獣人を集めている。今度はストームキャット討伐に必要だからって理由だが、獣人をエサにする気だ。」


「でも、ここを出て、どこに行くっていうの?」

「隣のサマル王国に行こう。本当は獣王国に行きたいところだが、遠すぎるし西の山脈を3人で越えるのは無理だ。」

「国境はどうするの? 私達じゃ国境があるジェミナイの検問を通してくれないわ。」

「検問を通らずに、魔境の中を進むんだ。どうせここにいても死ぬだけだし、いちかばちかやるしかない。」


 そうして僕ら親子3人は、夜の闇にまぎれて村を出て、魔境の浅いところを北上して、国境越えを目指した。

 野宿をしながら、国境の街ジェミナイに近付き、さらに夜を待って魔境の中を国境越えをしたんだ。

 ところが、ジェミナイの警備隊に見つかるのが怖くて、少し魔境の深いところを進んだのが悪かったのか、国境を越えたと思ったところで、地龍に遭遇してしまった。


『ゴゴガァ!』

「地龍だ! 二人とも逃げるんだ!」


 お父さんは、僕とお母さんを逃すと地龍に向かっていったが、多分お父さんは助からなかったと思う。

 僕とお母さんは、急いで魔境を出ようとしたけど、さらに間の悪いところに、僕とお母さんの目の前には、ストームキャットが現れた。

 その時、お母さんは、ストームキャットから僕をかばって背中を切り裂かれたけど、そこに地龍が近付いてきたような足音が聞こえてきて、あわててストームキャットは逃げていったんだ。


 僕とお母さんは、命からがら魔境の中を逃げたけど、魔境の中にあった廃屋はいおくで、お母さんは動けなくなってしまった。

 背中を見ると、ひどいケガだし、廃屋にも人の気配はないし、僕は泣いてお母さんにすがりつく事しかできなかった。


 僕は、いつの間にかお母さんにすがりついたまま、寝てしまって朝になっていた。

 横を見ると、お母さんが横たわって目を閉じている。


「お母さん? お母さん?」


 お母さんは、静かに目を開けると僕に微笑んだ。

「ペロ、よく聞きなさい。私はもうダメだろうから、あなただけでも逃げて。」

「いやだ! お母さんも一緒に逃げよう。」

「私は背中の傷がひどいから、もう無理よ、ねっ?」

 お母さんは、優しく僕をさとすけど、そんなのは絶対にイヤだった。

 そこで、お母さんの背中の傷を確認すると、相変わらずひどいケガだけど、なぜか血が止まっている。


「お母さん、もう血が止まってるよ。ねえ、もう少し頑張って逃げようよ。」


 その時、廃屋の横にある小屋の扉が、ギギギィーときしみながら開いたんだ。

 僕らは何かいるのかと驚いたんだけど、その小屋の中を見ると、地下通路があって、そこを通ったら、ここエアリーズの獣人の村の近くに出たんだ。


………


 俺は、獣人の親子から、カサンドラ共和国からサマル王国までの逃避行の話を聞いた。

「つらい出来事だったと思うが、話してもらえてありがとう。」

「いいえ、私達の話が何かの役に立てば、いいのですけど。」

「十分役立つ情報をいただきました。しかし、その廃屋があって良かったですね。」

「ええ、かなり大きなお屋敷跡のようでしたから、昔の貴族のお屋敷だったのかもしれませんね。」

「僕、そのお屋敷跡まで、連れてってあげるよ。もしかしたら、何かお宝が眠ってるかもしれないし。」


「魔境の中にあるんだろ? 危ないんじゃないか。」

「大丈夫だよ。僕らが通ってきた地下通路があるから。ねえ母さんいいでしょ。何かお礼がしたいんだよ。」


 ペロに根負けして、俺はペロに連れられて、魔境の廃屋を確認する事にした。母親は、まだ体力が戻っておらず、村に残っている。

 ペロについて魔境に入ると、岩の横に隠れるように洞穴の入口があり、少し進むと、人工的に作られた通路になっていた。


「リュウ、言ったとおり地下通路があっただろ。」

「本当だな。そのお屋敷の貴族が作った脱出用の通路だったのかもな。」


 そしてついに、俺達は魔境の中の廃屋にたどり着いた。

 元は、かなり立派なお屋敷であった事が伺われるが、今や完全な廃屋となっており、幽霊屋敷のようである。

 ペロは早速、屋敷に入れる入口を探しているが、玄関は閉ざされていて入れない。


 俺は、屋敷の裏に回ってみたところ、花壇にキレイな花が咲いている。匂いを嗅いでみると、ハーブのような香りがする。

 雑草も抜いてあるようで、誰かが手入れしているとしか思えない。


「ギャァー! リュウ助けて!」

 あわてて振り返ると、ペロは、武装した骸骨の兵士に捕まっていた。


 俺は、ここが魔境である事を忘れていたようである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