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12 ゴーレムの整備

 ゴーレムの整備を依頼してきた3人の騎士、メアリー、マーティン、テッドの3人と、それぞれのゴーレムの整備方針について打ち合わせをしたところでお昼になったので、みんなで工房で昼食を取る事になった。

 料理は、ニキお手製のいつもの肉を焼いただけの料理とスープである。


「やはり、庶民の料理は食べるに値しないな。」とマーティンは吐き捨てるように言う。

 ニキがギロリと音がするほどマーティンをにらんで無言で立ち上がりかけたので、とりあえずニキを背後から羽交い締めにしておいた。


「わ、私は、なかなかイケると思うぞ。」

「こんなのご馳走じゃねぇかよ!」とメアリーとテッドがフォローしてくれる。テッドの場合は、本気でそう思っている可能性があるが。


「ちょっと聞きたいんだが、貴族ってのは、普段どんな料理を食べてるんだ?」とマーティンに聞いてみた。

「ふふん、例えば肉料理でも、もっと高級な肉を特別なスパイスを使って焼き上げるし、スープだって、ちゃんとダシを取って煮込むから、旨味が違う。まあ、君らは一生口にする事は無いだろうがね。」


「ヘン! そんな料理は、うちでは食い飽きてらぁ。お前らが食ったこともない美味い料理も食べた事があるぜ。」

 ああ〜ニキよ、なぜ売り言葉に買い言葉で、そんな事を言う?


「ほう? それなら今度、その食べた事もないような美味い料理を是非食べさせてくれたまえ。」とマーティンが、完全に見下した態度で言う。

 ニキは「おう、上等だぁ」と応じた。


 食事が終わると、メアリーら3人は、ロドス城塞都市の領主と会談があるとかで、工房を出て行った。

 おいおい、この雰囲気どうしてくれるんだ?


「チクショー、貴族だかなんだか知らねぇが、飯を食わせてもらって、あの態度は何だ?」

「まあまあ、落ち着いてニキ。しかし、いくら貴族ったって、あんな言い方はないよな。」


「父ちゃん、俺は悔しいよ。あんな奴に見下されるのは我慢ならねえ。」

 ニキにはいつも世話になってるので、何とかしてやりたい。

 仕方ない、「兄弟子であるニキの仇は、弟弟子の俺が取ってやるぜ。」と言っておいた。


「本当かリュウ?」

「ああ、肉料理なら、アメリカ人の得意分野だ、任しとけ!」


………


 今後の整備計画が親方、アレックス、ニキで話し合われ、自分抜きで行われそうになったので、あわてて土魔法が使えるようになった事を説明した。


「ついにリュウも土魔法が使えるようになったか。よし、どのくらい使えるか、そこの魔素石で試してみるか。」とニキがニヤニヤしながら近くの魔素石を指差す。

「任してくれ。で、どうするんだ?」


「まずは、土魔法で表面をきれいに平にしていくのと、角を取ってきれいにするんだけど、ちょっとやってみせるから、見てな。」とニキは言うと、四角柱に切り出された魔素石にまたがると、パン作りなどに使うスケッパーのような金属製の薄い板で表面を撫ではじめた。


 すると、石材のはずなのに、魔素石の表面がまるでカンナでもかけられたように薄く削られていく。

「土魔法を使って、薄く削っていくんだ。手に角度をつけると、深く削れたり、魔素石が割れることもあるから注意してな。」


 さっそく、魔素石を削っていくが、やはり最初は平らに削れずデコボコができてしまう。

「出来るだけ手の力が均等に魔素石に当たるように、色々試してみろ。」とニキからアドバイスを受ける。


 そのうち、慣れてきたのか魔素石を平らに削れるようになってきた。

「ここまで早く土魔法を使えるようになるとは、大したもんだ。この様子なら、ゴーレムの整備を手伝ってもらってもいいかもしれんな。」と親方も唸っている。


 その後、まず、メアリーの赤いゴーレムを全員で整備して、次にマーティンの青のゴーレムを親方とアレックスで、ゴツいテッドのゴーレムをニキとリュウで手分けして整備する事になった。


 まずは、赤いゴーレムをどうやって整備するのか見せてもらう。

 親方らは、まずレッドドラゴンの皮を剥がしていく。

 皮は土魔法で魔素石に貼り付けられ、皮の端の方をリベットで固定されていたが、みな器用に剥がしていく。


 その後、魔素石の状態を確認して、「ここの部分は歪みがみられる。」とか「ここはヒビがあるから取り替えよう。」など整備方針を決めていってるようだ。


 そうこうしているうち、親方が「リュウは魔素石の成形を始めてくれ。」と言い出したので、ニキが説明してくれる。


「魔素石の形がだいたい整ったら、土魔法で魔力を込めてかたくするんだ。ちょっと見てな。」とニキは言うと、30センチほどの魔素石に土魔法で魔力を込めていく。

 そして、おもむろに近くにあった鉄板に魔素石を叩きつけた。


「カーン!」と魔素石から金属的な音が響き、よく見ると魔素石は全く傷ついてない。


「魔素石は、土魔法で加工しやすい反面、石だから強い衝撃しょうげきには弱いんだ。でも、このように魔力を込める事で、鋼よりも硬くなるんだぜ。」

 加工しやすくて鋼よりも硬いとか、夢の素材じゃないか。


 それからは、魔素石の表面を平らにしていくと、魔素石にまたがり「硬くなーれ、硬くなーれ」と魔力を込めていく。

 ある程度魔力を込めていくと、もうこれ以上、魔力が入らない事に気がついた。


「ニキ、もう魔力が入らないみたいだ。」

「そうか、案外早かったな。今日は疲れただろうから、上がって休め。」

「いや、そんなには疲れてないけど、この魔素石は魔力がいっぱいみたいなんだ。」

「へっ、こんなでかい魔素石が簡単に魔力がいっぱいになるもんか。」とニキは言いながら、魔素石の状態を確認している。


「な、何だこの硬さは? これはリュウがやったのか?」

 ニキが驚きの声を上げたので、親方とアレックスが近づいてきて、魔素石の状態を確認していく。


「信じられん事だが、リュウの土魔法はとんでもない領域にあるようじゃわい。わしも長年この仕事をしてきたが、ここまで魔力を込められる奴は初めてじゃ。」


「そんな驚くような事なのか?」


「ああ、普通はある程度魔力を込めたら、魔素石からの抵抗が強くなって、それ以上魔力を込められないんじゃが、これは魔素石に限界まで魔力が込められていて、カチンコチンじゃ。」


「つまり…やり過ぎたって事なのか?」


「その逆じゃよ! ゴーレムに使う魔素石が硬いって事は、丈夫で長持ちって事だ。これは最高の魔素石になったんじゃ。」と親方は俺の背中をバシッと叩いてくる。


「回復魔法があれだけ使えるから、土魔法もすごいだろうと思ってたけど、やっぱりスゲェじゃねぇかよ!」とニキも俺の背中をバシバシ叩いて喜んでる。痛いからやめなさい。


 そんなこんなで、その日のゴーレムの整備は終わり、続きは翌日となった。


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