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ランチへ行こう

作者: 悠愛

見知らぬ駅に降りて改札を抜けた。

人の行き交う速さも多さにも少し怖気づく。

『着いたよ』

メッセージを送信をしてキョロキョロと周りを見回す。

こちらへ来てまだ1年と2ヶ月程度、電車の乗り降りにも少しは慣れたが未だに街中を歩くのは不安が残る。

地図が読めない訳では無いが、未開の土地を歩く時は冒険者がダンジョンへ向かう気分とそれは似ているかも知れない。

大きな駅なので、待ち合わ用のベンチを見つけて座り、雑踏を眺めた。

待ち合わせまでまだ30分以上あるが、迷子になる事を想定して早めに出掛け過ぎてしまったが着いた事は伝え、待てばいい。

『どこ行くの?』

待ち合わせ相手からの返事に驚くしかない。

指定された場所に着いて待ってるのに、どこ行くとは?

『駅で待ち合わせだよね?ベンチに座ってるよ』

『知ってる』

は?キョロキョロ見回しても相手が居ない。

「髪、おろしてきたの?」

後ろから声がして振り向くとにっこり笑う待ち合わせ相手が居た。

「時間…なくて」

いこうか、と促されて手を掴まれ歩き出した。


「明日さ、外でランチしない?」

食事を終えて片付けしていると背後から声がする。

私はこの部屋の居候であり、主からの誘いを断れる訳もなく…。

引きこもりがちな私を連れ出そうと外食に誘ってくれる。

おかげで、電車の乗り換えにも少しは自信もついてきた。

「いつものとこ?」

「ううん、迷いやすそうだから駅でまちあわせにしよっか?」

駅名だけ告げられたので、片付けた後でスマホを取り出し乗り換え案内で確かめ待ち合わせ時間に間に合う約1時間前の時刻表を確認し、乗り換え駅までの道の確認途中眠ってしまった。

翌朝、彼が出社した事も気付かず寝坊してしまったというわけで。


「俺も初めてだから、迷子になりそ」

片手は私の手を繋いで、もう片方で器用にスマホを触りながら目的地まで他愛ない話をしながら、途中地図を確認しつつ歩く。

実は寝坊をして空腹なのだが、今から食事なら問題ない。

着いた先はホテル?豪華なランチになりそうだが、自分の格好を見て立ち止まってしまい、手を繋いでる彼も気付いたのか

「ラフな格好でもランチは食べれるから、大丈夫」

にっこり笑って繋いだ手を優しく引っ張ってくれる。

場違い過ぎる、言ってくれたならもう少しマシな格好してきたのに。


エレベーターに乗るとボタンは最上階?

訳も分からない状況に繋がれた手が汗をかいてるのがわかっても離してもらえず。変わらず空いた片手で器用にスマホ操作をしている。

エレベーターから降りると、絨毯の廊下が広がった。

こっちと手を引かれまた歩き出す。少し奥の方の扉の前に来ると

「じゃ、頑張って」

と扉を開けるとその中へ私を押し込めて閉められた…。

「えぇ!」

声にならない声が出た目の前には、ホテル従業員らしき女性が3人?

「本日は…よろしくお願いします」

丁寧に挨拶をされ、反射的に会釈をする。

こちらへ、と促されるまま向かうしかない。

仕方なく言われるまま向かうが、頭の中は混乱しているばかりだった。

目の前にあるのは、純白のドレス?は?

