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二人の仲

浩輔は、今でこそ不思議なくらい俺とつるむようになったが、幼少期は然程仲がよくなかった。


俺と浩輔が最初に出会ったのは小学生の頃。


俺たちは田舎町に住んでいたこともあり、学校の規模の大きくはなく、クラスは1クラスしかなかった。

なので、俺たちは必然的に同じクラスになった。


小さい頃の浩輔のことはあまりよく覚えていない。


覚えているのは小学校三、四年生位の頃からだろうか。


浩輔は昔から性格が明るくてクラスのムードメーカーといった存在だった。


俺はというと、浩輔とは対照的に学級委員などをやる、クソが付くほど真面目な少年だった。

かと言ってクラスになじめない程のオタク風な子供でもなかった。


そんな対照的な二人だったためか、当時そんなに一緒に遊ぶといった訳でもなく、お互いただのクラスメイトぐらいの存在だった。


なので子供の頃はこれといった思い出がそれほどない。


あるとすれば小学校のグランドで野球やサッカーをやったり、当時流行った ゲームで一緒に遊んだくらいだろうか。


中学も俺らの田舎町には1つしかなく、二人はお互いそのまま公立の中学校へ進んだ。


クラスも一緒になることはあったのだが、やはり 二人の関係はそれほど密なものではなかった。


むしろ、どちらかというと、俺は浩輔に嫌われていたと思っていたくらいだ。


それというのも、俺と浩輔は同じ部活で俺はキャプテン、浩輔は練習に来ない典型的な不良部員だったのだ。

たまに練習に来たかと思うと他の部員達としょっちゅう騒ぎ、練習を邪魔するようなやつだった。

なので、俺と浩輔はよく衝突したのを覚えている。

しかし、ここでもムードメーカー的存在の浩輔は、同級生や後輩達から慕われていた。

もしかすると、当時の俺は、そんな浩輔に疎ましさを覚えていたのかもしれない。


そんな俺らが故に、普通に考えれば全く仲がよくなる要素が無く、なぜ浩輔とつるむようになったのか、さっぱりわからない。


そんな俺達が頻繁につるむようになったのは、お互い高校へ進学してからだった。


俺は公立の進学校へ進み、浩輔は市内から離れ別の高校へと進んだ。


それぞ別々の高校へ進み、俺はもう浩輔とは会うこともないだろう…そう思っていた。

むしろ、浩輔の存在すら忘れ、思い出すこともなく、高校生活をエンジョイしていた。


そんなある日、家に電話がかかってきた。


「晃、晃、電話よ!」


おふくろから電話口に呼ばれる。部屋にいた俺は電話の主に思い当たる節もなく、誰からかとたずねると、


「浩輔君からよ。」


と答えた。浩輔?最初に名前を聞いたときには、存在すら思い出せなかった。


浩輔、浩輔、こうす…あっ、思い出した。あの浩輔か?

あいつが俺に一体何の用なんだ?でも、あいつから電話してくるなんて珍しいな。


そう思いながら、受話器を取った。


「おう、晃か?久しぶりっ!元気か?」


受話器の向こうから聞こえてきた浩輔の声は、久々感を全く感じさせることのない、相変わらずの馴れ馴れしさで接してきた。

俺にとっては少々苛立ちさえ覚えさせるようなそんな態度だった。

俺はその苛立ちを隠しながら、冷静に答えた。


「お、おう。久しぶり、元気だよ。お前が電話してくるなんて珍しいな、どうした?」


すると浩輔は、俺の質問などお構いなしに話を進めた。


「おー、元気元気。ところでお前今何してんだよ?暇だろ?ちょっと家来いよ。」


なんだ、久々に電話掛けてきたと思ったら、いきなり暇人扱いか。相変わらず失礼な奴だ。

(特にこれといった用もなく、暇を持て余していたのは事実だが…。)


俺はこんな失礼な態度をとる浩輔を相手にする必要もないと判断し、誘いを断ることにした。


「お前なぁ、いきなり電話してきて、暇って決め付けて呼びつけるのはないだろう。俺、面倒だからいかないわ。」


冷たくあしらっておけば、浩輔も諦めるだろうと思っていたのだが、浩輔からは意外な返事が返ってきた。


「あら、そ?どうせ家にいるんだろ?じゃぁ、俺お前ん家行くわ。じゃぁな。」


それだけを言い残し、浩輔は電話を切った。

開いた口が塞がらないというのは、こういう事を言うんだろうな。俺の事など全くお構いなく、自分のペースで物事を進めていく。常々俺を苛立たせる奴だ。


とかなんとか考えていると、気がつくと部屋の前で原チャリの音がした。エンジンを一吹かせさせた後、音は止まった。

すると次の瞬間、俺の部屋の窓をドンドンドンッと叩く音がする。

俺はまさかと思い部屋のカーテンを開けると、案の定そこには浩輔が立っていた。しかも満面の笑みを浮かべて。


「よっ!」


ニコニコしながら俺の目の前に立つ浩輔に腹が立つ。しかし、それが浩輔らしい。昔と変わっていないところでもある。


「よっ!じゃねーよ。久しぶりかと思ったらなんなんだよいったい…。つーか、ここは裏口だ。入るなら玄関から入って来い。」


「おっ、そか。わりぃわりぃ。」


そういうと、ササッと玄関へ回り、家へ入ってきた。

俺の部屋へ入るや否や、俺が勧めるでもなく、部屋の中央に座り込んだ。その姿を見て、俺は即座に浩輔に問いかけた。


「お前、急に電話掛けてきたり、家に押しかけてきたり、なんなんだよ?」


「いや、特に何ってわけじゃないけど。まーいいじゃん、久しぶりに会いたかったんだよ。」


嘘か本当かは分からないが、浩輔はこういう事を平気で言う奴だ。

それから暫く、俺らはお互いの近況について話をした。


久しぶりに会いに行ってみると、浩輔は変わっていた。


昔は、「ゲームさえあれば俺は生きていける!」と言っていたゲーム好きな浩輔が、思春期を迎えて弾けてしまったのか、女好きへと変貌を遂げていたのだ。


容姿も、学ランを着てはいるものの、どちらかというと…チャラい。ちょっとした…というか、かなりの変わり様に戸惑ったのを覚えている。


でも、浩輔がなぜ突然このような行動をとったのかはさっぱりわからない。


そんな二人だった。

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