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10 コボルトとの戦い

 魔素石の切出しは順調だった。

 獣人は魔法が得意ではないとの事だったが、ストレージの容量とかは変わらないようで、ニキの土魔法で切出した魔素石を次々に収納している。


「そろそろ、ストレージがいっぱいだ。」とシバが言い出した。

「こっちも、もうちょいでいっぱいだな。」とウルやハックも言う。

「リュウはどうだ?」とニキが聞いてくる。

「どうなったらいっぱいか分からんが、まだ入りそうな気がするな。」


「食事の後片付けで遅れて作業に加わったから、まだ入るのかもな。じゃああとはリュウのストレージが一杯になったら引き上げよう!」とのニキの言葉で、ウル、ハック、シバは帰り支度を始めた。


 それから、かれこれ1時間以上は黙々と魔素石をストレージに放り込んでいるが、俺のストレージはいっぱいにならない。

「おい、リュウのストレージは、いつになったら一杯になるんだよ?」とニキがジト目で睨んでくるが、正直いくらでも入る。

「いや、どういう状態がいっぱいになったと分かるのかが分からんからな…。まあ、そろそろいっぱいだな!」


 ニキだけでなく、獣人の3人もジト目で見てきたので、居心地が悪くなったので切り上げる事にした。

「それじゃ、出発だぁ!」

 ニキの掛け声で一行は帰路についた。


 くる時と同じようにシバが先頭で警戒し、続いてニキ、リュウ、ハックとウルと続いた。

 もちろん、俺はスライム狩りに余念がなく、ついにメタル率80%越えのスライムもゲットした。


 しばらく進むと、最後尾を守るウルが声を上げた。

「後ろから、何かついてきている。シバ、来てくれ!」

 シバは、最後尾に移動して辺りを伺ってから「コボルトだ! 群れで近付いてきている。」と叫んだ。


 一行に緊張が走り、ニキが声を上げた。

「俺が最後尾で引き受ける。撃ち漏らしたら、ウルとハックで頼む。リュウはシバと一緒に前に進んでくれ。」

「ちょっと俺だけ逃げるなんて出来ないぜ。」


「なあに、コボルトくらい、俺やハックでも相手できるから、心配すんな。」とウルがニヤリと笑う。

 警官である自分が民間人に守られるという事に納得いかないが、こんな装備の自分では足手まといだろうと了解する。


 コボルトというのは、魔獣としては小型らしいが、見た目は大型の狼位の大きさがあり、アメリカなら1頭でもライフルが無ければ太刀打ちできないほどだ。

 そのコボルト達は徐々に距離を詰めてきた。


 ついに先頭のコボルト2頭が恐ろしい唸り声を上げながら襲ってきた。

 ニキは、1頭を盾で防ぎ、もう1頭を剣で切り裂き、切り裂かれたコボルトは息絶えた。


「ハッハー。コボルトごときが、キャイ〜ンと言わしてやるわ!」とニキはご機嫌な様子だが、そういうのが油断につながらなければ良いのだが。


 次にコボルトは、3頭まとめて飛び込んできた。

 中央のコボルトはニキが盾で防いだが、左右の2頭がゴーレムをすり抜け、こちらに迫ってくる。

 すぐさまウルとハックが左右に分かれ、それぞれコボルトの突進を盾で防ぐ。


「ここからは行かせないぜ。」とウルは言うと、たちまちコボルトを切り裂いた。

 ハックは、コボルトを後ろから羽交い締めにして、コボルトはたまらず口から泡を吹き息絶えた。


 一行はジリジリと後退しながら魔境の出口を目指すが、コボルト達は、そうはさせまいと、隙を伺っている。

 ついにコボルト達は10頭程が姿を現した。


「そろそろだな。魔銃砲いくぜ〜!」とニキが叫ぶ。

 ニキが、操縦席の横に据え付けてあった魔銃砲の引き金を引くと、『ボン、ボン、ボン』と魔銃砲から3発の火の玉がコボルトに向けて飛び出していった。


