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無能扱いされていた生体錬成士の俺が最強幼女ホムンクルスを生み出した。  作者: tatakiuri
五章.精霊が絵画を嗜んじゃ駄目って?いや駄目とは言ってないじゃん。
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59.矢無しの弓

そのままエアリィは手にした弓の弦を引いた。しかしそこにはつがえる矢がなかった。さしずめ“矢無しの弓”だ。その外観はどことなく間の抜けたものではあったが、まっすぐに外壁を見据える彼女の眼を見れば、そのような違和感もなくなるだろう。


「いけ!」


 その一声と共にエアリィは引き絞った弦から手を離す。

 瞬間、金属を切り裂くような甲高い音が周囲に響く。それは到底、弓を放っただけで発せられるような音ではなかった。



        ※



 魔術都市の外壁上には総勢二百の魔術師が並び、接近するキャラバンに向けて魔術を放っていた。その中には管理局所属の警備隊もいれば、自ら志願して戦いに参加した者もいる。

 自分達の標的が同じ生きたヒトであることは全員承知である。だとしても、魔術都市に危害を加えようという意思を持った相手なら容赦はしない。致命的な負傷を負ったとしても後から治癒の魔術をかけたり、あるいは医者のところにでも放り込めばなんとかなるだろう。

 そもそも、魔術師かれらは自分以外の魔術師の事情にも、ましてや生死にも頓着しないのだ。魔力が続く限り、絶え間なく魔術を放ち続けるつもりだった。


 そんな中だった。遠くの方で何か、金切り音が響いた。

 その次の瞬間、ひとりの魔術師の身体がくるりと縦に一回転した。まるで見えない腕に足を捕まれ、そのまま乱暴に振り回されたかのようだ。


「うおっ!な、なんだ!?」


 そのまま宙に浮いたまま地に足がつかず、水の中でもがき苦しむようにじたばたする魔術師。と、その手が何かに触れた。何もないはずの空中に、見えない壁のようなものがある。

 これは、結界だ。魔力で作られた球形の膜のような結界に身体が封じ込められている。これでは身動きが取れない。

 周りを見渡すと、他の魔術師達にも次々と同じことが起こっていた。


 疑いようもない。これは召喚士てきからの攻撃だ。先程の金切り音は風の魔力をこちらに飛ばすことで発せられたもの。空気が振動されそれが音となって響いているのだ。放たれた魔力はそのまま魔術師達の身体を結界の中に包み込んだ。

 そう。これこそがエアリィの放った“矢無しの弓”の威力だった。


「風の魔術か!クソ、こんなものこっちも魔術で突き破ってやる!」


 魔術に対しては魔術だ。結界を内側から破ろうとする。

 しかし。


「魔力が安定しない……。だめだ、魔術が使えない。これじゃここから出られん、攻撃もできん!」


 結界が内側の魔力の流れを阻害しているのだろうか、魔術として成立するだけの魔力が集まってくれない。このままではこちらは完全に無力化されてしまう。

 そこに、結界の外にいる別の魔術師が呼びかける。


「内から駄目なら外からだ、今そいつを破壊してやる。加減を間違えて多少巻き添えを食っても恨むなよ」

「頼む!」


 が、彼もまた魔術を放つことはできなかった。そうしようとした瞬間、彼は崩れるように地面に膝をつき、そのまま身体に重しを乗せられたかのように這いつくばってしまった。


「な、なんだ。急に身体が熱く……。それに、なんでこんなに()()()んだ?」


 なんの前触れもなかった。突然全身から汗が吹き出し、身体の節々が煮え湯を流し込まれたように鈍い痛みに包まれた。意識は朦朧とし、筋肉に力が入らない。

 この感覚は、何かに似ていた。

 そうだ。()()だ。感染症に対する免疫反応により体温が上昇した時の感覚にそっくりだった。

 自分だけではない、他の魔術師達もほとんどが同じ状況に苦しんでいるらしく、もはや彼らの攻撃の手は完全に止まっていた。


「た、体温が急激に上がっている。これも奴らの攻撃か……っ!」



        ※



 走る馬車の荷台の上、全身から炎をくすぶらせる人型の蜥蜴とかげが、仁王立ちしながら声高に言った。


「我に対しては、楯突くことそのものを許さぬ。跪け、肌を粟立てて頭を垂れよ」


 ドレークだ。

 彼の手により外壁全体の火の魔術を操作し、魔術師達の体温を急激に上昇させたのだ。人体というのは得てして外傷にも弱いが熱にも弱い。ヒトの体温は平均して36℃前後であるが、これがほんの1℃や2℃上昇するだけでも調子が悪くなるのだ。

 それを、一時的にとはいえ42℃まで上昇させた。ここまでくるともはや生命に関わる領域の発熱だ。とても活動できる状態ではない。魔術など発動させられないし、外壁からの攻撃も止むわけだ。

 とはいえ、これでは犠牲者を出さないという当初の目的が達せられなくなる。ティファレッテは大慌てでドレークに呼びかけた。


「だからやりすぎだってあなたは、もおぉ!」


 それに、荷台に同乗していた他の召喚士が続く。


「いや、でもこれは有効だ。このまま一気に敵を無力化しよう!」


 魔術師達の身動きを封じてくれたおかげで、召喚士達も攻勢に出るチャンスを得た。

 シルフが魔力を風に乗せ、サラマンダーが周囲を熱で包み込んだ。ならば次は土精ノームの番だ。屈強な男性の姿をした精霊達が一斉に荷台から飛び降りる。その身体はシルフが発生させた風の流れに乗って、そのもの疾風はやての如く外壁へと迫った。

 そして、彼らは手にした巨大な槌を高々と振りかざす。先頭を行くのはドキだ。


打つ(ノック)!」


 そんな独特な掛け声と共に、ノーム達は一斉に槌を振り下ろし外壁を叩く。大地を割るかのような轟音が勢いよく響き渡った。

 が、それはそびえ立つ壁を破壊するためではない。目的は別にあった。

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