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文化祭 - 一

高校二年生の秋。晃は浩輔に誘われて、ある女子高の文化祭へ行く事になった。いつもの様に浩輔に振り回される晃に、文化祭でもとあるハプニングに襲われる。そんなお話。

夏休みも終わった九月、まだ外は茹だる様な暑さが残っている。そんなとある土曜日の午後、俺は浩輔の家にいた。その日の朝はこれといって特に用もなく家にいた。すると、当たり前のように浩輔から誘いの電話があった。その日は浩輔も珍しく出かける予定がなかったらしく…というよりか、金もなくバイクで出かけるにもガス代がかかるため、金をかけずに遊べる俺を呼び出したというわけだ。


俺と浩輔は、暇つぶしにTVゲームで遊ぶ。しかし、それもものの一、二時間で飽きてしまう。ゲームを終えると浩輔は、暇だ、暇だを玩具の様に繰り返す。五月蠅い。


「なぁ晃、何処かいこうぜ?」


「何処かって、何処に行くんだよ?」


「どこか面白い所。」


「面白い所??お前、そんな所どこか当てでもあるのかよ?」


「パチンコ。」


「パチンコ?パチンコって、お前、金もってねーだろ。」


「無い。晃、金持ってんだろ?貸してくれよ。」


浩輔は悪びれる様子もなく、俺に金を貸せと言ってくる。


「うるせー。お前に貸す金なんかねーよ。その前に、人に金借りてまでパチンコをしようとするな。」


いつもの様に、俺は浩輔を叱る。


「ちぇっ、なんだよ、つまんねーな。」


そう言うと、浩輔はベッドの上で不貞寝を始めた。俺は部屋に一人同然の状態になってしまった。とりあえず浩輔の不貞寝を無視して、部屋に転がっていた漫画の単行本を読み始めた。

部屋を静寂が包む。単行本を二、三冊読み終えた頃だろうか、ベッドの上で横たわっていた浩輔が、急にベッドの上で振り返って、


「そういえば!!」


と急に大声を上げた。俺は突然の浩輔の大声に驚き、反射的に


「うるせぇ!急に大声を出すな!!」


と傍にあった単行本を投げつけて、怒鳴りつけてしまった。ベッドの上にいた浩輔も流石に驚いたのか、キョトンとした顔をしていた。


「悪い、悪い、驚かすつもりはなかったんだけど。つーか、いい事思いついたんだよ!」


「なんだよ、いい事って?」


「いやな、もう二学期も始まったじゃん。そろそろあれが始まる時期じゃん。


「あれ?あれってなんだ?」


「文化祭だよ、文化祭!」


「あー、そういえばもう暫くしたら文化祭だな。つってもまだ先の話だけどな。それがどうした?」


「いや、だからな、二人で文化祭巡りしないか?晃の所は他校の生徒は見に行けるのか?」


「うちの学校?さぁ、どうだろうな。父兄や学校の近所の人は来てるって聞いたことあるけど、去年は他校の生徒なんか殆ど見なかったな。」


「えーっ、マジかよ!なんだ、つまんねーなぁ。まー、いいや。とりあえず文化祭巡りしよう!女子高だったらカワイイ女の子いっぱいいるだろうしな。」


浩輔はにやついた顔で言い放った。俺は呆れた顔で、


「お前の頭ん中はそればっかだな。つか、当てなんてあるのかよ?」


と返した。すると、浩輔は自信満々な顔で、


「アテ?そんなんない!が、なんとかする!」


と、返してきた。

俺は、根拠がないが、だけど自信満々な浩輔の顔を見て、『またか…。』と呆れながら溜息をついた。


それから数週間経ったある日、再び浩輔から電話がかかってきた。母から呼び出された俺は、浩輔の名前を聞くと、怪訝な、且つ呆れた顔で受話器を取る。


「なんだよ、どうした?」


「あぁ、あのな、この前家に来た時に文化祭の話したの覚えてるか?」


「あぁ、覚えてるよ。」


「おっ!よかった。じゃぁ、行こうぜ!」


浩輔の声からして、受話器の向こうでにやけ顔をしてるのが、あんとなく想像できる。


「おい、お前、今顔にやけてるだろ?ま、それはともかくだ。約束したから行くのは構わないが、前にも言ったが、当ては出来たんだろうな?」


すると、意外にも浩輔からは少々怒気を含んだ返事が返ってきた。


「お前、俺をナメんなよ!当てがなかったらお前に電話なんかするわけないだろう!」


それを聞いた俺は『当てとかそういう以前にしょっちゅう電話してくるだろうが…。』と、思ったがそれがグッと心の中にしまい込んだ。


「そうか、わかったわかった。じゃあ、当てが出来たって事だな。」

「おう、聞いて驚くなよ。」


浩輔の心なしか偉そうな態度に少々苛立ちを覚えるが、黙って聞くことにする。


「聖愛女学院だよ。」


俺は驚いた。聖愛と言えば地元でも有名な、それはそれは俺達ポンコツ二人組には全くもってと言っていい程縁がない学校だからだ。俺は改めて浩輔に聞き直した。


「えっ?お前今なんて言った?聖愛女学院って言わなかったか?」


「言ったよ。聞えなかったか?せ・い・あ・い女学院だよ。」


俺は改めて驚いた。


「ま、マジか…。まさかとは思ったが…。そもそも聖愛女学院の文化祭なんて普通入れないだろう?確かあそこの文化祭に行くにはチケットがいるはずだけど、お前持ってんのかよ?」


そう、この聖愛女学園の文化祭は女子高の文化祭とあって、いつも入場希望者が殺到するのだ。なので、入場規制をするために、チケットが無いと入れない仕組みになっている。また、そのチケットを入手するにも、知人でもいない限りはそうそう手に入れることが出来ないのだ。


「当たり前だろう?チケット無いと高校の中に入れない事くらいお前も知ってるだろう。チケット無きゃそもそも誘わねーよ。」


「そ、そうだよな。お前ホント、スゲーな。こういうところは本当に感心するわ。でも、お前どうやってチケット手に入れたんだよ?」


「お前も細かいこといちいちうるせーなぁ。俺のネットワークにかかれば、チケットなんていつでも手に入るんだよ。で、どうするんだよ、行くのか?」


「分かったよ、行くよ。じゃぁ、当日はいつも通りにお前ん家に行けばいいのか?」


「分かればよろしい。おぅ、当日は俺ん家に来てくれ。そこから一緒に行こうぜ。」


「了解。じゃあ、当日は楽しみにしてるわ。」


そう言って、お互い電話を切った。




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