裏話3
そこから、とにかく俺とウカノさんは互いの持つ情報を共有しあった。
そして、現状の話へと続いた。
俺は全てを聞き終えて、
「なんていうか、ありがとうございました」
ウカノさんへ頭を下げた。
「まぁ、お礼は彼女にも言った方がいいかな」
ウカノさんは、スレ民の一人であり、現場に駆けつけたあの女性のことを口にした。
春先の件でも、あの人は駆けつけてくれた人だった。
それこそタダの他人でしかないのに。
ウカノさんが、彼女を呼びに行った。
今回の件について、彼女にも協力してもらいたいらしい。
巻き込んでしまったから、ちゃんと謝らないとなぁ。
なにしろ、話を聞いた限り彼女は俺の兄とも顔を合わせているらしいから。
やがて、ウカノさんが彼女を連れて戻ってきた。
軽い自己紹介のあと、彼女視点からここまでに至る経緯を説明された。
ちなみに、彼女の名前は【ルキア】というらしい。
「春先の事と言い、今回のことも、重ね重ねご迷惑をお掛けしました」
さすがに改まって謝ったら、爆笑された。
「あははは。
まぁいいよ、でもさすがに喉を掻っ切るのを見るのは二度とゴメンかなぁ」
なんて言われてしまう。
仕方ないじゃん。
あの時は俺も必死だったんだから。
それを見ていたウカノさんが、
「それじゃ、場も和んだし。
今度は俺の話をしようか」
そう切りだした。
俺とルキアさんが、ウカノさんを見た。
「実はここ数年、農業ギルドの販路や世界各地の農家の私有地にちょっかいを掛けてきてる犯罪組織があってね。
それがヤマト君の兄が首領をしてる組織だったんだ。
今年に入ってから、その被害は甚大なものになっていて。
農業ギルドのお偉方がついにブチ切れて、先々月にあった飲み会、じゃなかった、会合で『潰すべ』ってなったらしい。
それで色々調べては見たんだけど、裏社会を牛耳ってる組織だから、中々うまくいかなくて」
そんな矢先、担任から俺の事を相談され、そこから様々な情報が一気に手に入ったとのことだった。
「ヤマト君が眠っている間に、ルキアさんが【特定班】って人と【考察厨】って人に連絡をとってくれて。
それで一気に各地にあるアジトや、魔界にある本拠地の場所を探し当ててくれたんだ」
どんだけ優秀なの、スレ民。
「今は、その場所を強襲する人を選んだりしてる」
って、ちょっと待て。
「俺、いらなくないですか??」
「まさか、君には重要な役割を果たして貰わなきゃならない」
「役割??」
「そ、現状を整理しても分からないことが残ってる。
たとえば、君の兄を復活させたのが誰なのか、とか。
事前に聞かされていた、アールからの情報。
ルキアさん伝手で教えてもらった情報。
それらを聞いても謎が残ってるし」
「謎??」
「そ、問題の首領についてだよ。
君の兄は、生まれつき体が弱くて長い時間活動が出来なかった。
にも関わらず、亡くなった日。
彼は家を出て、まるで君にそれを見せるかのようにクマに襲われた」
それは、あの担任も指摘していたことだ。
「亡くなったはずの彼は、実は生きていた。
そして、犯罪組織のトップとなり、邪神を封印していたディアナを手駒にして再び君の前に現れた。
そして、嫌がらせとして、君を痛めつけた。
それと人間界で活動するため、君の心臓を手に入れようとしている」
俺は頷いた。
「話を総合して、俺なりに考えた結果なんだけど。
これ、さらに裏で糸を引いてる存在があるように感じる」
ルキアさんは神妙な顔で、その話を聞いている。
「誰かが、幼かった君の兄を唆したんだ。
そして、その誰かさんはあえて君の兄をクマに襲わせ、死んだように見せかけた。
その後、魔界へと渡り君の兄を使って犯罪を犯させ、なんなら組織まで作り上げた」
ルキアさんが、口を挟んだ。
「なんか、話しが壮大になりましたね」
「色々考えた結果だよ。
ちなみに、その誰かさんについてなんだけど。
俺とアールが昔遭遇したトラブルの時と同じことが起きてたんじゃないかと思うんだ」
「どういうことですか?」
俺は訊ねた。
ルキアさんも興味津々である。
「色々割愛するけど、早い話が邪神の封印に綻びが出てたんだと思う。
俺たちの時は、精神体状態の邪神が色々裏でやってたんだけど。
たぶん、十数年前も同じことが起きていたんだと思う。
精神体として、邪神が封印から抜け出て君の兄を見つけ、唆した。
あの邪神、人の弱さに漬け込んで負の感情を増幅するの滅茶苦茶得意でね。
その結果が、今なんだと思う。
邪神は君の兄を手駒として手にいれ、操り人形とした。
なにかしら、邪神にとってなにかしらの魅力が君の兄にあったんだろう。
そうして力を蓄えさせ、自分の封印を解かせた。
今のことを考えるに、封印を解くのにもそれなりの時間がかかったんだろうね」
ウカノさんは俺を見た。
「そして、ディアナの存在だ。
彼女の存在こそが、封印が完全に解かれた事を意味している」
「で、でも、それなら、なんで俺なんか狙うんですか??
仮にも神っていうくらいなら、ウスノの体を健康にするとか丈夫にするとか出来ると思うのに」
「神様でも、万能じゃないってことなんだろうね。
そして、まだまだ必要だからこそ君の心臓を狙っている。
それを移植さえしてしまえば、君の兄は人間界で活動できるんだから」
ウカノさんは、淡々と述べていく。
そして、最初に言っていた【協力】について口にした。
「だからこそ、君には協力してほしい。
具体的に言えば、彼らをおびき寄せる餌になってもらいたい」
そして、さらに続けた。
「もちろん、代価も用意する。
そうだな、たとえば君に掛けられた呪いを解く、というのはどうかな??」
俺と、そしてルキアさんまで、目を丸くしてウカノさんを見返した。
ウカノさんは、優しく微笑んでいた。
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