第八話:上条龍美と夕食
第八話
花も恥じらうなんとやらが食玩を頼むなんて珍しい事もあるもんだ。
誰だって隠したい事の一つや二つ、あるのだろう。彼女の場合はそれが趣味だと言う事だ。
ちなみに俺は密かに集めている巨乳のエロ本ぐらいか。
「食玩を買うのはもう呼吸するような感じか」
「うん、ライフワークかもしんない。買ってきてくれてありがと」
今回、俺に買ってきてもらいたかった品は新作らしい。世界の人体模型をラインナップしたものだそうで、それなりの出来栄えだとか。
「見る?」
「グロそうだからいい」
「男なのに肝っ玉が小さいんじゃないの?」
冷やかされたところで俺は右から左に聞き流すほどの気概は持ち合わせている。
「なぁ、上条」
「龍美でいいってば」
「じゃあ、龍美」
「なれなれしい」
「…」
何このやり取り。
上条が一生懸命箱を開け始める作業を始めたものの、そこへ言葉を投げかける。
「上条、この前のシリーズのシロアリだけないぞ。また買わなかったのか?」
そういうと首を竦められた。
このシリーズだけは覚えていたし、何より上条との出会った一件でもあるから忘れようにも無理だろう。
家に帰れば白アリが俺の机の上でおかえりを言ってくれる毎日。悪くは無いし、みれば上条のことを思い出させる。
「そりゃあ、そうだよ。だってそうでしょ?シロアリを持っているのは真白君だし」
「持ってこようか?」
「ううん、記念で持っていてよ」
そこまでいうのなら持っていようと思った。
「ああ、このシリーズは真白君のせいで未完シリーズなのかぁ」
「明日持ってくる」
「じょーだんだってば」
心底チョップを喰らわせたいようなやつだな。
チョップを喰らわせるか、喰らわせないかというところで上条が全ての箱を開けて人体模型を並べていた。
「そろそろ俺、帰るわ」
「え?もう帰っちゃうの?」
「そりゃあね、上条が俺を呼んだ理由は終わっただろ?」
食玩を買ってきて、渡すだけだ。本日、上条は学園をお休みしていたらしいのでお見舞いのつもりだったりもする。
「まー、そうだけどさ。もうちょっとゆっくりしていったら」
「今日は晩御飯が俺一人だからな。たまに外食でもしようかと思ったんだよ。そろそろ行かないと人数多くなりそうだし」
最近一人で外食したけど、寂しいもんだねぇ。一人で食べるのがこんなに寂しいなんて初めて知ったよ。やっぱり、食事はみんなで食べたほうがいい。
「じゃあさ、あたしの家で食べて行かない?」
「食玩のラムネをおかずとか言うのなら、帰るぞ」
「まっさかー…じゃ、外で食べようっか」
マジで出すつもりだったようだな。
財布と上着を手にとって二人で部屋を出る。
「どこに行く?」
「ラーメンでいいっしょ、ラーメンで」
「ラーメンねぇ…」
まぁ、そのくらいが限度だろう。
二人で並んで会話をしようにも、あまりに出会って日が浅い。
お互いが無言のままラーメン屋へ向かうことになるわけだ。
「なぁ」
「ん?」
「上条はいつから食玩を集めるようになったんだ?やっぱり、小さい頃から集め始めたのか?」
オタク気質がある人はやっぱり小さい頃の成果が今に結びついているのだろうか。
「ううん、違うねぇ」
「そうなのか」
「うん、そう。中学三年の受験ぐらいからだよ」
きっかけと言う者もあるのだろうか。
あまり突っ込んだ話をするのも如何なものかと考える。やだ、この人ってば私に興味ありまくりんぐーとか思われるのも嫌なものだ。
後日改めて聞くとして、今度は俺のことを少しだけ話をすることにした。
「俺の趣味は…」
「あ、ついた」
「…」
完全に話しかけるタイミングを逸したもんだな。
ラーメン屋の中に入って二人でカウンターに座る。
「ネギラーメン一つ」
「じゃあ、俺はラーメン」
「餃子が食べたいなー」
隣からの視線が痛い。
「真白君なら奢ってくれるっ、奢ってくれるっ…よね?」
じろりと睨みつけてやると舌を出される。
「ほら、真白君って女子の知り合い少なさそうじゃん?」
「生憎、転校生だからな。男子の知り合いも少ない」
転校してきて二週間、クラスメートと仲良くなりつつある。しかし、クラス外の知り合いは少ないので実質、餃子をくれくれ言うような友人しかいないな。
「…………餃子二つ」
「あいよー、餃子二つっ」
結局、俺は餃子を頼むことにした。いまどき餃子一つで喜ぶ女子も珍しいかな。
数分後にラーメンがやってくる。その頃からぼちぼち人が増え始めていた。
ラーメンを食べ終え、餃子も食べ終わる。
「ごちそうさん」
「意外と食うの速いな」
「まーね」
お腹を満たしてご機嫌だったのか、上条の家につくまで食玩の話を聞かされる羽目になる。
「じゃーね」
「ああ」
またどこかに食べに行こう、そんな話で終わりを迎えたのだった。




