裏話8
それは、つまり何か行動を起こせば延命できると言うことだ。
死ぬのは嫌だ。
けれどなっちゃったもんは仕方ない。
そう考えていたけれど、まだ打てる手はあるらしい。
俺は、じいちゃんにその方法を聞き返した。
「何をすればいいの?」
少しだけワクワクしていた。
けれど、じいちゃんから提示されたそれは、愉快な方法でもなんでもなかった。
「封印」
「……へ?」
「お前を封印する」
呆気に取られる俺に、じいちゃんは詳しく説明してくれた。
曰く、今はまだ俺の呪いをとく方法はみつからない。
でも、時間をかければそれが見つかるだろうとの事だった。
だから、おとぎ話に出てくる魔王のように封印するらしい。
そうして、俺の時間を止めて解呪方法を見つけるのだという。
「こちらとしても、お前には死んで欲しくない。
お前だって死にたくはないだろ」
「まって、待ってよ、じいちゃん。
それって、時間をかけるってどれくらいかかるの??」
「さて、もしかしたら翌日に解呪方法が見つかるかもわからん。
けれど、一ヶ月かはたまた一年か、十年か。
それこそ百年後ということも考えられる」
淡々とじいちゃんが、答える。
いつになるかわからない。
もしかしたら百年、かかるかもしれない。
それは、つまり、もしかしたらもう二度と――。
その考えが浮かぶと同時に、タケルやコノハ、農業高校の悪友達の顔が次々思い出された。
それだけじゃない。
「もう、ブラン達とも会えない??」
子孫になら会えるかもしれない。
けれど、今生きているブランや、エルリー、レイド、生徒会長にはもう二度と会えない可能性がある。
「そうなるだろう」
じいちゃんは、嘘偽りなく答えた。
思い出されるのは、嫌々ながら聖魔学園に来てからの日々だ。
この思い出だけを手に、俺だけが取り残される。
あぁ、楽しかったんだ、俺。
この学園に来ることになって、嫌だったけど。
でも、この1年、楽しんでいた自分に気づく。
こんなことになると知ってたなら、もっと大事に大切に日々を過ごしたのに。
「そして、この件に関してはお前に決定権はない」
「…………」
「お前には死んで欲しくないんだ」
「死なれたら困る、じゃないの?」
思わず返したら、じいちゃんもさっきのノームと同じように怖い顔になった。
しかし、すぐにその表情は消える。
次に浮かんだのは、後悔の表情だった。
「全て、儂のせいだ。
こんなことになるのなら、人の子の決め事に従わず、お前を奪って儂の子にすれば良かった」
「じいちゃん」
じいちゃんの養子になるには、色々手続きが必要だ。
そして、そのためには生みの親の許可も必要だ。
俺の父親と、祖父母はそれを渋っていた。
理由は簡単。
農作業をする労働力として必要だったのと、そして惜しくなったからだ。
そこに愛情はなかった。
ただ単に、他人に譲るのが惜しくなった。
それだけだ。
譲渡する約束をしていた物を、土壇場になってやっぱりあげるのやめた、とこういうわけだ。
「そうすれば、お前はこんなことにならなかっただろう」
じいちゃんが顔に手を当て、深く深く息を吐き出した。
「悪かった」
「じいちゃんのせいじゃないよ」
一応、20歳になったら、大人になったら、俺はじいちゃんの養子になる予定だった。
でも、あの親たちのことだ。
どうせグズグズ言って養子の件も承諾しなかったに違いない。
育ての親が悲しそうにしているのは、罪悪感が大きかった。
だから、あえて俺は前向きなことを口にした。
「それにほら、これはチャンスかもだよ。
こうなったら、もうあの人たちにとって俺は用済みなわけじゃん?
だから、養子の件、すんなり運ぶんじゃない?」
考え方を変えるなら、仮に呪いが解けるのが百年後だったとしても、そこに友達はいなくても、ノームやじいちゃんたちは居るのだ。
じいちゃんの寿命はまだまだ先だし。
ノーム達にはそもそも寿命というものがない。
だから、全くの一人というわけじゃない。
うん、もう二度と弟や友達に会えないのは寂しいけれど、独りじゃない。
俺の言葉に、じいちゃんが顔を上げる。
そして、寝転がる俺に手を伸ばしてきた。
そのまま抱き起こされる。
そして、背中をさすられ、
「いい子だな、お前は本当にいい子に育ってくれた」
赤ちゃんや幼児に、母親がするかのようにじいちゃんはそう囁いた。
違うよ、じいちゃん。
それは、違う。
そう言いたかったけれど、やめた。
親をこれ以上悲しませたくなかった。
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