お風呂に入りなさい
お風呂は体を清めるためだけに入るのではありません。
赤く揺れる気体。
しゅわしゅわと音を立ててハルヤの体を取り囲む。
「まだいいよ、あとで必要な時に飲むから」
なるべく冷静を装おうとしているが、ハルヤの声は興奮で弾んでいる。
その声を聞いて理解したのか、気体はハルヤが持つ瓶に入り、おとなしく栓をされた。
瓶の中で気体は自分の意志を持っているかのようにふわふわと揺れ動いている。
変身薬が成功したのだ。しかも、この薬は言うことを聞き、理解し行動にうつしてくれた。
これは新たな、そして大いなる進歩の第一歩の予感がしている。ハルヤの胸はおおいに踊り狂っていた。
変身薬を懐に入れると、ハルヤはフニカが待っているであろう自宅へ向かう。
長いこと研究に没頭していたせいで、腹ペコだ。
「ただいま! お母さん、薬できたよ!」
変身するものが決まっていれば、割と簡単に薬は完成する。この事がわかったからには、これから新たな薬を大量に生産できる。ただし変身する個体の細胞が必要だが。
「おかえり。ご飯もできてるわ、食べましょう」
「お父さんは?」
「ユキヤならさっき一度帰ってきて、またすぐ戻ったわ」
むす、とした表情を見せるフニカ。力を入れて作った料理をかきこむようにして食べられたことを不満に思っているのだろう。ユキヤの仕事が忙しいときにはよくあることだ。
「わぁ、おいしそう」
出てきたサラダ等の自分が大好きな食べ物がずらりと並ぶ光景に感嘆の声をあげるハルヤ。
息子のそんな様子を見て、少しだけ機嫌が直ったフニカはハルヤの向かいに座った。
「じゃあ、食べましょうか」
「うん、いただきます」
ハルヤの空っぽのお腹にはどんどん食べ物が詰め込まれていく。大好きなサラダ、スープ、焼いたモンスターの肉。
ここまでどんどん食べ物が消えると、いっそ清々しい思いに包まれるフニカは、自分もハルヤに負けじと食べ始めた。フニカだって空腹なのだ、このままでは全部ハルヤに食べられてしまう。
「で、ドラゴンの巣へ潜入するのはいつにするの?」
一通り食べ終わったあと、フニカはハルヤに尋ねる。お腹が落ち着いたら片づけようと、食器類を机の端に寄せた。
「明日だよ、今日はもう遅いし、ドラゴンが夜眠るのかどうかはわからないけど……オレ、もう眠たいや」
「……そうね、もう日が落ちてから結構経つものね。じゃあ、明日の朝も腕によりをかけてご飯作っちゃう」
材料は何があったかしら、と明日の献立を考え始めたフニカ。
ハルヤは重くなる瞼をこすりつつ、幼いころ読んでいた薬学入門本がたくさん並んでいる部屋へ戻ろうと席を立った。
「あら、ハルヤ。寝る前に体きれいにしなきゃダメよ。お風呂入りなさい」
「めんどくさいよー」
魔法で体を清めてもいいが、それでは疲れがとれない。
長いこと実験室に籠って変身薬を作っていたのだ、幼いハルヤの体は悲鳴をあげているはずだ。
「魔法じゃだめなの?」
「あら、私はやってあげないわよ」
むむむ、とハルヤはフニカを睨む。
ハルヤはまだ体を清める魔法が使えないのだ。薬は一人前以上に作れるのだが、肝心の魔法力はまだまだ子供。アマヤもハルヤに同年代の子供が使える魔法しか教えなかったのである。
「……入ってくる」
すまし顔で椅子に座るフニカが折れることはないと判断したのか、ハルヤは部屋ではなく風呂場へ向かった。
「一緒に入るぅ?」
フニカは楽しそうにハルヤの背中に声をかける。
返ってきたのは、
「いらないよ! もうそんな子供じゃないんだから!」
との怒鳴り声だった。
「……まだまだ子供ねぇ」
大人の男は喜んで一緒に入るのよ、とハルヤにはまだ早すぎるであろう言葉を聞こえないように呟くと、フニカは洗い物を片づけようと重い腰をあげ、食器たちに手をかざした。
人妻と一緒に風呂なんてなにが楽しいんだよと思った皆様、人妻もいいものです。エロいし。団地妻のAVなんてすごいじゃないですか。パッケージしか見たことないけど。




