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アイヲンモール異世界店、本日グランドオープン!  作者: 坂東太郎
『第五章 売り出せ中食! 見せろアイヲンの実力!』

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第十三話 クロエは黙ってような。4Pってそっちじゃなくて、マーケティングの基本の4Pの方だ


「昨日の売上は203,000円。月間売上一億円を超えるには、まだまだ手を打つ必要がある」


「新記録の更新を目指すんだな! それでどうするんだナオヤ?」


 俺が店長になってから九日目のアイヲンモール異世界店。

 中食を狙って、昨日から売り出したカツとハンバーグとビーフシチューは好評だった。

 客数81人、売上203,000円はアイヲンモール異世界店オープン以来の記録らしい。少なすぎる。

 ……アイヲンなのに! 週末になれば広い駐車場が満車になってまわりの道が渋滞するアイヲンモールなのに!

 まあここは異世界で、車さえないんだけど。


「売り伸ばしの方法なんて決まってる。まずは4Pを見直そう!」


「よ、よんぴー、4P……だと……? ナ、ナオヤ一人では飽き足らず! 二人の男と一緒にわたわたしを襲うというのかッ! 三人がかりで私をもてあそび、汚し……くっ、殺せ!」


「そういう4Pじゃないから。というか4Pでそっちの意味は通じるのな。翻訳指輪すげえ。あと男二人はどこから来た」


「4P……ナオヤさんと、クロエさんと、私と、バルベラちゃんでちょうど四人ですね。私は初めてで、その、優しくお願いしま……いえ、痛くされても復活できますしナオヤさんがお望みなら」


「クロエってますよアンナさん? 落ち着いてください、俺そんな変態願望はありませんから。アンデッドならではのプレイをアピールされても惹かれませんから」


「……4Pって?」


「バルベラは純粋なままでいてほしい。大人の二人に変なこと教わらないようにな。バルベラが一番歳上だけど」


 俺を見上げて、4Pの意味を聞いてきたバルベラの頭を撫でる。

 バルベラはくすぐったそうに目を細めてる。

 ……はあ、癒される。


「戻ってこいクロエ。アンナさんも」


 パンパン手を叩いて、くねくねしながら妄想してた二人を現実に戻す。


「ナ、ナオヤ、いつ4Pするんだ? どこで4Pするんだ? その、私にも準備があってだな」


「クロエは黙ってような。4Pってそっちじゃなくて、マーケティングの基本の4Pの方だ」


 準備すればいいのかよ失格エルフって言葉は飲み込む。

 アンナさんは想像してた4Pと違うって気づいたのか、いつもは青白い顔が真っ赤だ。


Product(プロダクト)は製品だけど、お惣菜だし商品って言った方がわかりやすいか。Price(プライス)で価格、Place(プレイス)で場所、Promotion(プロモーション)は広告や販売促進のことだ」


「うん? ナオヤ、突然マジメな話か?」


「俺は最初からマジメな話しかしてないぞポンコツ騎士。要するに、この四つを見直そうってことだ」


「そ、そうだったなナオヤ! 朝からナオヤの獣欲があふれたのかなんて全然思ってなかったぞ!」


 目を逸らして言い張るクロエをスルーして、俺は話を続ける。


「4Pは基本的なフレームワークだな。ほかに有名なのは3Cか」


「わ、私が三人だとッ!? ナオヤ、私はまだ分身の術は使えないぞ!?」


「……なるほど、クロエ(Chloe)でCだと。異世界でアルファベットが通じるっておかしいだろ意訳がヤバいぞ翻訳指輪。なっちゃんかよ。おい待てクロエ、『まだ』ってなんだ。そのうち分身の術は使えるようになるのか?」


「な、ならば3Cとは回数か! わ、わた、私で三回も!? くっ、異世界人はケダモノか!」


「いい加減下ネタから離れろエロフ。違うって言ってんだろ」


 まだ開店前の早朝から妄想を飛ばしまくってるクロエに頭を抱える。

 話が進まない。

 今日は開店前にやりたいことがあるから、早めに出勤してもらったのに。


「あー、まあ3Cの説明はまた今度な。昨日の感触だと、お惣菜の価格はアレでよさそうだ。特売はありだと思うけど、その場合は販売促進、プロモーションの方で考えればいいしな」


 クロエはようやく、大人しく話を聞きはじめた。

 アンナさんはふんふん頷いている。

 バルベラは立ったまま目を閉じてる。聞く気ゼロか。……しょうがないよねドラゴンだし。実年齢は一番上なのに!


