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プロローグ

ぐろい描写はしてませんが人は死にます。

大人が子供っぽすぎるように感じられるかもしれません。


 ドバルの街は、大きな結界によって守られている。

 その安全な結界の中から出る者はほとんどいないのだが、結界に沿って歩いている二人の魔法使いがいた。

「じいちゃん、特に異常無さそうだな!」

 片方の魔法使いが辺りを見回しながら言う。

 まだ小さな子供だ。しかし、既に魔法使いとして認められているようで、胸にはシルバーバッチが光っている。これは魔法使いの階級を表すもので、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナの四種類がある。大半の魔法使いは一生をかけてもシルバー止まりだというのに、彼は幼いながらに多くの魔法使いと同等の力を持っているようだ。

「ハルヤ。そう急くでないぞ、もっと注意深く辺りを観察するのじゃ……多くの不幸には何かしらの前触れがあるものじゃからな。それも、大きな不幸ほど小さな前触れが多くあるものじゃ」

 ハルヤを窘めた老人の胸には、なんと最上級クラスのプラチナバッチが。そう、ドバルの街を守る結界を維持しているのは、この老人――ハルヤの祖父でもある――の力なのである。

「はーい、ごめんなさい」

 ハルヤは浮かれていた自分を恥ずかしく思い、大人しく祖父の傍を歩き始めた。

 二人は街を守るためのパトロールをしているのである。もしも何か異変があれば、いち早く気付き街の者に感付かれる前に解決する。それが、老人、アマヤの仕事であった。

 ハルヤはそんな祖父に憧れ、自分も彼のようになりたいと願い必死に魔法の練習を重ねとうとうシルバーバッチを取得した。

 それがパトロールについてくる最低条件だったのだ。

 ハルヤにとって初めてのパトロールなので、浮かれるのも仕方ないといえば仕方のないことなのだが……。

 二人は異常がないか神経を研ぎ澄まし歩く。

 もうじき街の周りを一周してしまう。今日は何の異常もないようだ。

「ふむ……ハルヤは残念だろうが、本日も平和なようじゃの」

 アマヤが微笑むと、ハルヤは唇を尖らせる。

「別にオレ、何かあって欲しいわけじゃないよ。平和な方がいいもん」

 まったく、と少し肩を怒らせながらアマヤの前を歩き始めるハルヤ。

 その時、街の傍の森から、ガサリ、と音がした。

「何者だ!」

 ハルヤは嬉しそうに声を上げた。

 しかしすぐに我に返りアマヤを見上げ、微笑む彼と目が合うとばつが悪そうに頭をかく。

 やはり異変が起きてほしかったようだ。

「ハルヤ。気をつけなさい、力の強い者だ」

 アマヤの言葉でハルヤの表情が引き締まる。自分がうまく使える攻撃魔法を頭の中で一巡し、音のした方へ手をかざした。

 集中力を高め、音の主を待つ。

 がさがさ、と生い茂る草が揺れた。

 そして姿を現したのは――ゴブリン。

「風の御心よ、邪悪な心を持ちしかの者を追い払いたまえ!」

 ゴォッと強烈な爆風がゴブリンを襲い、森の奥深くに追いやってしまった。

 ハルヤがゴブリンの姿を視認した瞬間攻撃魔法を放ったのにも、アマヤがそれを止めなかったのにも理由がある。

 この世界では、ゴブリンという存在は決定的な悪だ。傍にいるだけで災厄が降りかかる等、多くの言い伝えがある。中には、ゴブリンは見つけた瞬間殺してしまうという街もあるくらいだ。

