裏話7
***
目を開ける。
天井が見えた。
頭がぼうっとする。
「……???」
ポリポリと頭を掻きつつ、体を起こす。
どこだ、ここ?
不思議に思ってあたりを見回そうとした瞬間、
「いっ痛ぅーーっ」
下腹に激痛が走って、思わずそこを抑えて丸まった。
なんなんだ、この痛み。
……軽トラで事故って打ち付けたか??
なんて考えた時だ、一気に記憶が甦った。
頭に触れる。
しかし、腹、くそ痛てぇ。
痛みに耐えて、周囲を見回す。
あ、ここ病院の個室だ。
何度かお世話になったところだと、すぐに気づいた。
ベッドの上に俺は寝ていたわけか。
「起きたか」
すぐ近くで声がした。
ノームの声だ。
「寝てろ」
声のした方を見ると、ノームが手を伸ばしてくるところだった。
そのまま、とん、と頭を押され仰向けに寝転がる。
「……どこまで覚えてる?」
寝転がった俺に、ノームが問いかける。
「んー、大体全部。
あ、ディアナは??」
「無事だ」
「そりゃ良かった」
「で、お前は呪われ、長くて秋までの命だけどな」
……ん???
「はい??」
意味がわからなくて、聞き返した。
ノームは無表情で俺をのぞきこんでくる。
「え、死ぬの?俺??」
「端的に言えば死ぬな」
「え、えぇー、マジかぁ。
そっかぁ」
そこでノームがペシンっと頭を叩いてきた。
「ファフでも手に負えない呪いだ」
「へぇ、じゃあ物凄い呪いってことか!」
純粋に凄いと思う。
あの龍神族のじいちゃんですらお手上げときているのだ。
凄いと言うしかない。
「意味がわかってるのか!!」
ノームが怒鳴った。
ビリビリと建物が揺れる。
窓ガラスなんて割れそうだ。
ノームが怒るなんて珍しいな。
「なんで俺達を喚ばなかった!?
ファフを呼ばなかった!?
お前は人間だろ、人間なんだから、俺たちを使役しろ。
お前はそれができるだろ!!
呪いもそうだが、あんな魔族に穢されるところだったんだぞ?!
そもそも、今は魔法も使えるだろ!!」
「……ごめん」
さすがに謝った。
ちなみに魔法を使うことには未だ、慣れていない。
だから戦闘になると、ついつい自分が魔法を使えるということを忘れてしまう。
「で、でもさ、ほら元々人間って寿命が短いじゃん?
それがさらにちょっとだけ短くなっただけだし?
それに、俺なんかの貞操くらいでディアナが助かるんだったら安いじゃん?」
なんて言ってみたら、ノームの顔が今までに見たことがないほどの怖い顔になった。
「本気で言ってるのか、それ?」
「うっ、えっとぉ、んー、半分冗談だったり」
てへっと笑ってみせるが、ノームは笑ってくれなかった。
「悪かったとは思ってるよ。
でも、ほら、手足吹っ飛ばされても死ななかったし」
「その件に関しても言いたいことが山のようにあるんだが」
何も言わなかっただけで、ノームなりに思うところがあったようだ。
「そ、それに、今回は担任が居たから、多分大丈夫かなぁってちょっとだけ思ってたし」
なんて言ったら、また頭をペシンと叩かれた。
そしてノームは、
「……生まれた時から知ってるやつが死ぬのは、さすがに堪える」
なんて言った。
生まれた時から面倒をみて育てた人間の子供が、本来の寿命でも、どうしようもない病気でもなく、呪いで死ぬ。
そんな経験は、ノームを始めとした精霊の王様達にはなかった。
だから、おばちゃん達も動揺しているらしい。
今は、龍神族のじいちゃんのいいつけがあって、ここに顕現していないらしい。
そういえば、アレから何日経ったんだろう。
それと、呪いってどんな呪いなんだろう。
死ぬ呪いということはわかった。
でも、どんな風に死んでいくのかは気になる。
いや、ほら全身が腐っていく呪いとかだと、もう寮にもいられないだろうし。
というか、死ぬなら身辺整理しなきゃだし。
畑どうしよう、畑。
今年は菊(食用)植える予定だったんだけどなぁ。
現状がわかった途端に、やらなければならないことが次々浮かんでくる。
「タケルにはこの事言った??」
ノームに確認してみる。
「いいや。ファフに止められている」
ノームが答えた時だった。
病室のドアが開いた。
俺は顔だけそちらに向ける。
そこには、苦笑する龍神族のじいちゃんが立っていた。
「ノームの怒りで地震が起きたから、もしやと思ったら案の定か」
じいちゃんが言いつつ、ベッドまでやってきた。
「気分はどうだ?」
「んー、まぁまぁ」
「吐き気は?」
「今のところ無いかな」
と、じいちゃんは色々聞いてくる。
そして、ペタペタと俺の顔を触り、
「嘘ではないな」
そう口にした。
そして、
「起きたばかりのところで、あまり負担を掛けたくないんだが」
そう前置きをして、呪いのこととか諸々を説明してくれた。
要点だけ纏めると、内臓が出たままで傷口がふさがらない呪いにかかっているらしい。
いろいろやって、呪いの進行?侵攻?そんなのをゆっくりにする術式を仕込んでアレコレやってなんとかしているのが現状らしい。
そのままでもジワジワと死んでいくらしい。
けれど、それをとてもゆっくりにしているんだとか。
ジワジワをさらにゆっくり。
……拷問かな?
いや、それよりも。
「…………」
体を起こして傷口を確認してみたい。
つーか、腸を見てみたい。
これは、純粋な興味からだけど、言ったら今度こそ大地震をノームに起こされそうだからやめておいた。
なので、
「その方法で、生きられて秋まで?」
代わりにそう聞いてみた。
龍神族のじいちゃんは、悲しそうに頷いた。
そっかぁ、秋までか。
じゃあ、18歳にはなれない、か。
そう思ったら、何故かエルリーに作ってもらったケーキを思い出した。
甘くて美味しかったなぁ。
なんて考えていたら、じいちゃんはこう続けた。
「なにもしなければ、な」
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