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裏話14

 とりあえず、俺視点でなにがあったのかを一通り説明した後。

 糞担任はいきなりこんなことを言ってきた。


 『と、そうだ最後にもう一つ聞かせてくれ。

 魔法で作られた友情は、友情だと思うか?』


 なんなんだ、その質問?


 「えー、唐突ですね。

 意味としては偽物の友情ってことですか?」


 『魔法じゃなくても、金で買った、と言い換えてもいい』


 「長続きするかはともかく、成立はするんじゃないですか?」


 『なるほど』


 何がなるほどなのかはさっぱりわからなかったが、担任の話はそれで終わった。

 通話を切る。

 そこでコンコン、と部屋の戸がノックされる。

 誰だ?

 弟や家族の誰かならノックなんてわざわざしない。


 「話し終わったー?」


 声をかけてきたのは、何故かコノハだった。

 時間を確認すると、すでに昼である。

 今日は弟がコノハの家に手伝いに行っているはずだ。

 そもそも忙しいはずなのに、なんでこいつ俺の家にいるんだろ?

 

 「コノハか、どうした?」


 「んー、ちょっとねぇ。

 ねぇ、入っていい?」


 「いいよ」


 見られて困るようなものは何も無い。

 俺が許可を出すと、コノハが戸を開けて部屋に入ってきた。


 「お邪魔しマース。

 あ、元気そうで良かった良かった。

 お見舞いに来たよー」


 言って、手に持ったジュースを見せてくる。

 

 「そんなんタケルに持たせればいいだろ」


 「ま、そうなんだけどさー。

 ほら、ちゃんと生きてるか私が確認したかったんだよ」


 「そりゃどうも」


 「……わかってないなぁ」


 「なにが?」


 コノハが俺に近づいてくる。

 ベッドの上で寝転がっていたので、俺は身を起こす。


 「寝てていーよ」

 

 「いや、ちょっと怖いんだけど。

 お見舞いに来ただけなんだよな?!」


 「うん、あと告白」


 「こ、こくはく?」


 なんの?


 「この前、タケルが来て言えなかったからさぁ。

 それに今回みたいなことがあったら、もう言えないかもっておもっちゃって。

 ねぇ、ずっと好きだったよ。

 私を彼女にして、そして将来的にはヤマトの嫁にしてほしいんだけど、どう?」


 「……お、男前な告白ですねコノハさん」


 「だって、そうやってでも置かないとヤマト自重しないでしょ。

 私、ヤマトの事がずっと好きだったし。

 でも、この前みたいにいつ死ぬかわかんないような行動されちゃ、とっても怖いから。

 告白しないで次に顔見るのが葬式とか絶対やだし」


 近い近い近い近い近い!!

 なんでベッドに乗ってくるの!?


 「ねぇ、ヤマトは私のこと、嫌い?」


 「えっと、嫌い、じゃないです」


 「他に好きな人いる?」


 「いない、です」


 「じゃ、付き合お?」


 「え、遠距離恋愛は、長続きしないと聞いたことが」


 「なんなら卒業まででいいよ。

 その間、ヤマトの心残りになれたら、私はそれでいい。

 ヤマトが知らないところで無茶して死なないなら、それでいい。

 なんなら、私がヤマトのこと守るから。

 ヤマトは知ってるでしょ?

 私にはそれだけの力があるってさ。

 私の知らないところで、ヤマトだけが怪我するの見たくない。

 死に顔を見たくない。

 それだけなの。

 欲をいえば、ヤマトの嫁になりたいのも本当だよ」


 え、あのなんで、腕を肩にって、ちょ押し倒さないで!!


 「か、家族いるから!!

 それはちょっと、待って!!」


 「大丈夫、私の母さんがご飯一緒に食べようって誘ったから、今、誰もいないよ」


 計画的犯行!!


 「こんなチャンス中々無いしね。

 ねぇ、返事は?」


 いや、午後も仕事あるでしょ!

 なんで服脱ごうとしてくるの?!


 「万が一のことあったら、今の俺じゃ責任とれないから、ちょっと落ち着こう!! な?!」


 「でもそうなったら、学校、行かなくて良くなるよ?」


 「いや、そうだけど。そうじゃなくて!」


 俺が言った時だった。

 またも着信があった。


 「ほら、電話!!

 学園からかも!!」


 「あとでいいじゃん」


 「良くないから!」


 「それとも、彼女?

 画面の表示のエルリーって、女の子の名前だよね?」


 「え、エルリーは、図書委員の子だよ!」


 「ホントかな?」


 コノハが俺の携帯に手を伸ばしたかと思うと、通話ボタンを押して話し始めた。

 なにやってんの、こいつ?!


 「もしもし?」


 『え? あれ? えっと、ヤマト・ディケさんの携帯、ですよね?』


 「えぇ、そうですよ。ヤマト今寝てて。

 私、ヤマトの友達のコノハです。なにか伝言があるなら伝えますよ?」


 「ちょ、返せ!!」


 『そうですか、あの、怪我したって聞いて。

 その、心配で電話したんですけど』


 「そうですか、それじゃ、エルリーさんから電話があったって伝えておきますね」


 『あ、待ってください!

 コノハさんって、この前の山の事件で救助活動してたコノハさんでいいんですよね?

 ヤマトさんともお友達だし』


 「えぇ、私も参加してました。それが?」


 『ヤマトさんにもそうですけど、コノハさんにもお礼が言いたかったんです。

 私の友達を助けてくれてありがとうございました!

 コノハさんって人がずっと励ましてくれたって言ってて、本当にありがとうございました』


 「……誰を助けたか、なんて、いちいち覚えてません。

 だからその方には気にしないでくださいと、伝えてください」


 そんなやり取りを見て、俺は実感した。

 あー、なるほど、こういうことか、忘れるって。

 客観的に見ると、すげぇ冷たい対応になるんだな。

 エルリーとの通話は、そこで終わる。

 そして、コノハがいい笑顔を向けてきた。


 「それじゃ続きしよっか!」


 コノハも忘れる。

 俺も、忘れる。

 助けた、外の連中のことは、忘れてしまう。

 でも、俺はコノハのことは忘れていない。


 「コノハ、わかった。わかったから!!

 付き合おう。

 でも、こういうのは、まだやらない。

 それでいいか?」


 俺が言うと、コノハが満足そうに微笑んだ。

 不意打ちのその笑顔に、つい、可愛いなと思ってしまった。


 「うん、それでいいよ。

 その時がくるまで、大人になるまでやらない。

 だから、死なないでね。約束だよ。

 私以外のために死んだら、許さないからね」

 

 「わかったよ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] コノハ大勝利 次会う時は四肢全部義足になってそうだけど [一言] 屯田兵同士は連携とかのために忘れないようになってんのか 同族は何かあっても助けた反対になってないから忘れないのか あとは血…
[気になる点] スレ民からもげろとか爆発とか言われるのかしら(ちょっと古いか) [一言] 幼馴染、大勝利か?! 私は魔王様押しですが幼馴染ルートかな?
[気になる点] > 俺はコノハのことは忘れていない。 屯田兵同士なら記憶処理が起きないようになってるのかな? まあそうじゃないと色々不都合起きそうだけど [一言] スレ民が知った時の反応が見たいw
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