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【無双】底辺農民学生の頑張り物語【してみた】  作者: カズキ
スレ民はにはお見通し♡
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裏話12 農高でこき使われたブランの話

 俺の名前は、マレブランケ。

 略称兼愛称は、ブラン。

 さて、俺には気になっている奴がいる。

 と言えば、なんだ女子か。

 そんな反応をされることだろう。

 だが、違う。

 同級生でルームメイトの、ヤマトという男だ。

 こいつは滅茶苦茶強い。

 魔族として生まれていたなら、それこそ俺と同じように魔王候補になっていただろうと思われるくらい、強い。

 にも関わらず、よくトラブルに巻き込まれて大怪我をする。

 去年なんて死にかけることがよくあった。


 初めてヤマトを見たのは、入学試験の時だった。

 その実技試験の時、俺はヤマトを、初めてみた。

 アイツは、成り行き上、在校生をボコボコにした。

 圧倒的な強さを見せつけ、そして失格になり、試験に落ちた。

 あれを落とすとか、聖魔学園はアホなのかと思った。

 魔界だったら、あちこちからうちの学校にぜひ来てくれと声がかかるレベルだ。

 勿体ないと思った。

 それから数ヶ月後の夏休み明け。

 大人の事情と言うやつで、ヤマトはこの聖魔学園へとやってきた。

 俺がそのことを知ったのは、とある実技授業でのことだ。

 アイツは別のクラスに配属されていた。

 正直のことをいってしまえば嬉しかった。


 これは、俺が魔族だからかもしれないが。

 そう、嬉しかったんだ。

 だって、あれだけ強いのに。

 その才能を伸ばせる場所に入れないなんて、勿体ない。

 そう思っていたから。


 件の実技授業で、ヤマトは独りで佇んでいた。

 いや、今思い出すと滅茶苦茶ソワソワしていたようにも思う。

 その授業でヤマトはどのグループにも入らず、一人でいた。

 なんなら、他の奴らの殆どがアイツをみてコソコソと話し、嘲笑していた。


 ――場違いのドブネズミ野郎――


 そんな声がどこかしこから聞こえてきた。

 なんだ、ただのイジメか。

 当初抱いたのは、そんな感想だった。

 よくあることだった。

 それは、魔族でも人間種族でも関係なく、よくあることだった。

 ヤマトを見ると、聞こえているのかいないのか。

 ただソワソワしていた。

 この時は一人でいる事への居心地の悪さからなのか、よく分からなかった。

 だから、声をかけた。

 同情していたのか、なんなのか。

 不思議と寂しそうには見えなかった。

 なんというか、慣れているようにも見えた。

 それがなんだか気になって声をかけた。


 中学の時のノリで、声をかけた。

 中学の時なら、あの声のかけ方をすれば、とりま勝負となって殴りあって親交を深めることができた。

 けれど、アイツはそのノリに合わせるとかはなかった。

 よくよく考えればあいつは人間だから、魔族とは勝手が違ったのだ。

 普通に声をかければよかったと思った。


 アイツは一人で実技授業の舞台となった森に入っていった。

 その時、初めて寂しそうに見えた。


 その後トラブルが起きた。


 ドラゴンの襲撃を受けのだ。

 怒り狂って暴走し、虐殺をするドラゴン。

 クラスメイトや教師たちが巻き添えをくって、壊され死んで行った。

 大混乱になるなか俺やレイド、そしてエルリーの命を助けてくれたのが、ヤマトだった。

 アイツだけは、その場に慣れていた。

 だというのに、俺やレイドを助けようとして大怪我をした。

 でも、大怪我を負いつつも、アイツはドラゴンを倒してしまった。


 倒した後、木に引っかかっていたアイツは、なんというかとても疲れた顔をしていた。

 それがさらに濃くなったのは、学園から助けが来て、搬送される時だった。

 明らかに俺たちよりも重症で、すぐに搬送されるべきだったのはアイツだった。

 けれど、優先されたのは俺たちだった。

 そんな俺たちを見て、あいつはどこか諦めたような笑みを浮かべていた。


 とても悪いことをしているような、そんな罪悪感に俺たちは襲われた。


 救急隊員に、エルリーやレイドが訴え、俺もアイツのことを話したけれど、隊員にとってはその時目の前にいる俺たちを手当するのが仕事だった。

 だからか、気にしなくていいと言われた。

 あの時の隊員に、悪気は欠片もなかった。

 それだけはわかる。

 目の前の仕事をこなしていただけだ。

 けれど、納得できなかった。


 そして、この件以降に、俺はアイツの立場を知ることになる。

