22 エアリーズのバトルトーナメント
異世界の翌日、俺達はエアリーズに到着すると、メアリーは先に領主にあいさつに行くと言って、一人で領主の館に向かった。
他のメンバーは、ロメオが街の案内をしたいと言うので、一緒に回っている。
「あそこに見えるのが、明日ゴーレムのバトルトーナメントが開かれる闘技場です。エアリーズの街だけでなく、サマル王国の他の街や隣のカサンドラ共和国からも参加者がいるほどなんですよ。」
エアリーズの街は、ロドス城塞都市くらいの大きさだが、その真ん中に、巨大なコロッセオのような施設が見えてきた。
闘技場の前では、明日のバトルトーナメントへの出場者を募集するための呼び込みがされている。
「さあさあ、いよいよ明日、バトルトーナメントが開かれるよー! 出場したい奴は、エントリーが今日までとなってるから、急いだ急いだ! でも、どいつも強力なゴーレムだから、腕に自信の無いやつはやめときなー!」
「ふっふっふっ。ずいぶん、あおるじゃないか。」
マーティンとテッドは、呼び込みの口上を余裕の表情で聞いている。
「そして今回のトーナメントの一番の目玉は、どんな攻撃でもはね返す『鉄壁』のオリバーだ。地龍の突進も防いだと言われる怪物だぁ!」
「ああん?」
テッドの表情が変わった。
「おいおい、何こわい顔してんだよ。地龍の突進なんか止められる訳ないだろ。」とニキが心配そうな顔でテッドを見上げて言う。
「そしてもう一人、目にも止まらない速さでゴーレムを操る『疾風』のハンスだ。飛龍ですら、その動きについていけないという伝説だぁ!」
「ほう?」
マーティンの目が、人を蔑むようなものに変わる。
「おいおい、マーティンも目が怖いぞ。今からロメオの工房でゴーレムの整備すんだから、変な気起こすなよ。」とニキがあわててマーティンに詰め寄る。
「ニキよ、男には避けて通ることのできない道があるのだ。」
「これは男と男のプライドをかけた戦いなのだ。」
「何カッコよく言ってるんだ! リュウからも何か言ってくれ。」
そんなニキの心配をよそに、マーティンとテッドの二人はエントリーの受付に近付いて行った。
「「出場者2名!」」
「ちょっと待てー! これからゴーレムの整備するって言っただろ! 何考えてんだよ。」
ニキがあわてて止めようとするが、「はい、2名様受付しました〜。」と受付はあっさりと完了してしまった。
「ニキ、心配はいらん。俺たちの力をほんの少しだけ見せるだけだ。それだけで、あんな奴らは瞬殺してくれる!」
マーティンとテッドは、鼻息荒く宣言するのだった。
………
翌日、花火の合図とともに、バトルトーナメントは開催された。
闘技場は、直径100メートル、高さ1メートル程の円形の舞台が真ん中にあり、その舞台の周りに5メートル程の空きスペースがあって、さらにその外側に高さ3メートル程の観客席が設けられていた。
客席は満員の観客で埋め尽くされており、その中には、リュウとニキの姿も見える。
メアリーは、昨日、エアリーズの領主にあいさつに行った折、バトルトーナメントを一緒に観戦するよう誘われ、領主と並んで貴族用の観覧席に座っている。
「今日はお誘いいただき、ありがとうございます。一度この有名なバトルトーナメントを見たいと思っていたのです。」
「ほっほっほっ。今や、サマル王国のみならず、隣のカサンドラ共和国からも出場者が来るほどのトーナメントとなりましたからな。このトーナメントは我がエアリーズの誇りですよ。」
領主と並んでにこやかな会話が続く。
「特に今回の出場者の中でも、『鉄壁』のオリバーと『疾風』のハンスは、優勝候補の筆頭で、この二人のバトルは見逃せませんな。」
「そうなんですか。私も楽しみです。」
