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無能扱いされていた生体錬成士の俺が最強幼女ホムンクルスを生み出した。  作者: tatakiuri
二章.生体錬成士マルクスの第一歩!......にしてはちょっとハードじゃありませんかねぇ
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17.魔術師ホムンクルス始めました。



        ※



 ゴーレム設計士の処置が長かったことと、戦いで溶け落ちたオウルの右腕を新しく生成して移植しなければならないしで、結局その日もマルクスは管理局に出向くどころの話ではなかった。


 そうして翌日。

 目覚めがけのマルクスにオウルが放った開口一番の一言がこれだった。


「創造主。もう二日!」

「……」

「もう二日も無駄にしたんだぞ!」


 何が言いたいかは分かる。


「わ、分かってるって!昨日の件は不可抗力だからしょうがないだろう。今日こそだ!今日こそは君に魔術使用の認可を出してもらおう。ってことですぐに出発するぞ!」


 そうして二人はすぐに家を出て、今度こそ管理局を目指して歩き始めた。

 昨日の騒動で壊れされた街の修繕が早速行われているその脇を通り過ぎて、大通りを進む。



 そうして見えてきたのは、魔術都市の中央にそびえ立つ巨大な城塞のごとき建造物。管理局だ。

 周囲には警備用のゴーレムやホムンクルスが絶えず巡回しており物々しい雰囲気を醸し出すが、それにもまして多くの魔術師や観光客でごった返している。


 その一角にある案内所へと足を踏み入れる。魔術師としての身分登録などはここで申し込むことができる。

 無数に並んでいる窓口にどれでもいいから適当に声をかければ、晴れてオウルもおおっぴらに魔術が使えるようになるというわけだ。


 が、その前に二人は突然、案内所の職員らしき男から声をかけられた。


「あ、いたいた!魔術師マルクスさんですよね?」

「なんだ?」

「『なんだ』じゃありませんよ。先のゴーレム暴走を収束させたのは、あなたですよね?突き止めるのに苦労しました。なにせこちらが派遣した警備隊が現地に到着した時には、当のゴーレムはコアを抜きとられ無力化。目撃者の証言からあなたが先にゴーレムを倒したということが判明したんです」

「……それで?」

「今回のあなたの功績は、非常に偉大なものです。管理局われわれはそれに対する敬意を表しまして、感謝状と謝礼金を用意しております。どうかそれを受け取っていただきたく―――」


「あの!あのですねぇ!」


 職員の言葉を途中で遮るマルクス。


「それはこちらとしても喉から手がでるほど欲しいんですけどね?ほら、見て!この子ウチで製造したホムンクルスなんですけどね、見てこの顔!『これ以上余計なイベント起こすな』ってほら、顔に出てるでしょ!

 この子のですね?魔術使用許可を出していただきたいんですよ!この子ったらもう魔術を使いたくて使いたくて仕方がないみたいなんですよもう二日も待ってるんですよこれ以上待たせたら堪忍袋の尾が切れますよ今度はホムンクルスの暴走事件が起きちゃいますよそれでもいいんですよ!?」

「ぐるるるるる……!」

「ほらこの唸り声聞いてくださいよ!」

「はあ。左様さよですか。まぁ、こちらの要件については別に後で時間がある時でも構いません」


「だってさオウルよかったね!」

「スン(すまし顔)」



        ※



 かくして、オウルの魔術使用の要請は無事に承諾され、彼女は正式に管理局に登録された魔術師となった。

 魔術により生み出された生命体であるホムンクルスであっても、魔術師を名乗ることはできる。戦闘行為を補助させる目的で自らの創造物に魔術を習得させる魔術師も多い。


 その上で、先程聞かされた感謝状と謝礼金も無事に受け取った。

 割と貧乏人のマルクスからすれば洒落にならない大金だ。これである程度は逼迫ひっぱくした家計にも余裕ができるので非常に有り難い。管理局サマサマだ。


 そのようなこともあって、今朝はそこかしこ見境なく噛みつきそうなほどにお怒りだったオウルも今となってはすっかり上機嫌だ。


「ふふん。魔術師ホムンクルスのオウルである。道を開けよ」

「誰も開けないよそんなの君まだ初心者なんだぞ……」


 彼女が羽織るローブの襟元に、小さな印章バッジが輝いていた。

 管理局から発行される、魔術師であることを証明する印だ。このバッジ自体が内部に多くの情報を内包している記録端末となる一種の魔術アイテムだ。

 どんな種類の魔術を使っていいのか。それについてもこのバッジの中に記録されている。


「ふふん」

「大事なものだからな、失くしちゃダメだぞ」


 印章バッジは魔術師にとっては命の次に大事な証明書だ。何かの拍子になくさないように気をつけねば。

 マルクスがそんなことを考えていた、その矢先のことだった。


 案内所の中、大きな声が響いた。


「あぁー!見つけた!」

「!?」


 驚いて声のした方に振り向いてみると、一人の魔術師の少女がこちらを指差してわなわなと震えていた。

 大(?)魔術師のテトさんである。

 ちょうど昨日会ったばかりの相手だ。マルクスも当然覚えて―――


 いなかった。


「え、誰?」

「昨日の今日の事をもう忘れたの!?物事を記憶するだけの脳みそがないのかアンタには!」

「えぇ、いきなり脳みそない扱いされた……。いやホント申し訳ないんだが、見覚えはあるけど名前が思い出せないんだよ。っていうかそもそも、名前聞いてたっけ俺?」

「あ、ホントだそういや名乗ってなかったわごめんね!

 このアタシは大魔術師のテトさんよ!本当なら、昨日のゴーレムはこのアタシが倒していたはずなの!……その、少し手こずって設計士の女の人に怪我させてしまったのは素直にミステイクだったし謝りたいところではあるけど。それはそれとして、本当はこのアタシが類稀なる大魔術師の実力を遺憾なく発揮して、事態を収めるはずだったの!」


 マルクスとオウルの二人がそろって、『なんだこいつは(-_-)』という顔をする。


「本来このアタシが得るはずだった輝かしい功績を見ず知らずのどこぞの馬の骨に奪われるというのは、耐え難い屈辱だったわ。昨日は家に帰ってベッドに突っ伏して一晩苦悶し、朝気がついたら枕が涙で濡れていた。もしかしたらヨダレだったのかもしれないけどとにかく濡れていた。

 この屈辱をなんとかして忘れる手段はないかと考えた。そうしてひとつ思いついたの!」

「はぁ。それはなんでございましょうか」

「このアタシがアンタ達よりも優れた魔術師であることを、実力をもって証明する!

 “決闘”よ!」


「……」


 勇ましくそう宣言するテト(さん)の言葉に、しばらく沈黙するマルクス達。


「なぁオウル?もうその印章バッジもらったし満足だよな?もうイベント起こっていいよな?」

「 か か っ て こ い 」


 ドンと胸を張るオウル。


「調子乗りだよな君ってホント」

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