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【無双】底辺農民学生の頑張り物語【してみた】  作者: カズキ
お前は、俺を、怒らせた
140/148

そしてハジマル、一線を越えてしまった彼の物語

【注意】

流血&残酷描写あるので苦手な人は、スルーしてください。


***


目の前が真っ赤に染まった。

直後、温かな液体が顔にかかったのがわかった。

心做しか、口にも入った感じがした。

俺はハッとする。


目の前を見る。


そこにはよく知る人物が、立っていた。


真っ赤に染まって、立っていた。

俺と目が合う。

そいつは、苦笑したようだった。


「……っかは、ようやく、戻ったか」


血を吐いて、そいつは言葉を絞り出した。

その胸の部分には、俺の右腕が突き刺さっている。


「……え?」


「せわ、やかせんな、ばか」


そんなことを口にしたかと思うと、そいつは俺に手を伸ばして来ようとする。

ユラユラとフラフラと手が。

そいつの手が、俺に伸びてくる。

俺の顔に触れようとしてくる。

そして、


「ご、め、んな」


そんなことを言ってきた。

かと思ったら、そいつの瞳から光が失われる。

そいつの体からも力が抜けて、その場に俺ごと倒れてしまった。

その拍子に、そいつに突き刺さっていた俺の腕が抜ける。

俺の腕は、真っ赤に染まっていた。

俺は、叫んだ。


「ヤマト!!??」


おびただしい血が、ヤマトから流れ出る。

ヤマトは動かない。

俺の叫びにも応えようとしない。

生きるのに必要な血が流れ出ているから。

俺は、少しでもその血を流れさせまいと、ヤマトの体を抱き起こした。

貫いた背中部分を抑える。

胸の部分には、自分の体をくっつけて、少しでも血が流れないように。

これ以上、体温が下がらないようにしようとする。

そんなことしても、無駄なのに。

たぶん、俺はパニックになっていたんだろう。


どうしてこんなことになっているのか?

まるでわからなかった。

記憶がまるでない。

魔界に戻ってきたところで、ぷっつりと途切れている。


「あーあ、壊れてしまいましたね」


なんて、声がした。

顔を見上げれば、そこには美しい女が立っている。


「いえ、あなた方の言葉で言うなら、殺した、が正確ですかね」


殺した。

誰が、誰を??

女が下卑た笑みを浮かべる。

ケラケラと笑い出す。


「思ってたのと違いますが、これはこれでいいモノが見れました」


なんて言って、女はパチンと指を鳴らした。

瞬間、ヤマトの体が消え、女の腕の中にあった。

同時に、カランとその場に何かが落ちた。

それはついさっきまで影も形も無かった、大鎌だった。


「憎々しい彼らが出てきた時にはどうなるかと思いましたが。

結果としては、まぁまぁといった所でしょうか」


光を失ったヤマトの瞳を覗き込みながら、女はそう言った。


「それを使えば、この子は貴方を殺せたのに」


女の細く、白い指がヤマトの頬を愛おしげに撫でた。


「まぁ、誰に対してもそうしてたんでしょう。

でも、お陰で手に入れることが出来ました」


なにを、言ってるんだ、この女は?

わかっているのは、ヤマトがこの女によって、どこかに連れていかれてしまうだろうということだ。

本能で、それを止めなければならないと思った。

けれど、


「……っ!!??」


体が動いてくれなかった。

まるで、その場に縫い付けられたかのように、体が動かない。

魔法かとも思ったが違った。


「うごけ、うごけよ!!」


体は動いてくれなかった。

そうこうしているうちに、女が消えようとする。

そこに、


「おい、待てや婆っ!!」


見知らぬ男の怒鳴り声が響いた。

女に飛び蹴りを喰らわせようとする。

それを、女はひらりと避けた。


「ゲラウトヒア!!聞こえてるんだろ!!??

なんで、なにもしない!?」


しかし、ヤマトは動かない。

当たり前だ。

だって、ヤマトはついさっき、俺が……。

そのことに思い至ると、吐き気が込み上げてきた。


殺した。

俺が、殺した。


「あ、ああ、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」


体は全然動いてくれないのに。

何故か、声は出た。


俺は、ヤマトを殺してしまったのだ。


女は、男にちらりと視線を向けただけだった。

しかし、なにも言わずそのまま消えてしまう。

あとには、見知らぬ男と俺が残された。


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