15 ゴーレムの整備は続く
バッカ工房では、ゴーレムの整備が続けられている。
元冒険者テッドのゴーレムは、上からクレーンで吊り上げられ、左足の分解作業がされていた。
「ゴーレムの大切なパーツに関節部分がある。」
ニキがゴーレムの構造について解説してくれる。
「ゴーレムの関節部分には、メタル率80パーセント以上のスライムを使う。メタル率80パーセント以上のスライムは生きた金属となり、硬い金属でありながら、弾力性があるという相反する性質を持つ。」
「おお〜夢の金属だ。」
「この性質のお陰で、ゴーレムの関節はスムーズに動くし、歩いた時の振動も吸収してくれる。」
「おお〜夢の金属だ。」
「パーツは、各ゴーレムによって違うから、一個一個土魔法で成形していかなくてはならない。」
「おお〜一点ものだ。」
その後、ニキとスライムの成形を行い、ゴーレムをせっせと組み上げていく。
「続いて操縦席の整備に移る。」とニキが宣言した。
ゴーレムの操縦席は、胸部のハッチが上に開き、前から乗り込むという構造で、子供心が刺激される。
「全身型ゴーレムはこのハッチにより操縦席が守られているが、閉じると外は何も見えなくなる。」
「そこだ! 俺もそこが謎だったんだ。」
「そこで、操縦席の壁には、メタル率50パーセント前後のスライムが貼り付けられている。」
「スライム?」
「スライムは、水魔法で、外の景色を自分の身体に投写できる。」
「光学迷彩か!」
「そこで、ゴーレムの眼の部分からの映像を水魔法で操縦席に貼り付けたスライムに投写し、外の様子を見る事ができる。」
「おお〜夢の技術だ。」
「しかも、メタル率50パーセント前後のスライムは、弾力性が高く、衝撃から操縦者を守ってくれるし、水魔法で温度調節も可能だ。」
「スライム最高!」
「しかし、水魔法の使えないリュウには、このゴーレムは乗れないぜ。」
「だぁ〜、今度は水魔法か。」
こうして、ゴーレムの整備は続けられていくのであった。
………
ニューヨークでの次の休日がやってきた。
今日は、ゴードンからリュウとニキに呼び出しがあり、指定されたニューヨーク郊外の大きな倉庫の前に来ている。
「本当にここなのリュウ?」
「ああ、確かにここのはずだけどな。」
すると、倉庫の大きな扉がギギギ〜と開き、中からツナギのワークウェアを着たゴードンが出てきた。
「リュウ、ニキ、よく来たな。こっちじゃ。」
ゴードンに呼ばれて中に入ると、広い倉庫の中に様々な工作機械が並べてあるが、特に何も作っている様子はなかった。
「ここは〜?」
「ここは、リュウの異世界での活動をサポートするために用意した工房じゃ。ゴーレムだったか? それもここで製作してやるぞ。」
「良かったじゃないリュウ、こんな大きな工房なんて初めて見たわ。…あなたが、うらやましいわ。」
「おいおい、何を他人事みたいにいうとるんじゃ。ニキもこの工房の一員じゃぞ!」
「本当に? ありがとうゴードンさん!」
「異世界の話は、滅多な事では人には言えん。バレたら、リュウはアメリカ政府に連れて行かれて、二度と会えんようになるからな。これはワシら3人だけの秘密じゃ。もちろんリュウが良ければだがな。」
俺達3人はがっしりと握手するのであった。
「ゴードン工房の始まりだぁ!」
それから俺は、ストレージから異世界の魔素石などを取り出して、工房に並べていった。
「しかし、どれもこれも信じられんものばかりじゃ。特にそのストレージというのは、これが知られたら世界がひっくり返るぞ。」
「そこまでですかね?」
「もし、これが一般的になったら、テロを防ぐ方法がないじゃろ?」
「そうよね。大統領が演説してる会場に、何も持ってなかった人が突然拳銃を出すとか。」
「それどころか、バズーカや戦車だって出せるんじゃぞ。世界の要人は怖くて外を歩けんわい。」
確かに、ストレージは恐ろしい兵器の移動手段となり得る。
しかし、呪文一つで出し入れできる謎仕様だから、その仕組みは簡単には解明されまい。
「次に、この魔素石じゃが、加工しやすく鋼より硬くなるとか、夢の鉱物じゃわい。」
「でも、土魔法が必要となると、リュウがいないと作業できないかな?」
「いや、魔素石の成形は電動カッターとかを使って何とかなるじゃろ。しかし硬化だけは、土魔法がないとどうしょうもないから、そこはリュウに頼るしかないがな。」
そう言いながら、ゴードンとニキは、作業計画を話し始めた。
「リュウ、仕事が終わった夜だけでも、この工房に顔を出してくれんか。それまでに、ワシら二人で作業を進めとくから。」
「ちょっと、二人とも昼間もここで作業するのか?」
「ワシは会長職で仕事は部下に任してるから、基本ヒマじゃ。」
「私も学校は卒業したとこだから、お父さんの自動車整備工場を手伝うくらいで、基本ヒマよ。」
「じゃあ、俺も警察の仕事を辞めて、ここで作業するよ。」
「いや、お前さんは警官を続けた方が良かろう。もし何かあった時、警察の肩書は役に立つ。この工房はゴードングループの研究を行う会社にしようと思っとる。」
「それじゃあ、私をこの会社で雇ってくれる?」
「もちろんじゃ、この会社は当面ワシとニキの二人で経営していこう。」
「やったあ!」
「ところでゴーレムはいつまでに製作すればいいんじゃ?」
「可能なら、あと一週間ほどで魔境調査に出掛けるらしくて、俺もそれについて行くかもしれないから、それまでにできたらいいんだけど、無理だよな。」
「それは不可能じゃな。しかし、リュウがその魔境の調査に出かけても、ここには毎日必ず帰ってこれるんだから、遅れても問題はないな。」
「それは、そうだな。」
次に、三人でゴーレムの設計をしていく。
「やっぱり、全身型のゴーレムがクールよね。」
「しかし、俺は水魔法が使えないから、スライムに外の様子を投影できないんだ。」
「そこは科学の力でなんとかなるじゃろ。」
「というと?」
「ゴーレムの眼にカメラを仕込んで、操縦席にモニターを設置すれば良いじゃろ。ただ、そのためにバッテリーを積まなきゃならんがね。」
「じゃあ操縦席にスライムは使わないのか?」
「いや、いずれ水魔法が使えるようになった時のために、スライムを貼っておこう。」
「ゴーレムの装甲にも気を使わなきゃならなそうだね。」
「そこは炭素繊維を使ってみようかと思うとる。炭素繊維はジェット機にも使われとる素材で、鉄よりはるかに強くて軽い。しかも耐熱性に優れとる。」
「武器はどうするの?」
「こちらなら機関銃だろうがな、どういう時に使うんじゃ?」
「魔境で魔獣相手に使うから、基本的には剣の方が良いだろうな。」
「それならチタン製の剣にすれば、鋼鉄製より硬くて軽いものができるぞ。だが、機関銃も装備したいのぉ。」
「じゃあ、銃剣型にしたら?」
「オオゥ、それはいい。魔獣相手ならいっその事グレネードランチャーにするか。」
リュウを横に置いて、ゴードンとニキは盛り上がっていくのだった。




