表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【無双】底辺農民学生の頑張り物語【してみた】  作者: カズキ
お前は、俺を、怒らせた
141/148

裏話 後ろ足で砂をかける

***


【ここで時は少しだけ戻る】


俺はブランに蹴りを食らわせる。

しかし、気絶することなくブランはすぐに立ち上がって、攻撃魔法を仕掛けてきた。

それを避けては蹴りつけ、なんとか気絶させようとしたが全く効果が無いようだった。

スネークさんの攻撃も難なくよけている。

ブランの目はずっと虚ろだ。


何度か攻防を繰り返した後。

ブランが口を開いた。


「殺せばいいでしょう??」


それは、ブランの口から出た言葉だった。

でも、ブランではないことがすぐにわかった。

誰かが、ブランの中にいる。


「誰だ!?」


俺の問いに、しかし、ブランの中にいるだろうその人物は答えない。


「そう、殺せばいい。

この子を殺せばいい。

そうすれば、全てが丸く収まるでしょう?」


歌うように、そいつはブランの口を借りてそんなことをいってくる。


「あー、流れ的に女神か」


スネークさんが呟いた。

ブランが軽く手を払う仕草をした。

瞬間。

スネークさんが吹っ飛ばされた。


「スネークさん!?」


「異分子が手を貸していますね。

本当はここには、ヤマト、貴方しかいないはずだったのに」


淡々と、ブランの体を乗っ取った女神がそんなことを呟いた。


「はてさて、これは誰が描いた景色(シナリオ)でしょうか?」


それは、俺に問いかけているようにも、自問のようにも思えた。


「…………」


俺が黙っていると、


「まぁ、いいでしょう。

さぁ、殺しなさい。

この子を殺しなさい。

そうすれば、この子がこれ以上、私に穢されることはない」


どうやら女神は、俺にブランを殺させたいらしい。

誰が殺すか。


「貴方が殺さないなら、私がこの子の存在を喰らいましょう」


なんて、女神が口にした瞬間。

そう、一瞬だった。

一瞬、俺の意識がとんだ。

気づいた時、俺はブランをなぐりとばしていた。

せめて気絶させなければ。

そんな考えが瞬く。

なんとかして、ブランの中から女神を追い出さなければ。


「出てけよ」


自分の口から、今まで出したことの無い声が漏れた。


「ブランの中から出てけよ、阿婆擦れ」


普段なら絶対口にしない言葉が出る。

そんな俺を見て、それから不思議そうに首を傾げる。

そして唐突に、ブランの体を乗っ取った女神が笑った。

嬉しそうに、笑った。


「あぁっ!!

そうか!!

そういうことか!!

この子が正解だった!!

ウスノじゃなかった!!

この子こそ正解だった!!」


そして、ニタァっと女神が不気味な笑顔を浮かべる。


「あぁ、やっぱり貴方はそうでなくちゃ。

貴方はそうでなくちゃ。

貴方は、愛に狂ってなきゃいけない。

いつだって愛されたいと願いながら、結局誰にも愛されない。

その絶望に喰われて、壊れなければならない。

愛に狂って、狂って狂って狂って、壊れなければいけない!!

いつだって、そう、いつだって、どの世界でも貴方はそうなのだから!!

貴方はそうなのだから!!」


何を言ってるんだ、この女神は。

いや、それよりも、ブランをなんとかしないといけない。

どうする?

どうすれば、あの乗っ取りをなんとかできる?

携帯を使って、掲示板に書き込んでる暇は無い。

考えなければ。

せめて、ブランの意識を取り戻さないと。

そこまで考えた時だった。


ふと、日記のことが頭をよぎった。


同時に、この学園に来てからのことが一気に蘇る。

その記憶の中に、それはあった。

ブチ切れて我を失ったタケルとのやり取りを思い出す。


あ、そっか。


ブランを救えるなら。

こんな使い方も悪くない。

俺が自由に出来るのは、たかが知れてる。

女神の目的とか、そんなのは全部吹っ飛んでいた。


何もかもが、無駄になる。

ウカノさんや、考察厨の企みも全て無駄になる。

それでもいいやと思った。


これなら、一石三鳥だ。


俺はブランに向かって駆け出した。

女神がブランの体を操って、魔法を繰り出そうとしてくる。

その腕を掴む。

殴った感覚からわかっていたが、肉体が強化されている。


「…………」


俺は、ブランを見る。

女神に操られている、友達を見る。


「戻ってこいよ、次期魔王様」


そして、ある意味武器と化していたブランの腕で、俺は俺の胸部を貫いた。

俺の血がブランにかかった。

その瞳に、光が戻る。


あぁ、ブランだ。


これで正解だった。

瞬間、脳裏にタケルとコノハの顔が浮かんだ。

続いて、エルリーたちの顔。


意識が遠のく。

少しずつ、遠のく。

目の前のブランが、意識を取り戻していた。

最期に見るのが、友達の顔なら、まずまずいい終わりだなと思った。

手を伸ばす。

ブランに手を伸ばす。

せめて彼の顔についてしまった、俺の血を落としたいなと思った。

でもそれは、叶わない。

手は届かない。

なら、それなら、せめて。


「ご、めん、な?」


喧嘩をしたままだったから。

そして、こんなことをさせてしまう形になったから。

俺の血で、彼を穢してしまったから。

最期、俺は、そう伝えた。

そして、目の前が暗くなる。

何も見えなくなる。

程なくして、体の感覚も、なにもかもが消え失せた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