裏話3
レフィアさんは、ちゃんと俺を交番に連れて行ってくれた。
お巡りさん達は彼女の言う通り、知り合いだったらしい。
事情を話すと、お巡りさん達もブランへ連絡をとってくれることになった。
あとは待つだけである。
なるほど、たしかにどれくらい時間がかかるかはわからない。
のんびり過ごせる喫茶店は丁度いい。
「そういえば、レフィアさんって今の魔王様と同じ名前なんですね」
注文したケーキセット。
セットなのでドリンクが付いている。
レフィアさんはコーヒーだ。
俺は、ちょっとトラウマになっている紅茶である。
あ、めっちゃいい香りだ。
なるほど、毒が入って無いとこういう香りなのか。
落ち着くなぁ。
さて、レフィアさんがホットコーヒーを口にして、俺の言葉に盛大に噎せた。
「ゲボ、ゴホゴホっ」
「大丈夫ですか?」
「あ、あぁ。急いで飲むとよくやるんだ」
ホットコーヒーなのに?
熱くないのかな?
「コーヒー、お好きなんですねぇ」
「ま、まぁな。それより、人間界だと魔王呼びの方が主流で名前はあまり覚えられないと聞いていたんだが、よく知ってるな?」
「あぁ、はい。昨日、同級生の案内で魔王城を見学してきたんですよ。
まさか現代の魔王様を画像とかじゃなくて、肖像画で見られるとは思ってませんでした」
「もしかして、初めて見たのか?」
「はい。初めて見ました現代の魔王の顔」
肖像画の魔王は目の前のレフィアさんと紫の瞳は同じだけれど、髪の色が違う。
あっちは夏空のような真っ青な髪色だった。奇抜といえば奇抜な色だが、とても綺麗な青だった。
「人間界には出回ってないのか?
ニュースで魔王の顔ぐらい見たことあるだろう」
「探せば画像くらいあるんじゃないですか?
俺、国の偉い人の顔って興味無さすぎて覚えられないんですよ」
「なるほど」
「???」
なんで納得してるんだろ、この人。
でも、レフィアさんって現代魔王の肖像画と面差し似てるし。耳の形も似てるんだよなあ。
これで本人だったら驚きだけど、んなわけないか。
「ところで、そのチョーカーなんだが」
レフィアさんが、俺の首に嵌められてるチョーカーを指さしながら聞いてきた。
「あ、あー、これですか?
ちょっと、喧嘩をしちゃって、罰としてつけられちゃいました。
魔力を封じるものらしいです」
「……どこだ? それをどこで付けられた?」
レフィアさんの瞳が細められる。
声も少しだけ低くなった。
「学校です」
「お前、聖魔学園の生徒だったのか」
「……わかるんですか?」
「まぁな。あの学園はこちら側では有名だから。
まさか、まだ続いていたとは思わなかったが。
その様子からして、お前は知らないのだろうな。
……これは礼のついでだ」
そりゃ、有名だろう。
あの学園を作る片棒を担いだのは、何代か前の魔王なんだから。
そう言って、レフィアさんがおもむろにこちらへ手を伸ばしてきた。
しかし、それは途中で止まる。
なんかよくわからないが、強盗が駆け込んできて立てこもってしまったからだ。
交番が近くにあるのに、すごいなこの強盗さん達。
……というか、やっぱり治安悪くね?