「プロダクト、商品については、俺に考えがあるから任せてほしい」


「ナオヤ、では私は何をすればいいんだ? ポンコツ騎士と呼ばせないためには何でもするぞ? 聖騎士の! この私が!」


「いま『何でもする』って言ったな?」


「ナ、ナオヤ? な、なんだその笑顔は? はっ! 違うと言いながら! 4Pとはやはり三人がかりで私を襲うことで! くっ、この聖騎士たるクロエを罠に嵌めるとは! なんたる策士!」


「……ゴブリンの罠でも嵌まりそうだけどな」


「ナオヤさん、私もお手伝いします。残るPはプローモーション、広告や販売促進のことですよね?」


「さすがアンナさん賢い。前店長はクロエだったのになあ」


「……がんばる」


 クロエから言質を取って、アンナさんとバルベラもやる気を見せてくれた。

 俺はまだ何も言ってなくて、何をしてほしいか伝えてないのに、やってくれると。


「くくっ。おっと、じゃあ三人ともちょっと待っててくれ」


 そう言い残して、俺はアイヲンモール異世界店のバックヤードに向かった。

 うまくいったと、三人に見られないように笑いながら。

 あ、ゴーストと目が合って「ヤバいもの見た」とばかりにさっと逃げられました。




「ナナナナオヤ! なんだコレは! なんだコレはッ!?」


「どうしたクロエ?」


「クロエさんの言う通りです! どうしたじゃないですよナオヤさん! なんですかコレ!?」


「……布?」


 クロエが俺に詰め寄ってくる。

 クロエだけじゃなくて、顔を赤くしたアンナさんも。

 バルベラは肩のあたりをつまんで、不思議そうに首を傾げている。


「なんだコレはって、()()だけど?」


「水着、コレが水着だとッ!? こ、ここ、こんなのただの下着ではないか!」


「えーっと、クロエはビキニだな。さすがエルフ、スタイルはいい。スタイルは」


「おおっ、ナオヤが私を褒めるなんて! ありがとうナオヤ!」


「あっさり機嫌が直って単純すぎる。あと『()』に気づいてないらしい」


「ナオヤさん、私はごまかされませんよ! 私の下着はドロワーズですからコレの方が猥褻なんですけど! なんですかコレ!」


「アンナさんのはワンピースタイプの水着ですね。しかも谷間からヘソのあたりまでざっくり開いてるタイプです。すごくセクシーですよ」


「せ、せくしぃ、わた、わたしが、せくしぃ? その、そんなの、初めて言われ」


「……水着?」


「あー、バルベラのはスクール水着ってヤツだ。まさか春日野店で販売してる、近所の学校指定の水着が持ち込まれてるなんて思わなかった。似合ってるぞバルベラ」


 褒められてうれしそうなバルベラの頭を撫でる。

 どうなることかと思ったけど、とりあえず着せることには成功した。


「よし! んじゃこれ持って三人とも並んで! 背が低いバルベラが前で、クロエとアンナさんはその後ろで! ほらもっと近づいて!」


 このまま押し切るために大声で指示を出す。

 俺の勢いに流されて、三人は水着姿で並んだ。


「はーい! じゃあ撮りまーす! 三人とも、この()()()を見るように!」


 三人が疑問を持つ前に、ガンガン指示を出していく。


 4Pの一つ、プロモーション。

 広告宣伝と販促には、写真が欠かせない。


 ……水着姿の意味?

 べ、別に俺が見たかったから水着を着せたわけじゃないし!

 ほら道を通る人は商人と冒険者が多くて男だらけだから!

 ちゃんと服を着てるバージョンも撮るつもりだし!



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