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裏話12

 二、三日はお粥で、あと安静にという指示に従った結果。

 俺は軟禁状態となった。

 時期が時期なだけにこの期間、一番嫌味を言ってきたのが父親と祖父だった。

 帰ってきたのに寝てばっかとか、いい身分だな、とかそういうことを言われる。

 事情を話しても、でも動けるんだろ、働けと聞く耳を持たない。

 で、タチが悪いことにそれが嫌味だと欠片すら自覚が無いのだ。

 それをいえば逆ギレこそしないものの、ニヤニヤ笑ってどっか行く始末である。

 そういえば友達と遊びに行く度に、遊んでばっかとか言ってきたなあの人たち。

 祖母も何かにつけて腰が痛い、足が痛い、だから代わりに動けと言ってくる。

 なので、まだ余っている特別強い痛み止めを渡そうとすると、どっか行った。

 自分に甘く他人に厳しくがモットーなんだよなぁ。

 あと、魔法の効果が切れ始めたのかなんなのか、取れた方の手足の傷口が痛みはじめ、熱も出てきた。

 一応、あの後医者に寄って痛み止めを処方してもらった。


 それを飲んでまた寝るということを繰り返していた。


 コノハの家の手伝いには、タケルが行くことになった。

 寝てばかりも暇なので、医者に寄ったあと買ったノートをパラパラとめくる。

 数ページにわたって、思い出せる限りの聖魔学園での出来事と年末年始のことを書いておいた。

 さらに、今回の救助関連のことも書いてある。

 春休みが終わったらこのノートを学園にも、持っていかなければ。

 忘れないようにしないと。


 あ、そうだ。

 一応、今回のこともスレ民に教えておこうかな。

 そう考えてスレ立てをして、書き込みする。

 あ、コノハのこと書き込むのはやめておくか。

 ノートを見ながらフェイクを入れつつ、書き込んでいく。

 ……手足吹っ飛んだことも、刺激強そうだから書き込まないでおこう。

 自主規制、自主規制。


 スレ民との交流はいい暇つぶしになった。

 しかし、スレ民の一人が不穏なことを書き込んだためか、ただの偶然か、噂をすれば影というか。

 会長経由で、嫌なお知らせメールが届いた。


 「……話をしろって、言われてもなぁ」


 考える。

 とりあえず、返信をした。


 『どこまでどんな風に聞きましたか?』


 都合のいい事実を吹き込まれているのなら、説明する手間がかかる。

 すぐに返事がきた。

 ふむふむ。

 どうやらブチ切れて二年生を襲った弟と俺を間違えているようだ。

 ま、顔同じだしなぁ。

 どっちがどっちかなんて判別できないだろうし。

 あとアレだ、彼らの中で都合良く事実がねじ曲げられているというのがよくわかった。

 何もしてないのに殺されかけたとか、どの口が言うのか。

 俺に(実際は弟に)殺されそうになった件もだが、ほかの遭難者たちから非難されたのも何故か俺が煽動したとか言っているらしい。

 救護所への転移も、彼らの中で都合良く事実が書き換えられていた。

 とりあえず、二年生達が俺の事を殺人未遂とか暴行とかの加害者扱いして騒いでいる、というのはよくわかった。

 騒いで、そして、農業ギルドとかそっち方面では全く相手にされず、それどころか世論だと彼らが騒ぎの元凶であり、犯罪者扱いされている始末だ。

 公共の電波じゃ、そんなニュースは流れていないがネットだとまるで賞金首のような扱われ方をしているらしい。

 スレ民、そんなこと書き込んでなかったけどな。

 さて、そんな暫定犯罪者が泣きついたのが、様々な国のトップと繋がりのある二周目チート野郎だった。

 すげぇな、さすが上級国民の子供だ。

 横と縦の繋がりがエグい。

 二周目チート野郎は、二年生とも繋がりを持っていたらしい。

 で、生徒会長へ俺と話が出来るよう間を取り持ってもらおうとして現在に至るわけだ。


 冷静に俺は返信メールを打った。

 ダメ押しで、農業ギルドと猟友会の方にも事実確認をしてくれと書いておく。

 そのどちらからも公式見解というか、報告書などが上がっているし。

 現時点で可能な限り、被害者からの聞き取り調査も行われているはずだ。

 その返信をして、二時間くらいは音沙汰がなかった。

 しかし、いきなりその会長から電話がかかってきた。


 「はいはい、どうしました?」


 『呑気な声を出すな!! 殆ど死んでたってのはどういことだ! あの二年生を庇って手足が無くなったってのは!!??』


 物凄い剣幕だった。

 この人、こんな風に怒れるんだな。

 でも、今更だろそんなん。


 「あー、聞いちゃいました?

 そういうとこ個人情報守って欲しいです」


 『そういう話はしてないだろ!!』


 「んー、でもとりあえず生きてますし。

 ピンピンしてるんで大丈夫ですよ。

 まぁ、ドクターストップかかって、しばらく安静にしてなきゃですけど。

 義手と義足も手配しましたから、新学期は普通に学校行けますよ。

 あ、でもこのことは内密にお願いします」


 なんて言ったら、クソデカため息を吐かれてしまった。


 『俺が言っても説得力ないが、もう少し自分の身を大切にしろ』


 「……そう思ってくれるのなら、会長からあの二年生達に言ってくださいよ。

 ああ言う現場では、救助に来た人間の指示に従ってくれって。

 あの人たちさえ言うこと聞いてくれてたら、そもそもこんなことにはなってないですもん。

 おかげで弟にトラウマ植え付けて泣かせちゃったんすよ?」


 『……わかった。伝えておく。

 それと、本当に体は大丈夫なのか?

 ご両親の反応は?

 弟君との仲は良好だとは聞いているが。

 もし居づらいようなら、俺の家に』


 「大丈夫ですよ」

 

 言葉の途中だったが、遮って俺は言った。


 「俺は大丈夫ですよ、会長。

 心配は無用です」

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― 新着の感想 ―
[一言] 大丈夫ですよって大丈夫なはずがないのよなぁ 母親も同じノリで四肢失ってそうやなぁ だから同族嫌悪感あったのだろうし
[一言] 全然、心配無用でも大丈夫でもないよスレ主…
[一言] 俺はスレ民の立場だが、こんなひどい状況知ったら会長に全力で手を貸すわ。 なんというか、報われないのに自覚はないというか、見てられん。
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