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ハーレム

一人のハーレム要員に本気になったハーレム主

作者: 黛 カンナ

リクエストがあったので、書きました!。『ハーレム男のハーレム要員』を先にみた方がいいですよ。

俺の名前はリアン。


世界的な俳優をしており、実業や株にも手を出している、自分でいうのもアレだが、金持ちで顔もよく、知名度もある男だ。


好きなものは女。趣味はハーレムを作ってハニー達と遊ぶことであり、本命は作らない。


はず……だったのだが、最近、ちょっと可笑しな事になっている。




始まりは…ただの気紛れだった。


その日。日本の仕事でとある町に来ていた。

そこそこ極秘にしていたのだが、やはり何処からか情報が漏れているらしく、町はファンでいっぱいになった。


そこに、たまたま俺のファンという、とは言っても、ニワカで頭の弱そうな女、鶴美と出会ったのだった。


顔も悪くなく、日本にいるまでの暇つぶしとして、その鶴美をハニーにした。


「言っておくが、お前以外にもハニーがいるからな」


「分かってますよ~」


意外とちゃんと分かっているようであった。まぁ、俺ぐらいになれば、その辺はちゃんと分かるのだろう。


日本にいるまでの、この町にいるまでの、いい暇つぶしになる。どうせ一週間がそこらなので、こんな女に夢を与えるのもいいだろう。


三日もしたら、すぐにこの町を離れる。そんな、軽い気持ちで。





3ヵ月後


「可笑しい…何故、俺はここにまだ居座っているんだ?」


緊急事態が発生した。俺は何故か、まだこの町に滞在している。


仕事はすんなり終わった。海外からの仕事も来ているし、実際にそこへ仕事に行くにも関わらず、何故かこの町に戻ってくるのだ。


可笑しい…何かが可笑しい。


「いつのまにか、マンションまで購入していた」


可笑しい。

何故か購入してしまったのだ。しかも、鶴美が『このマンションってホテルみたいでいいね~』と言っていたやつをだ。


そして、本来なら俺は自分の住む場所に他人はいれたくないのだが…何故か、鶴美には許してしまっている。


これではまるで、俺が鶴美に本気になったようだ。


「いや、ない。俺の好みとは物凄く離れすぎている」


あいつは純日本って感じでそんなに目立つ顔じゃない。まぁ、可愛い顔だとは思うが。


胸も小さいし、華奢な体格だが、お腹いっぱいに食べるとポコンと出る。健康的でいいとは思うが…今度、何か食べさせてやろう。


つまる所、外国のセクシー女優たちが主な俺のハニーたちとは大違いなのだ。


執着する理由なんて無い。


「はぁ……別れよう」


決めた。別れようと。


メロン♪メロンパー……


バシィ!!


鶴美専用の着信がなったと同時に、俺の体は反射的に動いていた。


これはアレだ。別れ話をするためだ。そうだ。


そう言い聞かせて俺は通話ボタンを押した。


「あのね~親がちょっと蒸発したので、佐吉くんの家に住むので、ちょっとそっちのマンションに行けなくなっちゃった~」


ブツ


切れた。


「佐吉って誰だぁぁああ!!!?」


思わず叫びをあげる。


ってか、佐吉って誰だ!?あぁ、そういや、この間の会話で佐吉っていう奴が出てた!!幼馴染みって……ざけんな!!俺を頼ればいいだろうが!!


何やってんだあのアホ女!バカか!?バカなんだな!


