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裏話7

 休みを二日挟んで、登校するとクラス替えの説明を受けた。

 そういえば、あれだけの死人が出たと言うのに世間は意外と静かだった。

 たぶん、色々なことが水面下で行われたからだろう。

 新しいクラスについてはプリントが配られた。

 珍しく俺にもプリントがちゃんと回ってきた。

 元々五クラスあったのが三クラスまでに減っている。

 うちのクラスだけでは無く、他のクラスでもそれなりの犠牲者が出たということだろう。

 プリントには新しいクラスと同級生の名前とそれぞれのランクが記載されていた。ついでに席も記載されている。

 俺は二組らしい。

 今いるのは5組のクラスなので移動しなければならない。

 個人個人のランクは、あまり関係ないようだ。

 完全なるシャッフルとなっている。

 早速今日から新しいクラスで授業を受けることになる。


 

 他の生徒達より少し距離を取って廊下を歩く。

 なんか、視線が痛い。

 そこで気づいた。

 チラチラと他の生徒達が俺の事を気まずそうに見ているのだ。

 転入してからの無視から一転しすぎじゃないだろうか。

 俺、何かしたっけ?

 ドラゴン騒ぎで怪我して数日間入院したくらいじゃないか。


 あ、重機や農具持ち込んで畑作ってるのバレたか?

 でも、あれ作らないと餓死するしなぁ。


 と、今後の不安要素について考えているうちに新しい教室へたどり着いた。

 すでにガヤガヤと騒がしい。


 俺が教室に入ると、そのざわめきも消えた。

 元々感じが悪かったけど、ますます感じが悪くなったな。

 無視されてる方が気が楽だったかも。

 あー、胃が痛い。

 プリントを確認して、指定されている席に座る。

 

 窓際の一番後ろ。

 最高の席だ。

 いい事もあるもんだ。


 窓から見える青空もいい。

 ずっと見てられる。

 ぽけぇっと、本当にいつまでも見てられる。

 農業高校に帰りたい。

 ハナコに癒されたい。

 ヨシエ含めた家畜をモフりたい。

 悪友達とバカしたい。

 先日の入院とかについてSNSで報告したら、めっちゃ笑われたっけ。

 お前、ちゃんと怪我できるんだなとか言われたっけ。

 いや、そっちで怪我してなかったのはお前らのサポートあってこそだと思い知らされたよ、ほんと。


 帰りたい。


 そんな感じでボケっとしていたら、新しい担任の挨拶とクラスメイト達の自己紹介がいつの間にか始まり、終わっていた。

 担任がすぐ横に居て、出席簿の角で小突いてきて意識が現実に引き戻された。


 「おい、お前の番だぞ。

 さっさと自己紹介しろ」


 「はい?」


 さすがに驚いた。

 新しい担任は、やる気のなさそうな男だった。

 三十代くらいで、目が死んだ魚みたいだ。

 こんな教師いたのか。

 

 「だから、自己紹介。

 名前とランクな。ランクは言いたくなければ言わなくていい。

 でも名前わからないと困るだろ」


 その手に持ってる出席簿の存在価値はなんなんだろう?


 「……元五組、ゲラウトヒアで、痛い」


 言葉の途中でまた小突かれた。


 「偽名やあだ名は無しだ」


 知ってんじゃん。なら言わなくてもいいじゃん。

 どうせ誰も覚えやしないのに。

 ま、いいか。


 「……ヤマト・ディケです。よろしくお願いします」


 自己紹介なんてこれくらいでいいだろう。

 ランクはプリントに記載されてるから確認したいやつは勝手に確認すればいい。

 そこで気づいた。隣の席、モヒカンだった。



 今日は午前も午後も座学だ。

 楽でいい。

 午前の授業が終わると同時に生徒達が学食へ移動していく。

 さて、一旦小屋へ戻るか。

 

 「腹減ったなぁ。学食行こうぜ」


 と、何故か親しげにモヒカン、いや今はモヒカンじゃないや。

 あの地味目な姿だ。

 名前なんだっけ?

 あ、そうそうブランだたしか。

 ブランがそう声を掛けてきた。


 「俺、学食使ってないから」


 短く言って、答えは待たずに教室を出ようとすると、今度は女子生徒に声をかけられた。

 茶髪の女の子だ。

 熱でもあるのだろうか、顔が真っ赤である。


 「あ、あの!! こ、これ!

 貰ってください!!」

 

 新手の押し売りか?

 

 「はい?」


 両手で大事そうにもち、俺に何かを渡そうとしてくる。

 よく見ればそれは、可愛くラッピングされたクッキーだった。

 手作りだろうか?


 「あの」


 相手間違えてません?

 そう言おうとしたが、それよりも早く女子生徒がまくし立てるように言ってきた。


 「この前、ドラゴンから助けてくれてありがとうございました!

 これは、今日家庭科の授業で作りました!!

 変なものは入れてないです!衛生面もとても気をつけました!

 良かったら、食べてください!」


 変なものとか衛生面とか、その情報いるか?

 あ、今はそういうの気にする人の方が多いんだっけ?

 しかし、助けた?

 あ、あー、あー、この子あれか。

 助けを呼ぶように頼んだ子だ。

 アレを助けたと思われたのか。


 「あ、えっと、ありがとう、ございます」


 善意だろうし、受け取っておこう。

 俺が受け取ると、彼女は華が咲くような可愛らしい笑顔でぺこっと頭を下げて去っていった。

 

 「お昼、これでいいか」


 小屋に戻るのめんどいし。

 そう呟けば、背後からブランが言ってきた。


 「いや、ちゃんとご飯食べろよ」

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