 聖魔学園のアイツへの扱いは、酷いものだった。

 学園ぐるみで、アイツを迫害していた。

 寮すら追い出されていたことを知った時は、怒りすらわいてきた。

 そんな扱いをされていい奴ではない。

 そう思うのに、俺にはなにもできなかった。


 でも、気づくと少しずつ少しずつ、アイツの環境が良くなっていった。

 本当にそれは少しずつで。

 環境こそ良くなっていったものの、殆どの者がアイツの実力を認めようとしなかった。

 むしろ、侮蔑の意味で【化け物】呼ばわりしていた。


 この一年で、俺は主に二回。

 アイツに救われた。

 一度目は、ドラゴンの件。

 そして、二度目は魔界でのトラブルだ。

 アイツには関係なかったのに、アイツは助けに来てくれた。

 あの時の借りすら、俺は返せていない。


 アイツはそれからもトラブルに巻き込まれた。

 最大のトラブルは、春先の事件だろう。

 ボロボロになって、死にかけて、精神が幼児退行して、発作を起こして。

 アイツは俺を二回も救ってくれたのに、俺はアイツを救うことができなかった。

 なにも、できなかった。

 春先の事件で一番驚いたのは、アイツが頼りにしたのは俺ではなくレイドだったことだ。


 その事件を自力でなんとかして、レイドと二人で帰ってきた時。

 悲しくなった。

 なにも出来ず、させてもらえず、むしろ気を遣われたことがとても悲しくて、屈辱だった。


 あれからさらに数ヶ月。

 つるむようになって一年が経過した。


 ヤマトは、またトラブルに巻き込まれた。

 また、実技の授業中に大怪我をした。

 今度は、本来なら侵入できない私有地に魔界でお尋ね者となっている凶悪犯が何故かいて、遭遇。


 その時は、いきなり授業が中止になり、俺たちはわけも分からないまま学園に戻された。

 ヤマトの姿がなくて、嫌な予感がした。

 それから、しばらく教室で待機となった。

 少しして、三年を受け持っている教師がやってきて事情を説明してくれた。

 遭遇した凶悪犯から後輩を守ろうとして、怪我を負い、病院に搬送されたとの事だった。

 付き添いとして、担任のアールが病院に行っているとのことだった。

 すぐにヤマトの携帯にかけた。

 出なかった。

 何度もかけたのに、いつしか電源が落とされていた。


 結局、その日にヤマトからの返事はなかった。

 しかし、深夜、担任に呼び出された。

 なんでも、ヤマトに輸血する血が足りず、このままだと本当に死んでしまうかもしれないとのことだった。


 肝が冷えた。

 昼までは普通に元気だった。

 だというのに、


(なにやってんだよ、あいつ!!)


 ヤマトの血液型は特殊なもので、俺と同じ珍しいものらしかった。

 だから、協力してくれとのことだった。

 拒む理由は無かった。

 そうして、血を提供してなんとかヤマトは死なずに済んだ。

 それを聞いて、とても、安心した。

 さらに数日後。

 ヤマトが退院してきた。

 アイツは、献血の礼を言ってきた。


 でも、どこかおかしかった。


 そして、その日以来。

 俺を避けるようになった。

 俺だけじゃない。

 エルリーや、レイド、そして後輩(ディアナ)を避けるようになった。

 理由を聞きたかったけれど、捕まらなかった。


 実技授業には出てこず、今までそれに対して怒っていた担任もなにも言わない。

 アイツは一人で過ごすようになっていた。

 一年前と同じように。


 そんな矢先だった。

 その日、もう寝ようとした時だ。

 ヤマトの育ての親であり、大地の精霊王ノームが俺の部屋に現れた。

 かと思うと、


「詳しくは言えないが、朝までヤマトの監視が出来なくなった。

 だから、一番近しい存在のお前にアイツを託す。

 俺が戻るまで、ヤマトが部屋から出ないよう気をつけてくれ」


 なんて言われたのだった。

 寮母さんでも、担任でもなく、俺にノームは言ってきた。

 嬉しかったけれど、同時に理解した。

 監視するだけの何かがヤマトに起こっている。


「それって、そんなにアイツは怪我の具合が悪いってことっすか?」


 思わず聞いたが、ノームは答えてくれなかった。

せっかくここまでポイント溜まってるんで、どうせなら一万ポイントまでいきたいので、


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― 新着の感想 ―
[一言] ここでノームが質問にきちんと答えていれば……
[一言] 情報を正しく伝えないと大惨事になる例だよなあ
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