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第二十七話:北原の告白

第二十七話

「冬治君、一緒に帰りましょうか?」

「え? ええ? 東先輩の方から誘ってくるなんて一体全体、どうしたんですか」

 これまで東先輩と一緒に帰ったことは確かないんだよなぁ。東先輩は忙しいから、一緒に帰ろうとしても時間帯があわなかった。

 生徒会メンバーになって仲良くなれるかと思えばそうでもなかったし、残念だ。

「今日は時間がありますから」

「なるほど……あの、でもすみません。今日は友達と一緒に帰るので」

「……そうですか」

「はい、すみません。また誘ってくれたら嬉しいんですけど」

「また誘いますね」

 廊下へ出ると北原が鞄を持って立っていた。

「生徒会長―、帰りましょ?」

「ああ」

 その時、後ろの扉が開いて東先輩が出てきた。俺と北原をみて……何だろうな、無表情になった。大体無表情だけど、それ以上に無表情になった。

「あの、冬治君」

「はい?」

「一緒に帰るって約束していたのは……」

「北原です。えと、何か?」

「い、いえ、何でもないです。気をつけて帰ってくださいね」

「大丈夫ですよ」

 東先輩にさよならを告げて北原と一緒に廊下を歩く。

「何だか東先輩、元気なかったな」

「ですねぇ」

「おいおい、何だか笑ってないか?」

「笑っているような気がするだけですよ」

 そうだろうか、その割には嬉しそうにしているんだよなぁ。

「大体予想がつくんですよ。何であんな元気なかったのか」

「へぇ、北原にはわかるのか」

「ええ、本人に確認しているわけじゃないですから本当かどうかは分かりませんけど。言ってもいいですか?」

「俺に?」

「はい」

 首をかしげると北原はありがとうございますと頭を下げた。

「多分、わたしと一緒に帰る事が気に入らないんですよ」

「それはまた何でだ」

「ほら、生徒会長は東先輩のいわば操り人形じゃないですか?」

「そ、それは確かにそうだけどな」

 反論する余地は一切のこっちゃいない。最近じゃいなくてもいいんじゃないかと陰口叩かれるくらいだからなぁ……俺もそう思うよ。

「悪しき習慣なんですよ。東先輩だけが悪いとは思いません……わたしはそう言うのが嫌いだから、東先輩とはウマが合わないんですよ」

「ほぉ」

 校門前でそんなことを告白されても少し、困るんだけどなぁ。

「ここらで革命起こしませんか? 生徒会長なら……冬治先輩ならこの学園の生徒会を変える事が出来ますよ。わたしと二人なら、絶対に」

 右手を差し出し、熱っぽい視線を向けられる。

「……革命ねぇ」

「はい。このままだと次の選挙もこんな感じになると思うんです」

「考えさせてくれ」

「わかりました」

 差し出された右手はあっさりと引きさがり、今度は別の表情になった。

「あと、一つ聞きたい事があるんです」

「あん? 何だい」

「彼女、いますか?」

 別にびくつくような質問でもないな。

「いる……いや、いないな」

「その多少の間は何ですか」

「うん? いや、まぁ、ちょっとな。とりあえず、いないよ」

「そうですか、良かったです」

「何でだ」

 北原は笑って答えた。

「生徒会長……いえ、冬治先輩。わたしと付き合ってくれませんか」

「……マジか?」

「はい」

 女子が勇気を出して告白するときは顔が真っ赤になると考えていた。だけどまぁ、人それぞれ何だろうな。北原はみじんもその様子を感じさせない。

 俺に緊張させないつもりなのだろうか。

「返事はいつでもいいですよ?」

「あ、いや、ここでする」

「そうですか」

「ああ」

 俺の答えは決まっている。

「北原、すまん」

「……そう、ですか」

 先ほどまでの笑顔は消えうせた。目線をそらしてしまって、罪悪感が一気に襲ってきた。

「理由とかありますか」

「あ、えっと……そうだな。ちょっと、あるかもしれない。今はまだ、言えないんだ」

「気になる子がいるんですね?」

「うん……いや、どうだろうな。俺もよくわかっちゃいない」

「そうですか。あの、頑張ってください。はは、馬鹿らしいですよね。ふられた女子は、手を引きます」

 一緒に帰り始めて校門前で別れてしまった。

「北原」

「はい?」

「お前が早朝、掃除を手伝ってくれた事嬉しかったぜ」

「今後も続けますから安心してください。じゃあ、また生徒会室で」

「ああ」

 北原は手を振って曲がり角に消えたのだった。


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