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第十二話:上条と本屋

第十二話

 学園内で上条龍美に会うよりも学園外で出会いやすいのは運命か。

 何とはなしに入った本屋で上条の後ろ姿を見つけた。

「上条」

「真白君か。びっくりさせないでよ」

「おいおい、声をかけたぐらいで驚くなんてありえないだろ」

 そういって何を見ているのかつい見ると『食コレ!今季はこれがクル!』と書かれていた。

「なるほど、こりゃ声を掛けられたら驚くか」

 他人に趣味を隠して生活しているのはさぞかし大変だろう。何せ、プライベートな時間で外を歩いていてもそれを知られないように振るまわないといけないからな。

「まぁね。誰だって隠し事の一つや二つ、あるでしょ」

「無い人はいないだろうなぁ」

 食玩のカタログらしき本の流し読みを再開させたので俺も本日発売のマンガ本を眺めに行く。

「おっと、売り切れか。マアゾンで頼むかな。ん?」

 視界の隅に十八禁のコーナーがうつった。

 そこには何となく、気になっていたエロ本が置かれている。

「……いや、しかしだ」

 後方には食玩の本を飛ばし読みしている上条がいるのだ。素早く手に取り、レジに行ったとしても気付かれるに違いない。

 それでも、なかなかいいエロ本のようだ。最近の商業誌はいまいちだと言う人もいるけど、やっぱり手軽にぺらぺら捲って堪能したい。

 エロ本を買っているところを友達に見つかるなんて末代の恥だろう。以前通っていた学園で見つかった男子生徒はこう宣言した。

「これはエロ本じゃないんだ。男のドリームなんだ。畜生、みんなだって買ってるだろうに何故俺が村八分をくらわなきゃならないんだっ。おれはこの学園きってのエロ本マスターになってやるぞっ」

 あの人は今、どうなったのだろう。

 その人物を思い出したおかげで俺は伸ばそうとしていた手を止めた。

「何してるの?」

 でも、残念ながらちょっと遅かったようだ。

 頭の中で何かがはじけ飛んだ錯覚を覚え、顔が一気に熱くなっていく。

「え、何でもねぇよ」

「どんなジャンルの本読んでるの? 興味があったから。知られたくなかったのなら悪かったよ」

 思った以上に大きな声を出したものだから上条も驚いて少しばつの悪そうな顔をしている。この時点でまだ気づかれていないようだ。

「い、いや、そういうのじゃないんだ。」

 俺の声が店内に響き渡り、迷惑そうな顔で立ち読み客と店員が視線を飛ばしてきた。

「悪い、ちょっと大きな声を出しちまった」

「ううん、いいんだよ。気にしな……」

 そこで俺が手を伸ばそうとしていた本の周辺が眼に映ったようだ。無言になって固まっている。

 とぼけるか、開き直るか。人生は選択の連続と言う言葉をよく聞くけど、本当にそうだな。

 女友達なら幻滅されないだろうから、とぼけてみるのも一つの手段だ。でも、失敗したらどうしよう。

「その、これは……あれだ」

「あ、えっと、これってちょっとした弱みになるかな」

「え?」

 恥ずかしくなったのか顔をちょっとだけ桃色に染めて上条に尋ねられた。

 質問の意図がわからない。それでも、素直に頷いておいた。

「そりゃあ、まぁな。そうだろうよ」

「じゃあ対等だね」

「対等? 一体どういう事だ」

「あたしは真白君に知られたくない事を知られたでしょ?」

「知られたくない事を知られた、ねぇ。うーん、何かあったかな。スリーサイズとか?」

 平手が飛んできた。よけきれず、右頬を叩かれる。

 大声を出した時とは違って好奇の目が俺へと向けられる。

「違うでしょ」

「え、だって俺は上条の何か秘密を握ってたかな」

「鈍いんだね」

「あ、食玩の奴か」

 そこでようやくピンと来た。そうそうと頷かれて何となく場が和んだと思う。

「弱みを握られた状態って嫌だよね。だから、これであたしと真白君はお互い首を絞め合った状態。もしくは拳銃をむけあっている感じかな」

「もうちょっと友好的な関係じゃないのかよ」

「それはそれ、これはこれだから」

 お前もか真白君と言わなくちゃいけないからねと首を竦められた。

「ま、男なら誰だって持ってるさ」

「うっわ、開き直った」

「何とでもいえ。聖人君子じゃないんでね」

 ここまで来たら気になるエロ本を買ってしまうべきだっただろう。俺はエロ本を買う勇気が無くそのまま上条と店外へ出る。

「えへへー」

「何だ、偉くご機嫌じゃないか」

「本当の意味で友達に慣れた気がするから」

「お前の言う友達はお互いの首を絞めている者同士のことかよ」

「やだな、殺気のは比喩だよ、比喩。やっぱり、真白君もぼいんでぷりんな子が好みなの?グラビアの……ほら、有名なあの子みたいな。あんなのにはどうやったらなれるんだろ」

「うーん、上条もいい線いってると思うぜ?」

 自分で言ってしまったと思う。案の定、顔を真っ赤にした上条が困った表情を浮かべている。

 そう言う目で見ていると言ってもいい発言だったんだろうな。

 何か言ってやればよかったのに俺はすぐさま忘れ物をしたとその場から逃げだしてしまったのだった。


読者のおかげで第十話突破、なんて一度でいいから言ってみたい。どうも、作者の雨月です。今回のメンバーはまともな奴がいない気もしますね。頑張れ、左野。上条の話は特別頑張りたいものの、心情としては左野に頑張ってもらいたい。今のところ、作者も忘れそうになる秋何とか実乃里。完全に捨て鉢の話になりつつある東にも頑張ってもらいたいものですな。プロローグが一体何なのか、その通りにすべきなのか作者が分からなくなりつつある今日この頃。次回は東編ですかね。ですよね、たぶん。

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