解いて説く 4.5 幕間
背後から響く慟哭に思わず振り返る。
まぁ、そうもなろう。
我がことながらあまりにも矛盾しているし、説いて聞かせた事にしても力任せに梳き抜いた櫛が欠けるは通理。必ず歯抜けとなり、欠けた先から割れていくもの。
きっと私の事は立場を利用して、横道に危険を背負わせようとする悪人に見えている事だろう。
だとしても仕方がない。仕方がないの。だって、昨日まで予定していた事も私の思惑も、全部昨夜の失態で瓦解したんだもの!私だってこんな風に強要する形も
「当主、丑鬼組から連絡が」
赤谷がいつの間にか通路の先に居た。
足早に駆け寄ってきて次第を話す。曰く、例の妖への沙汰は今夜十九時に下す、よって、闖入者に備えておいてほしいとのことだった。
「分かりました他の者にも伝えてください、私が十八時には現地で控えますがそれまで蟻一匹通さないよう警戒を厳にするよう丑鬼組と見張りの織りにも伝えてください極小さな異変も見逃さないようにそれと秀二様にも逐一連絡を入れるよう徹底させなさい、それと纏異が逃亡したりしないよう此処にも二人程割いてください接触は禁じます別動隊の方の指揮は全て任せますが定期連絡だけは欠かさずに行うように」
儘なら無すぎる事柄の連続に煮えくり返る腑で沸き立つ熱を溜息で追い出して、苛立ちを隠す余裕も無い自分に尚苛立ちながら答える。矢継ぎ早の指示に赤谷も面喰っているではないか。
「・・・・・・・・綾子様、先ほどの会の件ですが」
「意見を求めた覚えはありません!もう!たった一夜でこの始末じゃない!だいたいなんでこの忙しい時に!」
額に手を当てて爆発しそうな頭を握りつけてどうにか落ち着こうと息も荒く管を撒く。
なんて無様、当主になってこれほどの醜態を晒すようになるなんて本当に無様。
激昂する私を見つめていた赤谷は「では、手筈通り動きます、よしなに」と告げると姿を消した。赤谷に当たるようではまだまだ甘えている。しっかりしなくては。
まずはこの一件を着地させる。六人殺しの大馬鹿モノを裁いて内通者も捕えて事後処理をする。それが済んだら依子さんと向き合おう。まずは目の前の事を。まずは。