裏話10 交流会でやらかした話2
「そーそー、この子ね!
この子の育ての親とは色々縁があってねぇ。
縁と、この子自体の魔力量や質も悪くないしってことで契約したんだけど」
シルフィーのおばちゃんはそう言って、身の上話を始めた。
お、二周目チート野郎について褒めるのかな?
ageするのかな?
そう思っていたら、
「人間の性質的に糞なのよ!
この子の育ての親も、まぁ、なんだかんだ功績を積み上げて讃えられてるけど、ファフには及ばなくてねぇ。
だんだん調子乗って行っていくし」
めっちゃsageはじめた。
糞って。
これに興味を示したのはブランだった。
珍しく、頭を下げ礼を示して、シルフィーのおばちゃんに訊ねる。
「主にどの辺が、排泄物的性質を持っていると感じたんですか?」
「あら、やっ君のお友達?
はじめまして~。
そうねぇ、うん!
まず、私たち精霊の力を我が物顔で使うのが気に食わないかなぁ。
親切で力を貸してるわけじゃないしね。
ちゃんと感謝をしてくれなきゃ。
ほら、最初は善意でやっていたことでも、お前の仕事だろとか言われるとムカつくでしょ?
あとあと最近だと、これが近いかなぁ。
時給が安いバイトに正社員と同じ働きを求めるとかね」
ブランはシルフィーのおばちゃんの返答を受けて、
「つまり、魔力量や質以上の働きを求められている、と?」
「そうそう!
あとは、いま現在みたいなことに使われるのよ。
バイト代以下の仕事をさせられたりね。
これはこれで、私たち精霊がバカにされてるとしか思えないし。
パシリ的な仕事なんて、契約してなかったごめんね。
こんな、子供の喧嘩に大人を出してくるなんてねぇ。
やっぱり親の教育が悪いと思うの。
育ての親にも色々言ったのよ?
でも、ダメ。聞く耳持たない。
あんたの親父さんと一緒、自分は絶対悪くないって無意識で思ってるし、無自覚に他人を蹴落として上に行くタイプ。
ま、人としては幸せなのかもだけどねぇ。
そうそう!
もうひとつ聞いてよ!!」
おばちゃんだけじゃないけど、女性って話し出すと止まらない人多いよなぁ。
「子供の喧嘩もそうだけどね?
この前なんてこの子、私とサッちゃん、あとディーネを呼び出してなにさせたと思う?」
サッちゃんと言うのは、火の精霊、その女王である。
総称がサラマンダーしか無いので、サラマンダーと呼ばれている。
シルフィーのおばちゃんは、サッちゃん呼びだが。
ディーネというのは、水の精霊の女王、ウンディーネのことである。
ちなみに俺は、それぞれ、サラおばちゃん、ディーネおばちゃんと呼んでいる。
「何したの?」
俺が聞き返す。
シルフィーのおばちゃんは、思い出し笑いをしながら言ってきた。
「それがね、ふふっ、オネショの、あははっ、オネショの証拠隠滅を頼んできたの!!」
オネショ?
寝小便のことか。
二周目チート野郎の周囲に侍っていた連中が、少し引いた。
もう一人の少年も反応に困っている。
「洗濯機使えよ」
ブランが呆れて呟く。
俺もつい、それに続く。
「実家の爺ちゃんは、オムツ履いてるけど。
履かないの?」
普通に疑問に思って聞いてみたら、何故かシルフィーのおばちゃんが大爆笑した。
「アッハッハッハッハッ!!
無理無理、こんなケツが青いままデカくなっただけで自分の実力とかの見分けがついてない子に、ふふっ、外で買い物なんて出来るわけないでしょ」
「おばちゃん、今はネット通販ってのがあるんだよ。
うちの方の田舎じゃ無理だけど、ここみたいな都会だとその日のうちに注文したのが届くんだよ」
「それって、御用聞きとどう違うの?」
……御用聞きってなんだろ?
俺が返答に困っていると、ブランが助け舟を出してくれた。
「あー、携帯とかの電子機器があればいつでもどこでも注文できるところっすかね?
ほら、こうやってサイトを出して」
自分の携帯端末を取り出して、画面を見せながらシルフィーのおばちゃんに説明する。
「あらまぁ、便利になったものねぇ。
え、喋ると自動で商品を探してくれるの?!
たしかに、最近の洗濯機やお風呂も喋るしねぇ」
シルフィーのおばちゃんは関心しきりだった。
そこへ、オネショをバラされ恥をかかされた二周目チート野郎が叫んでくる。
「おい、シルフィー!! そんな奴らと話すな!!
俺の言うことを聞け!!
そいつを軽く痛めつけろ!!」
三流の悪役みたいなセリフだな。
「えぇ、気乗りしないなぁ。
でも契約上逆らえないし」
なんて言いながら、シルフィーのおばちゃんが俺を見て、手を伸ばしてくる。
そして、軽くデコピンをされた。
まったく痛くない。
「はい。終わり」
なんて言うか、変な空気になってしまう。
「おい?!」
二周目チート野郎が不満そうな声を出す。
「なによ、ちゃんと命令通りに動いたわよ?
文句あるの?
それと、そんな怒鳴り声出さなくても聞こえてるし、そもそも私は『おい』なんて存在でも名前でもないの」
うわぁ。
「おばちゃんも、大変そうだね?」
「大変よぉ。まだ赤ちゃんの夜泣きの方がマシ」
二周目チート野郎、お前、風の精霊の女王に赤ちゃんの夜泣きより大変って言われてんぞ。
ブランが何故かツボって、死んだ虫みたいにピクピクしている。
顔を赤く歪ませて、二周目チート野郎がこちらを睨みつけてくる。
と、その背後からやけにのんびりした声が届いた。
「はい、言質取りました~。
ちょっと生徒指導室行こうか」
糞担任だった。
「ダメだろ、お前。
校内で魔法を使った暴力行為は禁止なんだぞ」
なんて言ってくる。
糞担任の登場に、二周目チート野郎とその取り巻きたちが、でもだのなんだのとごね始める。
「はいはい、言い分はあるだろうけど。
こういうことが、起こったら話聞くことになってんだよねぇ。
こっちの仕事も増やされてめっちゃ迷惑なんだわ。
つまり、お前らもイライラしてるだろうけど、先生もとってもイライラしています。
だから、指示に従えや糞ガキ共」
途中までそこそ丁寧な言葉だったのに、最後の一言で二周目チート野郎達は言葉を無くした。
殺気に射抜かれたためだろう。
いや、もしかしたら彼らも授業でなにかあったのかもしれない。
「おい、そっちの悪ガキ二人。
お前らも後で話聞くからな、逃げんなよ?」
「あ、じゃあこれから生徒会室行くんですけど、そこで待ってた方がいいですか?」
この人から逃げるとか無理なので、そう提案する。
「そうだな、そうしてくれ」
そうして、糞担任と二周目チート野郎達がその場を去っていった。
残された俺たちに、同じように残されたシルフィーのおばちゃんが声をかけてくる。
「それじゃ、私も帰るわ。やっ君バイバイ。
お友達も、バイバイね」
なんで微妙に幼児に対する態度なんだろ?
ま、いいけど。
こうして一悶着あったものの、俺たちはすぐに生徒会室へと向かった。
うん、まだ約束の時間じゃない。間に合う。




