フニカ、発見する
主人公フニカで良かったんじゃないかなってレベルで活躍してる
会議は困窮を極めていた。
議題はドラゴンが群れた謎について、と変更はあったものの、アイディアを出すものはいない。難しそうな顔が並んだ会議室を覗くと、フニカは入ることなく踵を返した。
こんなところにいても時間の無駄だわ、と自分の家に戻った彼女は、研究に没頭しているであろう愛息子のために食事を作り始める。ハルヤの好物を頭の中でリストアップし、買い物に出かけるフニカ。
しかし、街の混乱は相当なものである。
その上シルバーバッチを持つ者はほとんど会議室に缶詰だ。ブロンズバッチを持つ者をリーダーに街を復興するというのも無理があるようで、未だ混乱は収まっていない。
買い物もままならなさそうね、とフニカはため息をついた。
だからと言って、彼女にできることなんて特にあるわけではない。
はぁ、とため息をついて街の外に出た。
ハルヤの好物であるサラダの材料は、すぐ近くに群生している。
ドラゴン襲撃からそう日が経っていないのに街から出ることは危険だったが、ハルヤの話を聞く限りドラゴンたちはアマヤが張った結界を破ることに躍起になっている。
彼らはしばらく襲撃してこないだろう。この結界は命と引き換えにしている分、命をかけなければ解けることはない。
プライドが高いと言われているドラゴンたちが、たかが人間の張った結界を破るためだけに命を投げ捨てるとは思えなかった。
「あら?」
フニカが立ち止まったのは、以前ハルヤがゴブリンを吹き飛ばした場所。
普通の者なら気が付かなかったであろう、その違和感。
がさがさと茂みの中に入ったフニカは驚愕する。
「これ……」
少し奥に進んだところにあった、足跡。
それか確実に、いつか読んだドラゴンのものだった。
記述よりは小さかったが、確かにこれは……と思案するフニカ。
それに、すぐそばに小さな鱗が落ちていた。
フニカはそれを拾い上げ、しげしげと見つめた。これはきっとドラゴンのものだろう。
ドラゴンの足跡は、茂みの外に向かっている。そして突然、ゴブリンのものに変化していた。このことから考えられるのは、知られざるドラゴンの能力。
「変化の魔法……」
ドラゴンが使うものが魔法なのかはわからないが、フニカの口からはそんな言葉が漏れ出した。
こうしちゃいられないわ、とフニカは街へ戻ろうと、サラダの材料のことも忘れてハルヤがいる研究室へと向かった。