裏話6
ディアナを伴って、今度は学食へ向かう。
学食から少し離れた場所でディアナに待っててもらう。
ディアナは居心地悪そうに、しかし、言われた通りに待っていた。
実はこの学食、少しだけ従業員の入れ替わりがあった。
そのためなのか、他にも理由があるのか最近は弁当の販売を始めたのである。
しかし、ディアナは元々いる方の従業員によって学食の利用が出来ず、弁当の存在も知らなかった。
俺は弁当を二人分購入した。
ディアナの好物がわからなかったので、とりあえず俺が食いたいものを買った。
カツ丼弁当(大盛り)だ。
あれだけガツガツ食べるのだから、これくらいカロリーを摂取しても大丈夫だろうと考えたためだ。
まぁ、残したなら俺が食えばいいし。
「ふはぁ♡
カツ丼だぁ!ありがとうございます、先輩!!」
満面の笑みで弁当の入った袋を見て、そして、ハッとあることに気づく。
「あ、あの、先輩、すみません、私、お金の持ち合わせが」
「安心しろ、奢りだから」
「で、でもっ!」
「いいから、いいから。
んじゃ、行くぞ」
「え、行くって、どこに?」
「落ち着いて食べられる場所」
なにしろ午前の授業、全部サボったからなぁ。
ブランか糞担任、どちらかに見つかると面倒なことになる。
俺たちは、そのまま学食を後にした。
なるべく生徒がいないルートを選んで移動する。
ディアナが驚きつつも着いてくる。
「誰とも会いませんね」
「そりゃあ、誰も来ないところ選んでるから」
「……先輩も人付き合いが苦手なんですか?」
「んー、まぁそんなとこかな」
否定する理由も、意味もないのでそのまま認める。
「変わってますね」
「元々、俺はここに入るつもりなかったから。
だから、距離を置きたいんだよ。
ここの生徒とはさ」
「ボッチ希望とは、ますます変わってますね」
「俺もそう思う」
まぁ、これには理由があるけれど。
なんていうかなぁ、色々実家のこととかウスノのこととか知られたから気まずいんだよなぁ、俺が。
しかも、妙な発作起こしてブラン達をだいぶ動揺させたし。
「でも、じゃあなんで私にこんなに優しくしてくれるんですか??」
「……自分がして欲しかったことは、誰かにしてやりたいから」
「なんですか、それ?」
「まぁ、アレだ。
お腹減ってる子は見過ごせなかっただけとも言えるかな」
そんな会話をしつつやってきたのは、別棟にある空き教室だった。
「あ、でもボッチ希望はちょっと違うぞ?」
俺はそこだけ訂正した。
そして、その空き教室の扉を開けた。
そこには、クラスこそ違うものの、同じ学年の女子が読書をしつつ待っていた。
「あ!来た来た!!」
エルリーである。
事前に携帯を使って連絡していたので、ディアナの存在にも驚いてはいなかった。
エルリーは、俺とディアナを交互に見て笑顔を浮かべる。
「今日は三人か。
でも、ちょうど良かったかも」
そんな風に言うエルリーに、俺は訊ねた。
「今日のデザートは?」
「ふふふ、今日はなんと!!」
言いつつ、エルリーは亜空間収納から大きな箱を取り出した。
「この前、ヤマト君の、誕生日だったって聞いたからね、ケーキ焼いてきたよ!」
その箱の蓋を開けて、立派なデコレーションケーキを見せてきた。
すげぇ、店で売ってるやつみたいだ。
「おおー!すげぇ!!」
むかーし、ウスノやタケルの為に母さんが買ってきたやつがこんなホールのだったなぁ。
龍神族の爺ちゃんはこの辺疎くて、どら焼きにローソクぶっ刺したやつが出てきたっけ。
あれもアレで美味しかったけど。
「ディアナちゃんもいれば、食べ切れるよね、きっと」
ニコニコとエルリーがそう言った。
「え、先輩、誕生日だったんですか?
えっと、いいんですか?
そんな大事なもの、私も食べちゃって」
「ケーキはご飯食べてからだけどねー」
ケーキの作成者であるエルリーは、やはりニコニコと答えた。
「二人で食べるよりいいだろ」
俺もそう返した。
エルリーがそれに続ける。
「そうそう、レイド君は反応薄いし。
ブラン君は、ブスっとした顔で食べるから美味しいのか不味いのかわからないし」
「まぁ、ここで飯食べてるのは内緒だけど」
「え、なんでですか?」
「なんだかんだ騒がしいんだよねー、レイド君とブラン君がいると。
読書も落ち着いて出来ないし」
エルリーが苦笑しつつ説明する。
そんな雑談をしつつ、俺たちは昼食を食べた。
そして、食べ終えるとお待ちかねのケーキである。
そのケーキに、エルリーはロウソクを刺していく。
長いのが一本、短いのが七本。
十七年、か。
なんか、なんだかんだ長生きしたなぁ。
そのロウソクに、エルリーが火を灯していく。
「ヤマト君、お誕生日おめでとう」
エルリーがそう言って、ロウソクを灯したケーキを示す。
吹き消せということだろう。
でも、その前にお礼だ。
「あ、えっと、ありがとう」
「いいんだよ。
だって、そのお陰で私は生きて、ここにいるんだから」
「大袈裟だな」
「そうでもないよ。
ドラゴンに襲われた時のこと、今でも本当に感謝してるんだから」
そんな会話を、ディアナが不思議そうに眺めていた。
彼女にしてみたら、なんのこっちゃな話題だろう。
ロウソクを吹き消して、ケーキを切り分け、三人で食べたが結局食べきれなくて、エルリーの好意でブランと寮母さんの分として、残りをお土産として貰うことになった。
人生初の誕生日ケーキは、とても甘くて美味しかった。
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