俺は怒りもそのままに車に乗り込み、鶴美の元へと全速力で走っていった。



鶴見との会話を思い出し、佐吉の家が川の近くにあった筈なので、急いで車を走らせていると、鶴見の後ろ姿と、少年らしき後ろ姿が歩いているのが見えた。


車を止めてから、降りて、大きな声で叫ぶ。


「鶴美!!」


俺の声に二人は振り返り、驚いていた。


佐吉の方は、最初は声に驚いていたが、俺の顔を凝視すると、目を見開いて驚いていた。グラサンはしていたが、流石に隠しきれるものじゃないのだろう。


「うっわ……本物かよ!?スゲー!!鶴美、知り合いか!?」


興奮して鶴美の肩を揺さぶっている。


鶴見は逆に冷静で、いつものホケボケとした…けれど、心理を絶対に見透かすことをさせない、静かな笑みを浮かべて言った。



「ううん、他人」



優しげで、ほだらかで、暖かい。だからこそ、その言葉が怖かった。


「…っう…うぅ……」


目から何か液体らしきものが出そうになったが、根性でとどめ、鶴見の腕を引っ張った。


「俺は…鶴美の恋人だ!他人じゃない、だから、お前の家には住ませない。……鶴美、俺の家に住め。部屋なら腐る程ある」 


「え、いいの~?」


バカ丸出しの笑顔を浮かべているが、さっきの空虚さはない。酷く、安心した。


「あぁ、だからさっさと車に乗れ」


「うん~」


鶴美を車に乗せていると、佐吉がこっちを見ていた。


なんなんだ?と、大人気なく睨んでみたが、佐吉は怯まなかった。


「鶴美のこと、よろしくっす」


頭を下げたこいつに、何故か敗北感があったのは、きっと気のせいだろう。




そんなこんなで、鶴美は俺のマンションに住まわせている。


特に深い意味はない。飽きたらほっぽり出すだけだ。


彼女に本気になった訳ではない。何故なら、ハニー達との縁を切ろうとは思わないからだ。


「ねぇん、今日はホテルに行かないかしらぁ?」


ハーレムの内の一人である、メルシアとの共演があった日、『そういうこと』を誘われた。


彼女は、褐色の肌と豊満な体をもつ女優であり、何度か抱いた事もある。


いい関係を築きあげていると思うし、俺の女性関係もいいと思っているらしい。


「あぁ、いい…」


いいぞ…、肯定の言葉を出そうとしたが、今日の予定を思い出した。


「やっぱり悪ぃ…今日は鶴美が味噌カレー作る日だから」


「は?つる…え?味噌?」


今から帰って、間に合うか?いや、間に合わせる。


「だから悪ぃ、今日は帰るわ」


後ろで困惑しているメルシアを放っておき、俺はすぐに帰っていった。


味噌カレー味噌カレー味噌カレー。俺の頭は味噌カレーで一杯だった。




とまぁ、こんな感じにぞんざいに扱ったのが、悪かったのかもしれない。


皆平等に愛し、優しくするのが、信条だったのに、俺はそれを破った。だから、なのかもしれない。



『薬王寺リアン、ついに本命の彼女!もうすぐ結婚か!?』


そんなニュースが流れていたのを、仕事の終わりにやっと気づいた。


一瞬『鶴美のことか?』と思ったが、どうやら違ったらしく、相手はメルシアだった。しかも、「スクロールして見ると、何故か鶴美は悪女にしたてあげられている。


こんなことをするのは、メルシアだと、確信した俺はすぐさまメルシアへ通話をした。


プルル…ガチャ


「『ニュースを見た。なんなんだアレは…お前との結婚なんか考えてない』」


「『じゃあ、何?その鶴美って子と結婚すんの?随分と入れ込んでるもんね』」


「『する訳ないだろ』」


鶴見はまだ学生なので、そんな事は出来る筈が無い。


それに、日本の雑誌のゼクシーやらたまごクラブを何気なく置いても無視するし、『俺が海外に拠点を戻したらついてくるか?』という質問にも『バカじゃないの~?』と答えてくる。


何回か『それ』を匂わす発言をしたが、全て見事にスルーされ、最近では、ホケボケの笑顔を出しながらも、心底うんざりした様子を見せてくる。


だが、俺のことが好きではあるらしい。


『どういう男かタイプなんだ?』


と、聞いた時、


『えっとね~長年一緒にいて~優しくて~男気もあって~、それで口説くような事をいうし、私を優先的に扱う癖に、自分はいつの間にか、彼女とか作ってるやつ~』


と、言っていたので、俺の事であるのは間違いない。しかし、結婚は嫌らしい。


なので…。


「『結婚なんて考えるわけがないだろ』」


「『ふーん、じゃあ、別にいいじゃん。私は、別に結婚したいって訳じゃなくて、貴女に本命、もしくはあんな程度の低い女がハーレムに入っているのは嫌なのよ。じゃあね』」


ブツっと、切れてしまった。 


「…はぁ…」


スマホを座っているソファにおいて、考えた。


これは、俺の管理が悪いのだろう。俺はハーレムを作るにあたり、女は平等に扱うことにしていて、本命のようなものだと勘違いされる女性は作らない事にしている。


確かに、少し鶴美に入れ込み過ぎたようだ。


「…いい機会だ。わかれよう」


今度こそ、本当にわかれよう。確かに鶴美は傍にいて、癒される存在ではあるが、こういうトラブルになるならやめよう。


そう、決意した。


メロン♪メロンパー…


バシィ!!