「おう、噂をすれば一回戦から『鉄壁』のオリバーの試合のようですよ。対戦相手は…知らないゴーレムですな、かわいそうに。」
メアリーは、対戦相手のゴーレムに見覚えがあった。
実は夕べ遅くまで領主の館でもてなされ、リュウ達とあまり会話しておらず、今日、マーティンとテッドが出場する事をメアリーは聞いていなかった。
「テッドのゴーレムに似ているが、気のせいか?」
闘技場全体に、実況のアナウンスが響き渡る。
『それでは本日のバトルトーナメント第一試合を始めます! 第一試合の両選手入場です。東のゲートからは、優勝候補の「鉄壁」のオリバーが登場だー。』
オリバーのゴーレムは、高さ4メートルを超える全身型ゴーレムで、魔素石を鉄板で補強してあり、背中に水タンクを背負っている。
『バシュー!』
オリバーのゴーレムからは、肩の辺りと腰の辺りから水蒸気が噴き出した。
腕力だけでなく、脚力にも蒸気機関によるアシストがされているようだ。
ズシン、ズシンと地響きをたてながら、大歓声の中、オリバーのゴーレムは舞台へ進んでいく。
『これに対戦するのは、西のゲートに現れた「剛腕」のテッドだー! 何とこの挑戦者は、ハードベアーをねじ伏せたという化け物だー!』
「何?」と言うと、思わずメアリーは腰を浮かした。
「メアリー殿は、あの挑戦者の事をご存知ですかな?」
「い、いや、初めて見るゴーレムのようです。少し似たゴーレムを知っていたので。」とは言ったものの、内心「あのバカ何やってるのだ。」と怒りがこみ上げていた。
テッドのゴーレムも肩の辺りから水蒸気を『プシュー』と出すと、地響きを上げながら舞台に上っていった。
『さあ注目の一戦です。両者共にパワー型のゴーレムとあって、迫力のある戦いが期待されます。おーっと、両者舞台の中央に歩み寄り、睨み合いが始まってるぞー。』
「よくそんな足回りで、ハードベアーの突進を防げたものだ。」
「地龍の突進を防いだなどと、ホラ話など大概にしとけ。」
『おーっと、両者とも気合十分だー!』
両者ともストレージから剣と盾を出して構えると、試合開始のゴングが鳴った。
「まずは力比べといこうか。」
2台のゴーレムは舞台中央で、どちらも3メートルはあろうかという巨大な盾を前に出して激突した。
闘技場の全体に『ドゴーン!』という衝突音が響き渡る。
両者共に1メートル程後ろに弾かれると、今度はオリバーのゴーレムが巨大な剣を振り下ろし、テッドのゴーレムは盾でこれを防ぐと、『ゴン!』と剣と盾で打ち合う音が響き渡り、足元の石を敷き詰めた舞台にミシリとヒビが入る。
今度は、テッドのゴーレムが剣を振るい、オリバーのゴーレムが盾で防ぐ。
「やめろ〜、剣と盾がボコボコになっちまう!」とニキが叫んでいるが、観客の歓声にかき消されて舞台までは届かない。
リュウは、今にも舞台に飛び降りそうになっているニキを後ろから抱えている。
2台の巨体同士のゴーレムは、舞台中央で激しく剣と盾で戦っているため、石を敷き詰めた硬い舞台も、ついにあちこちボコボコにめくれ上がり、舞台が持つのか心配になるほどだ。
「さあ、蒸気もあったまってきたから、ここからが本気だ、いくぞ!」とオリバーは言うと、肩と腰の辺りから蒸気を吹き出しながら、盾を構えて突進してきた。
「おう。かかってこいやー!」とテッドも肩の辺りから蒸気を吹き出しながら、盾を構えて待ち構える。
『ドゴーン!』
ふたたび両者は舞台中央で激突したが、今度はテッドが押し込まれ始め、2メートル程後退した。
「はっはっは〜、やはり足回りの差が出たようだな。」
「ぬぅ〜。」
どうやら、オリバーの足回りの蒸気機関によるアシストの分だけテッドが押し負けたようであるが、めくれ上がった舞台にテッドのゴーレムの足がかかり、かろうじて両者の動きは止まった。
いよいよ、最後の死闘が始まる。




