裏話2 二番目の記憶
担任直々にサボりOKの指示が出たのは、とても喜ばしいことだ。
しかし、下手に話すのもアレだよな。
なら、ブランには言わないでおこう。
そう決めた。
どうせ授業は休み明けだ。
それに、合同授業になった関係で午前は丸々潰れることになった。
というわけで、俺は午前中は丸々休みとなるわけだ。
楽しみだなぁ。
なにするかな。
……野菜の収穫しないとだ。
あと、漬物も配らないと。
遊んではいられない。
それでも、自由時間があるというのは、とてもいい物だ。
なんて、うきうきしながらその日の収穫に畑に向かっていた時だ。
夕方だった。
日が沈み始めて、少し涼しくなっていた。
「あ、いた。
ヤマト・ディケ君、ちょっと」
俺は、生徒玄関で靴を履き替えていた所、声を掛けられた。
あの白衣の教師だ。
「はい?」
珍しいなぁと思いながら、俺は教師を見た。
「休み明けからやる合同授業のことは知ってるよね?」
「はい、知ってますけど。
それが??」
俺は担任直々にサボれと言われている。
だから、関係ない話だ。
しかし、言い触らすのもアレなので、そのことに関してはなにも言わず、俺は白衣の教師の言葉を待った。
「実は、一年生と二年生に欠員が出てね。
どうも食中毒みたいなんだ。
君がその日用事があって授業を休むってことは、担任の先生から聞いてるけど、なんとか出られないかな?
人数を調整しないと、何人かその授業を見学になっちゃう子がいてね。
みんなやる気に満ちてるから可哀想で」
あ、糞担任、そういう風に話を通してくれてたのか。
しかし、食中毒とは。
いや、暑いもんね。
気を抜くと、すぐ食べ物腐っちゃうもんね。
それにしても、この人やる気のあるいい先生なんだなぁ。
なんて内心で呟いた時、ちらっとディアナの顔が浮かんだ。
アイツも出たいんだろうか。
「……はぁ、まぁいいですよ」
俺が答えると、白衣の教師はホッと胸を撫でおろした。
そして、
「ごめんね。
なんなら、罪滅ぼしに組みたい相手がいるなら取り計らうから、もし、居たら言って欲しいんだけど」
なんて言ってきた。
「……じゃあ、ディアナ、で」
俺が彼女の名前を口にした時、白衣の教師が、なんと言うのだろう?
そう、生理的に受け付けない、とても嫌な笑みを浮かべた。
ニィっと、口が弧を描いて、不気味だ。
こういう顔をする人なんかな。
「そうかそうか!!
これはちょうど良かった!!
彼女もペアができるか不安がってたからね」
なんて、白衣の教師がハイテンションで言ってくる。
早く畑行こう。
背筋がゾワゾワする。
これは、アレだ。
捕食する系の獣に見られてる時の、寒気だ。
この先生は、自覚があるのか無いのかわからないが、とにかくヤバい人だ。
早く離れるに越したことはない。
そう思ったのに、よせばいいのに俺の口からこんな問いが滑りでた。
「あ、そういや先生って、魔界出身だったんすね?」
めちゃくちゃ怖い顔をされた。
でも、それは一瞬だった。
すぐに驚いた表情に変わる。
顔芸の激しい先生だな。
「どうしてそう思うのかな?」
「魔界の匂いがするんで、そうなのかなって」
俺は答えつつ、靴を履いた。
そんな俺の肩を、白衣の教師はガっと掴んで、
「そっかー」
ニコニコ笑いつつ、返してきた。
ギリギリ、ギリギリ、と肩を締め付けられる。
「あ、あの、先生、まだなにか??」
「んー??」
「いや、肩、掴んでるんで。
ついでにちょっと痛いんで」
あと普通に怖い。
地雷、踏んだんかなぁ。
「あぁ、ごめんごめん。
いや、凄いね。
そこまでわかるんだって、物凄く驚いたんだよ」
白衣の教師は、パッとギリギリと掴んでいた手を離してくれた。
妙な沈黙が落ちた。
「あ、じゃぁ俺、用事あるんで、これで!」
ディアナが言ってたネチネチ攻撃ってこれのことか?
だとすると、女生徒に対してボディタッチしてたということになる。
セクハラ案件で訴えたら、ディアナ勝てんじゃないかな。
***
今にして思えば、糞担任に報連相くらいしておけばよかったかな。
なんか、俺が授業に出ることになったの伝わってなかったみたいだし。
今日、授業が始まって俺の姿を見つけた糞担任、めっちゃ驚いてたもんな。
あの時は、なんで驚いてるのかわからなかったけど。
ちゃんと伝わってなかったからだと知って、納得した。
「先輩。先輩、死んじゃ嫌です!!」
糞担任が傷口をなんとかしようと奮闘しているらしい。
なんか腹をまさぐられてる感覚だけならわかった。
ディアナの泣き声もすぐ近くから聞こえてくる。
でも、俺の視界は真っ白だ。
というより、その声が遠くなっていく。
そしてまた、走馬灯が流れていく。
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