慌ててスマホを出そうとすると、先程の女性の1人から声を掛けられる。

拒否権は無さそうだ…。

着替えを始めようと立ち上がった瞬間、ノック音がして先程部屋に押し込んだ相手が入ってきた。

「あの、これ食べさせてから着替えをお願いします」

「畏まりました」

手渡されたのは、おにぎりが3つ。丁寧に、具が油性ペンで書いてあった。

ご丁寧に私のマイボトルまで…

頭をクシャクシャと撫でられてそのまま部屋から消えていった。

女性3人に一言ことわり、おにぎりを食べて着替えに望んだ。


3人掛りで着せられたドレスに身を包み、メイクをされてベールまで被せられて、控え室へと案内された。

パンプスのヒールはドレスで見えないからと低めだから歩き辛くない。

私物も没収され、座らさせれ手持ち無沙汰でぼんやりと外を眺めるしかなかった。

「おにぎり食べた?」

「うん」

下から顔を覗かれる様に声を掛けられた。

「じゃ、行こうランチへ」

ランチって格好じゃない!相手も正装している。

ドレスじゃ身動きも出来ず立つのも人に頼らねばならない。

「ほら、掴まって?」

ブンブンと頭を振って抵抗するがよいしょと立たせられてしまう。

「ランチ…じゃない」

やっと振り絞った声に気付いてくれるが手はしっかり掴まれ、よろけそうにならないように腰に手を回され半ば引きずられるように控え室からランチ会場?へ歩いた。

大きな扉の前で歩みが止まる。

扉を開けられる前に、足が竦んでしまう。

この向こう側へ行けば取り返しがつかないことになる。

怖くて、それ以上全く頭が回らない。

その瞬間、繋がれた手はスっと外される。

「待ってるから」

それだけ言われて、扉の向こう側へ消えてしまった。


ペタンと腰が砕け絨毯に足がついた。

「うわぁぁぁぁぁぁ」

泣き叫んだ、この先にはいけない。行ってしまえば迷惑になる。

嬉しいけど、先に行けない。大好きな人達に迷惑は掛けたくない。

「あのさ、泣いてるとこ悪いんだけど…早く入ってくんない?」

「だ、だって…」

「あんたが覚悟決めて、あいつのトコへ来たんだろ?今更なんでここで止まってんだよ?」

泣いてる私に声を掛けてくれたのは、こちらへ来てから何かと世話を焼いてくれてる彼の友達だった。

「なんで慰めに来たはずのお前が余計泣かせてんの」

そう言って、涙でぐちゃぐちゃの顔を吹いてくれるのは他の彼の友達。

びっくりしたよねぇと声を掛けられ少し涙も止まってきた。

「あの扉の向こうには君とアイツを祝ってくれる人しか居ないよ?」

「ここまで、準備手伝ったのに始める前に泣き喚くとか…有り得ねぇ!」

「ホント、泣くとこまで想定内なんて…」

ピタっと涙も止まる。

止まったねと声をかけられてベールはまくられ、涙を吹いてくれながら、メイクを直されながら今起こってる事について説明された。


この日のために、彼は沢山奔走してくれていた事。

惚気話ばかり聞かされながら協力をしてくれた沢山の人が居る事。

結婚の話が出る度に逃げてしまわれては凹んでいた事。

「あ、それから伝言…待ってるって」

これから始めまる事、先の不安は山ほどある。

だけど、行かなきゃ、立ち上がろうとしてモタモタしてるとフッと身体が浮いて、足の裏が地面につく。

後ろから羽交い締めに緩くされて一言

「つかまえた」

瞬間、私の涙腺はまた洪水を起こしかけそうになるとくるりと彼の方を向かされ、ベールをかけられた。

「いけるか?」

短く彼の友達が確認する声に、こくんと頷く。

扉の向こうへ彼の友達は消えていった。


扉の前に、今度はホテルのスタッフが立ってる。

「よろしいですか?合図の後お入りください」

扉が開くと、音楽が流れ出し拍手が響く。


ハッと目覚ましのアラームを止めそのまま時刻を確認する。

遅刻する、バタバタと準備を始めても到底間に合いそうも無い時刻だ。

「おはよ、起きた?どこ行くの?」

声の方を向くけど、ここはどこ?ベッドからおりて窓の外を見る。

「昨日…そのままホテルに泊まったの忘れた?」

クスクス笑いながら彼は近づいて、ネックレスについた指輪をつつく。

「夢じゃないよ?」

彼は私の顔を見ながら優しく笑ってくれた。

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