お叱り
【数時間後】
生徒会室にて、俺はスレ民達が提供し、精査した情報とウスノや対女神の作戦を頭に叩き込んでいた。
「さて、これで借りは精算できるかな?」
なんて、楽しそうに言ってきたのは生徒会長だ。
「まだ気にしてたんですか」
「君には命を救ってもらったからね」
「……賢者の時に、精算したものと思ってましたよ」
「あぁ、あの幼児化の時のことか。
それこそ、気にしてたのか。
意外だな」
「住むところとか諸々の手配してもらいましたからね。
どれだけ金を使ったんですか??」
「それなりに」
「…………」
「とはいえ、これは投資でもあるんだ。
未来への投資」
「……ヤクザに金を借りると後が怖いんですけど」
「借金ではないよ。
言ったろう、投資だって」
「俺の何にそんな投資をしてるんですか?」
この人の期待に応えられるものなど、俺はなにも持ち合わせてはいない。
「君への信頼かな?
これで恩を売っておけば、君は俺のところに来てくれるかもしれないだろ」
「なんですか、護衛として就職しろってことですか??」
「まぁ、そんなところだ。
それとも、未来の魔王様の方がいいかな?」
「就職するなら、まだアンタの方がいいですね」
「おや、これまた意外な答えだ。
理由を聞いてもいいかな?」
「友達とは、一緒に働きたくないんですよ。
友達なのに、上下関係になるのも、嫌ですから。
それで失敗してきた話を結構聞いてきたんで」
つーても、ブランとは喧嘩別れしたままだ。
てっきり、俺の事はあれっきり嫌っていると思ってた。
だから、謝っても許してくれないだろうなぁって考えていたから、わざわざ俺を捜しに魔界まで行ったと知った時は本当に驚いた。
「耳年増だな」
「あと、生徒会長のところ、純粋に給料良さそうだし」
就職先としても、給料が安定していそうではある。
俺の返答に、生徒会長は笑った。
「あははは」
そして、少しだけ沈黙が流れる。
再び、生徒会長が口を開いた。
「それじゃ、俺も君が帰ってくる理由にくらいにはなるか。
そうだ、君が確実に帰ってくるための理由をもう一つ、提示しておこう」
なんて言って、生徒会長は携帯端末を取り出すとなにやら操作して、画面をずいっと見せてきた。
それは、見覚えのありすぎるソシャゲの画面だった。
携帯端末は取り上げられていたので、俺は久しぶりにこのゲーム画面を見た。
よくよく見れば、それは今後の予定についての記事だった。
「君がハマっていたゲームだ。
しばらくシナリオの更新が無かったらしいが、明日から新作シナリオが公開されるらしい。
ガチャ?だったか??
君が好きなキャラがピックアップで来るらしいな」
俺は、生徒会長から携帯端末を奪い取って記事を食い気味に読む。
シナリオ公開時間は、午後六時。
「早めに終わらせられれば、間に合うな」
なんて言って、もう一つ携帯端末をチラつかせてきた。
それは、俺の携帯端末だった。
「え、なん?!ええ??!!」
俺は驚く。
なんでこの人、俺の携帯端末持ってるんだ??
「君、いい弟君を持ったな」
なんて言って生徒会長は、俺の手から自分の携帯を取り戻すと、操作する。
そして、またなにやら操作したかと思うと、またこちらに画面を向けてきた。
表示されているのは、通話画面だった。
《こんの、バカ兄貴ーーーーー!!!!》
その通話画面から、音割れした弟の怒声が響き渡った。