大人なんて!
子どもだからってなめるなよ!ふん(byハルヤ)
「これより、対ドラゴンに関する考察を行う。何か意見のある者はいるか」
ユキヤがぐるりと会議室を見渡す。
アマヤの葬儀は、ドラゴンについて何かわかってからにしようということになった。
街を守った英雄を、何も知らせずに葬るのは失礼だという意見が出たからだ。
それまでは魔法で遺体を保護し 、(尊厳などの法により本来は禁止されているのだが、賛成した者が大勢いたのでアマヤの息子であるユキヤが魔法をかけた) 生前彼が使っていたベッドに寝かされている。
この会議室には、シルバーバッチ以上を持つ者だけが集められた。
ドラゴンの襲撃により、精神的に弱りきった者もいたため、ゴールドバッチだけでは太刀打ちできないだろうというユキヤの考えからである。
おかげで、ハルヤもこの席に同席することができて助かった。ユキヤはハルヤを連れていくことを渋ったが、シルバーバッチを持っている以上参加拒否はできない。
渋々彼を連れてきたのだ。
「ドラゴンが集団で襲ってきた理由、並びにどうしてドラゴンが集団を作ったのか考え、話し合いをするべきだと思います。ドラゴンは賢い生き物なので、こちらが礼儀をもって接すれば必ず答えてくれるはずです」
ハルヤが席を立ち、椅子の上に立って演説する。そうしなければ机に隠れてしまうからだ。
「子供がでしゃばるな! 兄さん、どうしてこいつを連れてきた!」
父を殺されたことにより、カリカリしたクラトが怒鳴る。
「クラ、私もハルヤを連れてくることは渋ったのだ。しかしハルヤ自身が行きたいと希望し、この会議に参加する資格は持って……」
「うるさい、そんなことは聞いていない! 確かにハルヤは天才だ、しかし今この状況でこいつに何ができる! こいつは魔法薬の天才だ。今までの平和な状況においては才能を発揮できただろうが、いざとなれば尻尾巻いて逃げ出すに決まってるだろ!」
クラトはヒステリックに叫ぶと、抵抗するハルヤを抱き上げ会議室の外へと放り出した。
ドラゴンへの恐怖。それが、彼を変えてしまったのかもしれない。
最強の魔法使いを倒されてしまったドバルの街――アマヤが使った守りの魔法は十年しか持たない。
クラトは絶望していた。
必ずこの戦いは負ける運命にあり、死の瞬間をずるずると引き延ばしているということを、彼は悟っているのである。
死にたくはない。しかし、必ず死ぬ。いっそ殺してくれと願うが、死ぬのは怖い。
クラトの中で、そんな感情が複雑に渦巻き心を塗りつぶしていた。
ばたん、と閉められる会議室の扉。
扉の向こうで、ユキヤが戸惑ったように会議を再開していた。
ハルヤを呼び戻す気は無さそうだ……そりゃそうだろう、彼は最初から、ハルヤをこの会議につれていくことを反対していたのだから。
ハルヤは、目を閉じて祖父の言葉を思い出す。
「会議というのは、いくら開いても駄目じゃ。あれが最善というものを潰す」
わかったよ、じいちゃん。と、ハルヤは目を開けた。
ドラゴンの事は、自分一人で解決する。と、心に決めたハルヤ。
どうせ、大人に任せていたらあっと言う間に十年過ぎてしまうのだ。
しかしハルヤに友達はいない。同年代の子供と遊ぶよりも魔法薬の研究が好きなハルヤは、いつも祖父と一緒にいた。
学校にも行っていない。
本当に、一人で解決するしかないのだ。
ならば、力ずくで攻めても殺されてしまうだけだ。それに、祖父はなるべく実力行使というものを避けていた。そんなことをすれば、強い者の独裁政治になってしまうことが目に見えていたからである。
もちろん、アマヤは独裁政治なんて望まなかった。
しかし、次の世代、その次の世代に必ずそういう者が出てくる。
それを防ぐためにアマヤは自分で、次世代の守護者を選んだ。
ハルヤは、選ばれたのだ。アアヤに。敬愛する祖父に。
その期待に応えるためには何をするべきか。
「……ドラゴンの、生態」
まず、これを調べ直す必要があった。プライドの高いドラゴンたちが、気楽な単独行動をやめるという例外が、今までになかったか調べるのだ。
ハルヤは祖父の眠る家に向かう。あそこなら、図書館よりも正確な情報を得ることができる。
大人なんて信じない、とハルヤはうっすらと涙が浮かぶ目を擦り、歩きだした。