裏話5
事情聴取とかあるのかな?
そう思っていたら、簡単な説明を求められて終わった。
直ぐに解放された。
ちなみにあの隊長さんは、どうやら魔王軍の偉い人だったらしい。
サボり魔の上司を探しているところで、この事件に出くわしたとかなんとか。
「なんだ、普通に強いんじゃないか」
人質として、同じく解放されたレフィアさんが声を掛けてきた。
まだ現場はザワザワしている。
「いや、たまたまですよ」
「謙遜もやりすぎると嫌味になるぞ。
しかし、せっかくのティータイムが台無しだ。
なんか、悪かったな」
「いえ」
そこでレフィアさんが何か思いついて、財布を取り出すと綺麗に畳んであるチラシを渡してきた。
「それだけ強いんだ。これに出てみるのもありじゃないか?」
俺は受け取ったチラシに視線を落とす。
それは、この町の中心にある広場で行われる、一般人参加OKの年越しプロレスのようなイベントのお知らせだった。
今日の夕方から夜にかけてやるらしい。
優勝すると賞金が出るらしい。
中々いい金額である。
「いやいやいや、魔族の人超強いじゃないですか。
すぐに負けますよ」
俺は苦笑しながら顔を上げる。
すると、もうそこにはレフィアさんの姿は無かった。
……なんだったんだろ?
妖精さんだったのかな?
とかちょっと思ってみる。
その後、俺はブランと無事合流できた。
合流した後、立てこもりの事を話した。
「は?」
「油断してくれててよかった。
誰も怪我せずに済んだし」
「いや、そういうことじゃなくて」
ブランはとても反応に困っているようだった。
「それよりも、これ知ってるか?
貰ったんだけど」
折れ目のついたチラシをブランに見せる。
「あー、これか。
毎年やってる」
「くれた人が出てみたらって言ってたんだけど、俺みたいな観光客でも出られるってきいたけど、マジ?」
俺が聞くと、ブランが頷いた。
どうせ、今日は一日遊んでそのまま年越しをする予定だった。
なら、予定に組み込んでも大丈夫だ。
そんなわけで、参加したのだが。
「えーと、これはもしや決勝進出ってやつ?」
並み居る常連挑戦者を倒して、俺は最終戦である四人抜きに挑戦することになってしまった。
どうやら、この試合賭けも並行で行われているらしく、今のところ俺に賭けていたブランが丸もうけしていた。
アイツの将来が心配になる。
賭博で身を持ち崩さなければいいな。
ブランも参加すりゃよかったのに。
観客席からざわざわと声が響く。
そりゃ、まー、そうですよね。
素人同然の学生が大の大人相手に立ち回って勝てば、そりゃこうなるよなぁ。
……畑泥退治の経験も役に立つもんだな。
帰ったらスレ民に話そう。
いい土産話ができた。
そこからは少しの休憩を挟んで、魔王軍幹部である四天王を相手にする。
仕事しなくていいのかな?
あ、でも四天王ってことは、昼間の隊長さんに会えるかな。
そんなことをダラダラ考える。
とりあえず、ここからはしばらく休憩時間らしい。
ブランに手招きされて、携帯端末を見せられる
表示されたのは、金額だ。
ここまで、俺に賭けた分の配当金が入ってきたらしい。
四天王戦からは賭けは出来ないらしい。
その辺のルールがイマイチわからない。
「でも、これで公の場でのお前の記録が残る。
少なくとも、ドラゴンを倒せる程度の実力を埋めておくのは気が引けるからな。
あ! 勘違いするなよ?!
あくまで魔族としては、強いやつが底辺扱いされてるのが我慢できないだけだからな」
とは、ブランの言葉だ。
「スレ民も言ってたけど、お前、俺の事好きだよなぁ。
あと、優しいし。俺もお前のそういうとこ好きだぞ」
「うっさい!! そういうこと真顔で言うな! 馬鹿!!」
しかし、もしもこれで優勝しちゃったりしたら、その賞金で何買おうかなぁ。
あ、あれ欲しいな。
この前、ネットだけど中古で見つけた二槽式洗濯機!
芋洗うのに丁度いいんだよなぁ。
よし、二槽式洗濯機買うためにちょっと頑張ろう!