第二十二話:左野と中間テスト勉強
第二十二話
この前受けたばっかりの中間テストも気付けば二回目だ。暑さも控えめになってきてホッと一息……まぁ、冬になれば夏が恋しくなるんだろうけどな。
「二学期は長いから中間が来るのが早いと思っちまうのかね」
ため息をついたら幸せが逃げて行くってテレビで見たんだっけ……どうだったかな。
図書館で勉強するべきか、自宅に帰ってから勉強するべきか悩んでいると左野に出会った。
「偶然ね」
「左野の言葉から偶然だと聞くとこの前の事が思い出されるな」
「この前の事?」
もうとっくに忘れてしまったらしい。表情に出やすい後輩はきょとんとしてしまっている。
「ああ、それと、すまん。色々とやっちまってお前の後援会とどっかの誰かのチームが争いを始めた」
「は?」
「詳しく説明すると長くなるからな。とりあえず、お前も一緒に中間に向けて勉強するか?」
そもそもこの子は勉強できる方なのだろうか。
「勉強かぁ……あ、でも、リッキーも勉強を通じて仲良くなれるとか言ってたっけ。リッキーも呼んでいい?」
「別にかまわないぞ」
三人で勉強することになった為、自宅はやめて図書館になった。騒いで他の人の迷惑になるのは立場上まずいので人が少ない場所へと二人を案内する。
「図書館でやらしい事が行われているって聞いたことあるけどまさか……」
「いや、ないから」
左野は貧相、リッキーも貧層だからな。図書館の秘書さんでボインなら話は別だがね。そもそもそんな事が起こるのは創作ぐらいなもんだね。
「そっか、残念」
「リッキー……」
左野が首をかしげて教科書をとりだしていたので俺も教科書をとりだす。
「真白先輩に一年のわからないところを聞いて大丈夫よね? アホじゃないわよね?」
「お前俺を舐めてるだろ。尻に火がついた人間の能力、馬鹿にするなよ。一年生の頃はもっと真面目に生きていましたとも。ちなみに聞くけどさ、二人ともどの教科が苦手なんだ」
「国語かなぁ」
左野がそう言うとリッキーは一呼吸置いて答えた。
「保健体育を除くすべての教科」
「マジで?」
「一夜漬けの神様と呼ばれてます」
親指を立ててさわやかに微笑まれた。
「山を外すとそりゃもう酷いけどね」
「ギャンブラーかよ……」
「でも、リッキーって本当はすごいんだよ。この学園の入試の時……満点をとってはいったんだって」
「能ある鷹は爪を隠すってやつか。リッキー、真面目にテスト受けろよ」
俺の言葉にリッキーはだるそうに答えた。
「だってさ、面倒じゃん。単なるテストだからねぇ。入試は点数がなんぼだよ」
「成績に響くだろ」
「んー、私はすぐに働こうと思ってるから」
じゃあなおさら点数は取っておいた方がいいのではないかと考える。
「じゃあこうしよう。俺もリッキーの本気を見てみたいから賭けをしよう」
「ほほう、生徒会長ともあろう人がそんな事をしていいのかな?」
「これは俺個人の賭けだ。俺が負けたらリッキーの言う事を一つ聞いてやる」
胸を叩いて宣言するとリッキーはにやっと笑った。
「そっかそっか。本当にいいんだね? お約束の男に二言は無いぜをもらうまではちょっと信じられないなぁ」
「男に二言は無いぜ」
「よし、乗った。あ、それと左野が勝った時も同じことをしてやってくれないかな」
「左野とか?」
見たところ左野って其処まで勉強できなさそうなんだよなぁ。出来ても、一つずつずれていたり名前欄を書き忘れていたりしてそうだ。
「今失礼な事考えたでしょ」
「安心しろよ。ほんのちょっとしか考えてないから……いいだろう、そっちの条件も飲んでやるよ。勿論、こっちからは何も要求したりしないから安心してくれよ」
「よし、あ、それとね、こっちが勝った時に何をしてほしいか言うから」
「別にいいぜ」
リッキーはそこまで俺に納得させてから左野に何かを耳打ちしていた。
「初、がんばろう」
「え、う、うん」
顔を真っ赤に染めた左野が頷いている。
「なんだ?」
「作戦会議だよ。これで左野のやる気が五割アップ」
「マジかよ。一体どんな魔法だ」
五割アップとか俺だったら新作のゲーム機ぐらい買ってもらわないと無理なレベルだ。
「乙女の秘密だよ」
「乙女の秘密って……乙女って使っていいのは中学までだろ。左野は見た目オーケーだけどな」
「え、そうなの?」
ちょっと嬉しがっているところ悪いけど、からかったつもりなのだ。
「ともかく、真白先輩は中間テストを楽しみに待っててよ」
リッキーはどうやら俺にひと泡吹かせようとでも思っているのかな。
ま、これで頑張ってくれればリッキーの本気とやらを拝ませてもらえるからいいけどな。




