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私に纏わる怪異鬼縫  作者: 三人天人
雷雲は窮を告げる
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幕間 浅草寺

 頭に走る激痛に目が覚めた。

 あまりの痛みに額へ伸ばそうとした左手にも鋭く痛みが走り腕が上がらない。

 目だけを向けると、肘から先がややあらぬ方向に向いている。

 どうにか痺れる手足を圧して姿勢を直すと、遠く喧噪が届く。

 周囲は大わらわ。

 私の前に立つ人影は何かを強く引いているような姿勢で、

 その恰好のまま私に声をかけている。

「当主ッ!当主ッ!お気づきですか!?当主ッ!」

 三度(みたび)走る激痛に苛まれて、その刺激が意識をはっきりとさせてくれた。

 そうだ、あの妖が。

 傍らに転がる、砕けた桐箱から(まろ)び出ている裁ち鋏を掴み、杖にして、どうにか立ち上がるも、脳震盪を起こしているのだろう、気の巡りも乱れに乱れて、支えが無ければ膝立ちを維持する事も危うい。

「当主ッ!既に伝令は出しました!しかしッ!」

 周囲を見渡せば、お頭様も同様に負傷している様子。背筋に冷たいものが走るが、周囲に控えていた部下の数名がその背に隠すようにして立ちはだかっているのが見えて一旦の安堵は得られるが、いずれ状況は悪いままなのだろう。暴れ出した妖はといえば、沙汰に同行し、念のため伏せていた「織り」と「紡ぎ」によって拘束されているようだが、目の前の「織り」の様子を見れば、それも一時凌ぎにしかならないことは一目瞭然であろう。

「当主!お目覚めであればご指示を!も、もうあまり持ちませぬッッ!」

 目の前で踏ん張る「織り」は懸命に留め紐を繰っているが、しっかと踏みしめる足はじりじりと引き寄せられ、紐が指に食い込み血が滴っている。見れば頭巾が外れて顔にかかり、流血によって顔半分にへばりついているではないか。

 どうして、どうしてこうなった。

 はじめの二倍以上に大きく膨れ、真紅に肌を染めて暴れ狂う妖が、何故そうなったか、

 切迫感に焦げ付き始めた頭を抱えて必死に思い出す。

 なぜこんなことになった。












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