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21 ゴーレムの研究

 新しい仲間になったエドガーが、ゴーレムを上から下までじっくり見ている。

「これがゴーレム? これに乗って動かす? ああ、つまりどこかのテーマパークのアトラクション用の乗り物って事ですか。」


「違うわよ。簡単にいうと人が乗って操縦するロボットみたいなものね。これにゴーレム用の剣と盾を装備して、戦えるようにするのよ。」


「これに乗って操縦する? しかも剣や盾を持って戦う? くっくっくっ、あーはっはっ!」


「どうしたのエドガー? ゴーレム見て驚いちゃった?」

「はっはっは〜っ、ふーっ。いや、失礼した。」


 エドガーは、大きく息を吸い込むと、一気にまくし立て始めた。

「君達は何も分かっちゃいない! これだけの大きさのロボットを動かすとなると、ガソリンエンジンだと◯◯◯ジュールのパワーが必要で、そのエンジンとガソリンタンクの重さでさらに負荷がかかるし、原子力を使うとなると、◯◯◯リュードベリの出力できる小型の原子炉など到底無理なんだよ。それはもう実証実験済みだ。」(◯◯◯のとこは早口すぎて誰も聞き取れず)


「まあ、にわかには信じられんじゃろ。どうだリュウよ、ちょっと動かしてみんか。」

「ゴードンさん、もう乗れるんですか?」

「上からチェーンでってあるから、倒れはせんだろ。」


 ようやく、自分のゴーレムに乗れるとあって、大丈夫か? という気持ちよりワクワクが抑えきれない。

 そんな気持ちのまま、黒いゴーレムの胸部ハッチを開けて乗り込んでいく。

 ハッチを閉めると、自動的に中のモニターの電源が入り、外の景色が見え、各種メーターやスイッチ類に灯りがついていく。


「リュウ、外の景色は見えるか?」工房に設置されたマイクを使ってゴードンが聴いてくる。

「ああ、みんなの様子がしっかり見えるぜ。」

「それじゃあ、足のペダルと操縦桿そうじゅうかんを動かしてみてくれ。」

 俺がペダルに足を乗せ、操縦桿を握ると、ゴーレムと手足が一体になったかのような不思議な感覚になる。

「これが土魔法の力か」と操縦席で独りごちた。


 ゴーレムは、ゆっくり一歩を踏み出したが、バランスを崩して、倒れそうになる。

 思わず操縦桿を動かして、ゴーレムの腕で何か掴もうとしたが、空を切った。

 しかし、ゴーレムは、上から吊っているチェーンにより転倒を免れている。


「やはり、バランスを取るのが難しい。何かつかまるものがほしいところだな。」

 しばらく、ゴーレムを動かしてみるが、ジタバタするだけで、なかなかうまくいかない。

「とりあえず、今日はここまでとしよう。リュウ降りて来てくれ。」


 俺がゴーレムから降りてくると、エドガーが工房の隅からゆっくりと近付いてきた。


「何でこの大きさのロボットが動くんだー! あり得ない、燃料は、動力は何なんだ?」

「だから、ロボットじゃなくてゴーレムだって言ったじゃない。魔法で動くのよ。」

「魔法って何だー。素人は訳が分からないからって、何でも魔法の一言で片付けるんじゃなーい。」


 それからみんなでエドガーをなだめ、俺が異世界に行って魔法が使えるようになった経緯を順を追って説明してあげた。


「つまり、その竜紋りゅうもんとやらで、君は魔法を使えるようになったという訳か。にわかには信じられん。すまんが、その竜紋を見せてくれないか。」とエドガーが頼み込んでくる。


