表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/148

裏話2 ~糞担任視点、中編~

 とりあえず、赴任したはいいものの、肝心の生徒の姿が無かった。

 調べてみたら、入院中だという。

 

 (あー、内臓破裂とか言ってたっけ?)


 教師陣、経営陣ともにバタバタしていた。

 先日起きたドラゴン襲撃事件の余波である。

 その理由があるとはいえ、かなりタイトなスケジュールで準備させるのはどこも一緒のようだ。

 死ねばいいのに。

 それにしても、とアールはヤマト・ディケについての情報に首を傾げる。


 「……元農高生にしちゃ、違和感があるな」


 襲撃してきたドラゴンは二匹。

 農業高校で聞いていた話が本当ならば、件の生徒、ヤマトならば無傷でさっさと倒せるレベルのはずだ。

 普通の農高の一年生なら、班を組んで罠を駆使すれば倒せるだろう。

 

 しかし、アールに入ってきた情報はどれも彼が怪我をした、というものばかりだった。


 他にも疑問点が多々あった。

 例えば、彼が怪我で病院に運ばれた時間。

 他の生徒とズレている。

 たった一人だけ、ズレている。

 遅いのだ。

 ヤマトだけ、病院に搬送された時間が遅いのである。

 後になって不調が出てきたということも考えられなくはないが、どうにもその場にいた生徒たちからの情報によると、ドラゴンの尻尾で全身を叩きつけられたらしいとある。

 救急隊員へ、痛みを訴えていたという証言もあった。

 アールは屑だが、それがなにを意味しているのかわからないほど馬鹿でも無かった。


 「なるほど」


 情報によると、今は生徒会長の計らいで他の生徒達とは別の病院に入院中である。

 

 「さて、どうするかなぁ」


 やはり気になるのは、怪我をした経緯だ。

 どうしても、あの農業高校の生徒だと知っていると、尻尾の攻撃くらい避けられたんじゃね? という考えが捨てきれない。

 

 「そもそもなんで逃げきれなかったんだ?」


 最初の救助の際に搬送してもらえなかった理由は、想像がつく。

 残る疑問はやはり、なんで逃げ遅れたのか? である。

 生徒の証言、それらをまとめた書類を漁る。

 今後の授業の参考にすると言えば、簡単に貸してくれた書類を漁る。


 事前に、ヤマトがそのドラゴンを倒したというのは知っていた。

 それを踏まえて、書類を調べて、アールは合点がいった。

 無かったのだ。

 こういう場合、一つくらいありそうな証言が無かったのだ。


 「全員が全員、ヤマトがドラゴンを倒したって言ってるって、嘘くせぇな」


 そう、一人くらい居そうなものなのだ。


 一つくらい、『彼が助けてくれた』という、そんな証言があっても良さそうなものなのに、不思議なほどそんな証言は無かった。

 その代わりとばかりに記載されている証言は、ヤマト・ディケがドラゴンを倒したというものばかりだ。


 「十中八九、()()してるな」


 改竄でもなんでもいいが、そういうことなのだろう。

 彼のような存在が支持を得ている、その事実を消そうとしているかのようだ。

 それでも、ドラゴンを倒したという一点だけは真実だから書き換えることが出来なかったのか。しなかったのか。

 

 「さて、どうするかなぁ」

 

 報酬を前払いで受け取った以上、その分の働きはしなくてはならない。

 ツマミでもつけてもらえば良かったかなとか思ってしまう。

 

 「あ、そうか。聞きに行けばいいのか」


 アールが出した答えは至極単純だった。

 生き残りの生徒にそれとなく話を聞けばいい。

 しかし、手間がかかる。めんどくさい。

 だが、また別の案が浮かんできた。

 こちらもとても単純な案だった。

 だが、これなら一人に聞けばいいのだ。

 わざわざ話を聞きに行くという面倒と手間は変わらないが、一人だけなのでまだ楽のはずだ。


 「天下の生徒会長様はどんな反応するのかねぇ」


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 今更読み始めたが、この話最高だわ!それぞれの人物の個性も出てるし。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