裏話8
「というか、ヤマト君は餌だから連れていくんだけどね」
ウカノさんはニッコニコだ。
必然的にシンも一緒に行くことになる。
「まぁ、俺は別にいいんだけど」
答えつつ、シンは俺を見てきた。
「お前、友達に連絡いれなくていいのか??」
彼がこんなことを言うのには、理由があった。
魔王城を出ようとした時に、レフィアさんに言われたのだ。
『ブランには、君のことを伝えておこう』
曰く、何も知らされず行方不明扱いになっているからかブランだけじゃなく、他の友達も動揺しているらしい。
なので、俺はレフィアさん預かりになっている、ということにしてくれるとのことだった。
俺は有難いと思いつつも、その申し出を断った。
『これは、俺のことですから。
全部終わったら、帰って謝りますよ』
そう伝えたら、苦笑された。
俺はシンを見返して、
「いいんだよ」
懸案事項だった封印についても、ウカノさんが解消してくれた。
なら、あとは用事を済ませてさっさと帰るだけだ。
「いやぁ、連絡は入れといた方がいいと思うぞ。
うちの4番目の兄ちゃんなんて、家出て数年間音沙汰なしだったんだけど。
実は女の人と同棲してるのが判明して、それを母さんに言ったら、母さんや姉妹達が挨拶に押しかけたことがあってさ」
ウカノさんが笑った。
「ちょうどいい嫌がらせ、じゃなくてお灸になったんだよ。
人生の墓場に突き落とされた時のアイツの顔ったら無かったなぁ」
四番目のお兄さん、何してそんな目にあったんだろ。
あとウカノさんが珍しく黒い笑顔を浮かべている。
「結婚式の日取りと、衣装合わせしてる時のクロッサ兄ちゃんの顔、死人のそれだった」
どんだけ結婚が嫌だったんだろ、そのクロッサさんとやらは。
「とにかく、連絡入れてなくて押しかけてくるような友達じゃないか?
その点、大丈夫か??」
シンの言葉に、俺は考えを巡らせる。
そして、
「大丈夫大丈夫。
たしかに、一人は魔界出身の魔族だけど、ウカノさんじゃあるまいし、すぐに来れない。
仮に押しかけてくるにしても、手間暇かかるしさ」
そんな答えに至った。
他大陸から魔界に来るには、決められたゲートと呼ばれる場所まで行って手続きしなけらばならない。
しかし、ウカノさんはこれをすっ飛ばせるチート持ちだ。
その秘密はウカノさんが愛用している、あの大鎌にあった。
【主神に仕えし農夫の鎌】というのが、あの大鎌の名称だ。
ウカノさんは、豊穣や豊作を司る神様の加護を受けている。
所謂、選ばれた存在、まさにチートと言うやつだ。
そして、ウカノさんが愛用している件の大鎌。
これは、ウカノさんにしか使いこなせない、そして他ならない神様から与えられた道具だ。
神具というやつだ。
ちなみに、ウカノさんしか使いこなせないが、使おうと思えば誰にでも使えたりする。
ただし、リスクが高い。
ウカノさん以外が使うには、冗談ではなく死を覚悟する必要があるのだ。
伝え聞いた話では、担当していた畑の雑草を刈ろうと、お試しで使った農業高校の生徒が一年間意識不明となったらしい。
あの大鎌には、おっかない能力がこれでもかとある。
しかし、おっかなくない能力も備わっている。
その一つが、空間を切り裂いて穴を開け、その穴をすでに訪れたことのある場所まで繋げることができる、というものだった。
早い話が転移魔法みたいなものだ。
ウカノさんは【魔界樹事件】で、魔界に来たことがあった。
さらに、担任の敵討ちという名目で、ギブリアという魔族がいる場所にも訪れていたことがあるらしい。
なので、その場所まで鎌で空間を切り裂いて移動しよう、とこういうことである。
ちなみに、俺やルキアさんを病院から連れ出した方法もこれだったりする。
「ならいいけど」
シンはそれ以上言ってこなかった。
「シンもヤマト君も準備はいい??」
ウカノさんは、バッチリと化粧をし、なんなら服まで気合が入っている。
あのフリフリのワンピース、どこでどんな顔して買ったんだろ。
気にはなったけど、聞かなかった。
こうして、急遽ギブリアという魔族を強襲することになったのだった。
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