「まあ、別にこのメンバーなら、隠すことでもないからな。」

 俺はそう言って、上半身裸となった。

 俺の竜紋を初めて見るニキやゴードンも興味津々(きょうみしんしん)である。


「この、アザみたいなやつが竜紋なのね。」

「ああ、使える魔法が増えると、竜紋が増えるんだ。えーと、こっちが光魔法の時で、こっちが土魔法の時に増えたやつだな。」

 俺が、胸の二つの竜紋を指して説明していると、大きく目を見開いたエドガーが、鼻息荒く近付いてきた。


「リュウ君、その竜紋をちょっとだけ削らしてもらえないかね? サンプルにちょこっとだけ。痛くしないから。はぁ〜はぁ〜。」と言いながら、どこに持っていたのか右手にはメスを握っている。


「やめんか〜! バカモーン!」

『ドンガラガッシャーン!』

 ニキとゴードン二人から激しい突っ込みを受け、エドガーは転がりながら工房の隅に消えていった。


「初めて見たが、これに竜神の力が込められとるんじゃな。」

「リュウ、この竜紋が全部そろったら、首飾りみたいに並ぶのかしら、それってなんだかクールよね。」

「俺は、警官が変なタトゥーを入れてるって問題にならないか心配だよ。」リュウがそう言うと、みんなで笑いあった。


「ところで、ワシの記憶が確かなら、この竜紋は、日本の古代から伝わる『勾玉まがたま』の形に似とるように思えるわい。」

「勾玉って?」

「ワシも詳しくは知らんが、古代の王族が身につけていたらしいの。力の象徴じゃろうな。」


「私もその形には、何か意味があるんじゃないかと思うね。そして、君の背中にも竜紋があるって事は、首飾りのように並ぶのだろう。」

 いつの間にか、エドガーは俺の背後はいごに近付いており、俺の背中を指差していた。


「えっ?」

 全員がエドガーを見た後、俺の背中を二度見した。


「「新しい竜紋が出てる〜!」」


「何、何、今度は何の魔法なの?」

「早く、魔法を使ってみるんじゃ。」

「いや、でも、魔法の呪文を知らないんですよ。」


「土魔法の時は、どうやって分かったの?」

「それは、スプーンが曲がったら土魔法が使える証拠だと言われて。」


「ふむ。魔法に呪文は関係無さそうだな。どちらかと言うと、イメージとか魔法発動のきっかけがあれば使えるようだ。」エドガーが分析を始めている。


「じゃあ、火が燃えるイメージとか、水が出るイメージしてやればいいのか?」

「ただ燃えるイメージだと、この工房が燃え上がりそうだから、小さな火の玉を出すとか、水玉を出すとかやってみたまえ。」

「なるほど分かった。」


 俺は、そう言うと右手を工房の何もない場所に向けて「ファイアーボール」と唱え、火魔法を試してみた。


「・・・」


 何も起こらず、辺りが沈黙に包まれる。

 この姿は、現職の警官がやるには恥ずかしすぎた。


「リュウ君、これは魔法の検証のためなのだ。思いつく限り、いろいろ試してくれ。」

 エドガーは、研究のためなら容赦無ようしゃない。


 そこからは、ファイアーやウォーター、エアーなど、思いつく限りの魔法の呪文を唱えたが、何も起こらず、俺の体力と精神はガリガリと削られていった。


「もう、何もイメージできない。勘弁してくれ。」

 俺はぐったりとうずくまり、ギブアップを宣言する。


「ふむ。まだ試し足りないが、もう一つの可能性として、闇魔法が出てきた可能性も考慮しなければならないな。リュウ君、闇魔法の効果は分からんのだったな。」

「ああ、竜神の御使みつかいだけが使えるらしいが、それがどんな魔法なのかは分からんらしい。」


「今度、異世界で闇魔法のことが分かったら、教えてくれたまえ。それから、魔石とやらのサンプルはないのかね。」


 ああ、それならと、俺はストレージから、魔石を取り出してエドガーに手渡した。


「くっくっくっ、新しい研究のテーマが決まった。私だけが、異世界の研究が出来る…、最高だ〜!」

エドガーのテンションは最高潮になっていた。


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