味方ができました。
カーチャンの偉大さ
「ハルヤ? ……何を調べてるの?」
本を積み上げ、ものすごい勢いで指で文字を追うハルヤを発見し、怪訝な表情をするフニカ。
ハルヤの周りに積んである本は、すべてドラゴン関連。そのことに気付いたフニカは、わかってしまった。
小さな息子がドラゴンに挑もうとしていること、止めても無駄だろうということ。
そして、失敗した時は義父だけでなく、息子まで失うことになるであろうことを。
「ハルヤ」
「お母さん、オレは死なないよ。危険なことはしない。じいちゃんと約束したもん」
六歳とは思えない、はっきりとした意思表示。
フニカはため息をついた。この子はやはり他人とは違うのだと。
頼りない小さな存在だが、義父のようにこの街を守ることができる存在になる、という確信めいた思いがフニカの胸に広がった。
「わかったわ……もう何も言わない。もし協力できることがあったら言うのよ、お母さんだってまだ貴方に負けてないのだから」
フニカの胸に輝くシルバーバッチ。同じランクだが、年月が違う。
友達がいないハルヤにとって、唯一の味方である。そんなに強いわけではないのだが、誰よりも心強く感じた。
「ありがとう、お母さん」
ハルヤがそう言うと、フニカは微笑み本の山の上を浮いて移動すると、ハルヤの隣に座った。
「何を調べてるのかしら?」
手伝うことにしたようである。
ハルヤは嬉しそうに笑う。
「ドラゴンがどんな時群を作るのか、だよ!」
と、元気に答えた。
フニカの職業は司書である。調べ事は得意だった。任せて、と呟くとハルヤの三倍はあろうかというスピードで本をめくり始める。
ハルヤも負けてはいられない。
彼の文字を追う指が速度を上げる。
アマヤの書斎には、長いこと本をめくる音だけが響き続けた。