裏話9 交流会でやらかした話1
興味が無さすぎた俺に危機感を抱いたのか。
それとも先方へ失礼が無いようにするためか。
交流会の相手について、生徒会長が直々に説明してくれるというので、その日俺は生徒会室へ向かっていた。
暇だということで、ブランも一緒である。
その途中で、ぞろぞろと廊下の向こうから、集団が歩いてきた。
……男二、女八の割合の集まりだ、集団で良いだろう。
んー、男の片方、どっかで見たことある顔だな。
どこだっけ?
なーんか、こう、いけ好かないというか。
あ! 二周目チート野郎! 二周目チート野郎じゃないか!!
イラついた感情だけが残ってて、顔忘れてたわ。
どうでもいいけど、廊下と道路は広がって歩くな、迷惑だ。
思うだけだ。
口には出さない。
端に寄って、通り過ぎようとする。
しかし、向こうは広がったままだ。
端によるとかする気配が皆無である。
「ん?」
2周目チート野郎が俺に気づく。
そして、少しだけ怪訝そうな顔になったかと思うと言ってきた。
「すまないが、そこどいてくれないかな?
彼女たちが通れないだろ?」
腹パンしたろかい。
思ったが口には出さない。
なぜなら、俺は大人だからだ。
「え、なんで?
そっちが一列になれば済むじゃん」
大人なので、正論をぶつけた。
そして、俺たちの方まで広がったまま歩いていた女の子達を一瞥する。
「だよなぁ、邪魔だよなぁ」
ブランも呆れたように言う。
「んじゃ、そういうわけで通らせて貰いますよっと」
俺は普通に通り抜けようとする。
それにブランが続く。
人にはパーソナルスペースというものが存在する。
簡単に言ってしまえば、他人に近づかれると不快に感じる距離のことだ。
俺が近づくと、女の子たちが動いてくれた。
なので、有難く横を通らせてもらう。
通り過ぎる時、やけに甘ったるい匂いが鼻についた。
香水かな?
好きな人は、好きそうな匂いだ。
でも、なんだろ、頭が痛くなる匂いで俺は嫌いな匂いだ。
「君は、レディーファーストという言葉を知らないのかな?」
やけに嫌味ったらしく背後からそんな声がかけられた。
しかし、無視する。
無視して、俺はブランに話しかけた。
「幼なじみから、また大量にミカン送られてきたんだけど、お前いる?」
「いる」
「んじゃ、今夜部屋に取りに来いよ、渡すから」
「サンキュー。前貰ったのも甘くて美味かった」
「お、そりゃ、よかった。伝えとくわ」
と、さっさとその場を離れようとする。
ちなみにミカンが送られてきたのは本当だ。
食いきれないらしい。
さて、その場を穏便に離れようとした俺へ、取り巻きの一人から俺の事を聞いたらしい二周目チート野郎が、挑発するように言ってきた。
「あぁ、なるほど、君が選抜メンバーに選ばれた人か。
それにしては、礼儀もなにもなってないんだな」
廊下を広がって歩き、取り巻き達とそんな迷惑この上ない行動を諌めるでもなく、レディーファーストとかのたまっちゃう奴に礼儀を説かれてしまった。
「…………ミカンは冷凍みかんにして、コタツで食うとめっちゃ美味いんだよ。」
俺は、一番美味しいと思うミカンの食べ方について、ブランに教える。
ブランも会話を合わせてくれた。
「うわ、なにそれめっちゃ美味そう」
その時だった。
少し痛い目を見せてやろうと思ったのか、なにやら呪文を唱える気配がした。
歩みを止め、そちらを振り返る。
すると、入試前に龍神族の爺ちゃんに軽く教えてもらった召喚の魔法陣が展開していた。
「少し、常識というものを教えてあげようか!」
なんて言って、二周目チート野郎が精霊を召喚する。
召喚されたのは、五大精霊の一つ、風の精霊でありその女王であるシルフィードだった。
ほかの精霊がそうであるように、ふわふわとシルフィードは二周目チート野郎の前で浮いている。
「あ、シルフィーのおばちゃん」
俺はすぐに彼女へ声をかける。
雰囲気ぶち壊しのおばちゃん呼びに、ブランも含めて空気が凍る。
「今の派遣先あの人だったんだ?」
召喚されたシルフィードこと、シルフィーのおばちゃんは俺に気づいて目を丸くする。
「あっらぁ、やっだ、やっ君!?
久しぶりねぇ。
また背伸びたんじゃない?
ちっとも、ファフのとこにこなくなったでしょ?
って、ちょっとちょっと、ガリガリじゃないの!!
ダメよ? やっ君くらいの年頃の子は太ってるくらいが丁度いいんだからね?」
召喚された精霊のやっ君呼びに、今度は周囲がザワザワしだす。
いや、たぶん、外見とは裏腹なお節介なおばちゃん節を見せつけられたためのザワザワかもしれない。
ちなみに、ファフとは龍神族の爺ちゃんのことだ。
精霊の雇用形態、契約がどうなってるかはよく知らないが、シルフィーのおばちゃんはいろんな人と契約しているらしい。
龍神族の爺ちゃんもその契約者の一人だとは聞いたことがある。
「だから、早めにノームと契約しなさいって!」
相変わらず、母ちゃんみたいだなシルフィーのおばちゃん。
俺の言葉には返さず、まくし立ててくる。
「お前、シルフィードと知り合いなんだな。
あとめっちゃ気安いし。
つーか、おばちゃん呼びしてるやつ初めて見た」
とは、ブランの言葉である。
「まぁ、うん、知り合いっちゃ知り合いか。
龍神族の爺ちゃんいるじゃん?
その爺ちゃん家で住み込みで働いてる、おばちゃん」
龍神族の爺ちゃんの家に遊びに行くと、いつも遊んでくれた存在だ。
それこそ、俺もだが年子の弟もシルフィーのおばちゃんに赤ん坊の頃、オムツを替えてもらったことがあるくらい、長い付き合いである。