 火の玉がかすった2頭のコボルトは、キャイン、キャイン言いながら逃げていく。

 まともに当たったコボルトは、その毛皮に引火したらしく、あっという間に燃え上がり、息絶えた。

 それを見た仲間のコボルトは、慌てて後ろに下がっていく。


「よし今のうちに逃げるぞ!」とニキが叫び、一行は魔境の出口に向かって走り、脱出に成功した。


「ふう〜、何とか脱出できたな。」と俺は汗を拭った。

「コボルトは魔境で疲れたり弱っている冒険者を群れで襲ってくるから、厄介なんだ。」とウルが解説してくれる。


………


 その後、一行は馬車で工房まで帰る事となり、のんびりと揺られて行く。


「最後の魔銃砲は凄かったな。」とリュウが言いながら魔境での出来事を思い出していた。

「ああ、魔銃砲があると、魔獣との戦闘はずいぶん楽だぜ。」とウルが答える。


「あれは何が燃えてるんだ?」

「あれは火魔法だから、何が燃えてる訳でも無いがな。」

「えっ? あれも魔法なのか?」

「ああ、魔法のファイアーボールを、魔銃砲にセットした魔石を利用して打ち出しているんだ。」


 ニキが御者席から後ろを振り返りながら、話に加わってくる。

「今日のは、フレアキャットの魔石をセットしたから、火魔法だったのさ。」


「フレアキャットってなんだ?」

「フレアキャットっていうのは、火魔法を使う魔獣さ。その魔石は火魔法の元になるし、毛皮は火の耐性があるから貴重なんだ。でも、魔境でフレアキャットに出会ったら、どうやって逃げるかを考えなきゃダメだぜ。」


 やはり、自分にも強力な装備が必要だ。

 それも、剣や盾などではなく、ゴーレムが欲しい。

 しかし、どうやって手に入れる?


「俺もゴーレムが欲しいなぁ。」

「そんじょそこらの冒険者じゃ、ゴーレムなんてものは持ってないからな。まぁ、諦めるのが無難だぜ。」とウルが言う。


 そんな事を話しながら工房にたどり着いた。

 獣人達は、ストレージに収納した魔素石や魔石を並べていき、工房内はもはや足の踏み場もない。


 俺は、ストレージの中に、一般的な容量である5メートル四方の大きさの魔素石よりはるかに大量の魔素石が自分のストレージにある事に、気が付いていた。

 とりあえず、5メートル四方程の魔素石を工房に出して、残りはそのままストレージに置いておく事にした。


 ニキは工房の前の庭にゴーレムを出して、壊れたところが無いかチェックしており、俺も一回の戦闘でゴーレムがどれくらい損傷するのか興味もあったので近付いてみる。

「どこかやられたのか?」


「いや、どこもやられてないが、関節部分のスライムが摩耗したり、機体の魔素石が傷んでいる事があるんで使ったら必ずチェックしておくんだよ。」

「そういえば、魔素石やスライムはどうやってゴーレムの部品に加工するんだ?」


「それも土魔法さ。魔法を練り込みながら、加工していくんだ。残念ながら、リュウにはまだだな。」

「ああ。また土魔法か。」とリュウは肩を落とした。


………


 その後、早々に就寝し、ニューヨークのアパートで目覚めた。

 朝のシャワーを浴びていて鏡をまじまじと見たら、自分の胸に2つ目の竜紋が出来ているのに気が付いた。


「ワーオ! ついに、2つ目の竜紋が! 何魔法なんだ? 土魔法であってくれ〜。」

 腰にタオルを巻いた状態で、シャワールームから飛び出し、キッチンへ急ぐ。


 キッチンの引き出しから、おもむろにスプーンを取り出し、曲がれ〜と念じてみる。


 スプーンは、ぐぐグッと曲がりだし、最後はグニャングニャンに曲がった事で、ついに俺は土魔法を得た事を確信した。


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