条件反射でスマホを掴む。

いや、コレは…アレだ。別れ話の為だ。


ただまぁ…、鶴美がもしも、泣いて嫌がるなら…考えてやらないこともない。


ッピ


「『あ~リアンくん?別れよっか。荷物は今日中に出すから安心してね』」


ブツ


切れた。


目の前が、絵の具をぼやかしたかのように滲み、喉がヒリヒリと厚くなる。


「…っ…うわぁああん!…ヒック…ふぇぇん」


震えた声が喉から溢れ出て、顔中の液体が溢れ出た。


「これから、映画の打ち上げに……って、リアンさん!?」


やってきたマネージャーは、普段では絶対にありえない俺の姿を見て驚愕していた。


「俺…帰りゅぅ…」


「え、待っ……」


マネージャーの言葉を無視して、俺は過去最高の速さを持ってして、自分のマンションへと向かった。





マンションに入り、急いで自身の部屋に入る。


まだ、鶴美が帰ってきている様子はない。


しかし、荷物を取りに帰ってくるとは言っていたので、玄関で待っていたらいいはずだ……そう…だよな?


「はやくぅ…戻って…」


情けないぐらいに涙が溢れた。

こんなにも泣くのはアレだ。親に捨てられた時いらいだった。


「…ヒック…はぁ…」


ようやく涙も出し切ったと思った時、ガチャリとドアを開く音がなった。


「ただい……」


「……」


鶴美は俺を見て、少しだけ驚いた顔をしている。


今の俺は目と鼻を真っ赤にして、黄色い目に、水玉がついるので、相当情けないこととなっているだろう。


「あらあら~どうしたの~?」


ホケボケと、鶴美が問えば、もう我慢が出来ず、俺は思いっきり抱きついた。


大人一人を支えられる腕力が鶴美にある筈もなく、玄関で押し倒すことになったが、気にしてられない。


「…っず…んだよ…あれ、マジ…ふざけんな。別れるとか……」


要領を得ず、グシャグシャな声が俺の喉から出てきていた。


「よしよし~」


泣きながら、喋る俺の背中をポンポンと叩いて、鶴美は安心させるように声をかけてくる。


「リアンくん、結婚するんじゃなかったの~?」


「んな訳ねーだろ…つーか、それぐらい察しろ……ボケ…アホ……俺がどんだけ……捨てないで」


悪態をつく気力も失った俺は、起き上がろうとする鶴美を力でねじ伏せて、逃がさないようにする。


「捨てないで……ごめん。違うんだ、アレは本当にただの共演者であって、何の関係もない。確かに寝たけど、結婚とかする訳ねーだろ。頼むから嫌いにならないで……」


弱々しく、いい大人が吐く台詞ではない言葉が次々に出てくる。

時おり、嗚咽まぎれに出される声は、自分で聞いていても気持ちが悪い。


そんな俺を、鶴美は受け止める。

絶望も、優越感も、抱かず、そのまま受け入れる。


まるで聖母か何かのように、暖かい。


「そっか、そっか~。

私は嫌いにならないよ~だって、リアンくんは格好いいもん~踊って歌えて演技も出来て…他にも色々と凄いとこあるじゃん~

それは、君の今まで積み重ねたものでしょ~?


だから、好きだよ。」


その言葉に気が高ぶった俺は窒息死させるかの如く、強く強く抱き締めた。


いっそこのまま腕に抱かれて死んでしまえばいいのに。


「苦しいよ~。あ、仲直りついでに、何か作るよ~カレーとハンバーグ、どっちがいい~?」


「カレー」


「分かった~だから、一旦離れて~」


「やだ」


「も~」


困ったように、鶴美は笑って、抱き締められたままでニコニコと笑っていた。



俺はもう、この笑顔なしで生きることは不可能だろうと……その現実をようやく理解したのであった。

薬王寺リアン

世界的な俳優であり、女好き。

実は親に捨てられたことがあり、歪んだマザコンで、ちょっと精神も情緒不安定。無意識だが、鶴美が本命。


鶴美

リアンの恋人。

基本的にマイペースでホケボケとしており、本気で頭の悪い女だが、本質的にはヤバイ何かをもっており、実はリアンに本気ではない。(受け入れはする)


佐吉

鶴美の幼馴染。

彼女持ちではあるが、優しくて鶴美を大事にしている。

鶴美の本質に気づいてはいるが、変に鈍感なのと、持ち前の男気で受け入れている。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今まで、似たような物を見て来たけどここまで本気で怖いと思ったことはなかったです(;-ω-) 彼女の本音を聞ける日はくるのでしょうか?
[一言] もしかして本当に好きだった人に彼女がいたから、お試し としてリアンを受け入れたのでしょうか。 幼馴染とは、自覚無しの両片思いの気がしました。 鶴美、ちょっと怖いですね。
[一言] 鶴美の好きなタイプって佐吉なのでは……。 この先リアンが嫉妬で佐吉を傷つけたりしたら、今回のように泣き喚いてもあっさりリアンの事捨てそうですよね。
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