 しかし、アマヤは眉間に皺を寄せる。

「おかしいのう……」

「じいちゃんどうしたの?」

 ハルヤが、初めて街を守ったことで嬉しそうな顔のままアマヤに駆け寄る。

 アマヤはひとまず眉間の皺を和らげ、ハルヤの頭を撫でた。

「いや、なんでもない。それよりも、今の風の魔法は見事じゃった。さすが最年少シルバーじゃの」

 一瞬満足そうに笑ったハルヤだったが、すぐに怒った顔に変わる。

「最年少シルバーはじいちゃんだろ! それに、オレより年下でシルバーになったのはじいちゃんの他に三人もいるよ」

 充分すごいことなのだが、ハルヤは祖父を越せなかった事、記録を塗り替えられなかったことが悔しくてたまらないのだろう。

「ならば、今期最年少シルバー、で良いかの。なぁに、最年少ゴールドならばまだ間に合うじゃろう。そうカッカしなさんな」

 向上心の高い孫に、誇りのようなものを感じるアマヤ。しかし、先程のゴブリンが気になっているのか、すぐにまた思考が戻ってしまう。

 そんな彼に気付かず、ハルヤは何も考えず喜びに浸っていた……。





 街に戻った二人を出迎えたのは、多くの依頼だった。

 唯一のプラチナバッチ所持者であるアマヤを頼る魔法使いたちはあまりにも多い。それでも、アマヤは文句一つ言わずににこにこと街の人達の困りごとを解決していく。

「おぉ、これはハルヤの得意分野じゃな」

 アマヤはハルヤの肩を叩いた。

 依頼者は幼い少女で、驚いたようにアマヤとハルヤの顔を見比べている。ハルヤよりも年下のようで、ブロンドバッチも付けていない。

「ハルヤ、その子に()(よく)(やく)を作っておやり。母親が風邪をひいてしまい、魔法力を抑えられず暴走しているようじゃ」

 ハルヤは魔法薬が得意だ。状況を呑みこむと、任せて、と目を輝かせる。

「作らなくても持ってるよ。これオレが調合した魔抑薬。氷を浮かべた水と一緒に飲むとよく聞くから。それから、これは()(ほう)(やく)。風邪が治ったらこれも氷を浮かべた水と飲んで」

 と、二つの錠剤を取り出す。

 どうやらハルヤの懐には、常に数種類の薬が所持されているらしい。

 少女は嬉しそうに、ありがとう! とお礼を言うと、家に駆け戻って行った。

「やはり持っていたのじゃな」

 ふぉっふぉっふぉ、と笑うアマヤ。ハルヤがいざというときのために薬を持っていたことを知っていたのである。

「うん。役に立てて良かった」

 ハルヤは少女の小さくなっていく背中を見送っていた。

「その気持ちを忘れるでないぞ。わしの後継者になるには、それが一番大事じゃ」

 なりたいのじゃろ? とアマヤは微笑む。

「うん! オレ、もっとたくさんの人の役に立ちたい!」

 ハルヤは嬉しそうに笑う。

 街の人達もほほえましそうにその光景を見ていた。

「ハル坊の気持ちだけはもうドバルを守れてるんだがなぁ」

 くしゃり、とハルヤの髪の毛を撫でる男。

「あ、クラおじさん」

 アマヤの第二子であり、ハルヤの父親の弟だ。クラト、周囲にはクラと呼ばれている。

 残念ながらアマヤ程の力は授かることができなかったが、それでも若くしてシルバーバッチを手に入れた有力者だ。

「シルバー取ったんだってな。おめでとう。お前の作った変身薬はすごいな、往来の変身薬には副作用があったが……まったくピンピンしてらぁな」

 彼の仕事は街の周りにいる動物たちの管理である。そのため、小動物に変身しては噂を聞いて、小動物達の生活を平和に保っているのだ。

「うん、それは良かった。クラおじさんいつも辛そうだったもんね」

 ハルヤが変身薬の研究を始めたのは、他でもないこのクラトが往来の変身薬により、いつも気分が悪そうだったからである。

「おう、ありがとよ。助かったぜ」 

 クラトは豪快な笑い声を上げた。

「ハルヤの薬が人の笑顔を生んだのじゃぞ。誇りに思うといい」

 と、アマヤ。

 しかしその言葉にクラトは表情を曇らせた。

「おい親父、いつも思ってたんだけどよ、まだハルヤは子供だぜ? 確かに才能はあるけど、パトロールとかに連れていくのは危険だと思うんだけどよ」

 可愛い甥っ子が怪我をすることは避けたい。

 そんなクラトの思いは知っていたアマヤだが、ハルヤの才能を閉じ込めておくには余りにも惜しいものであることもわかっていたし、何よりハルヤがやりたがっているのだ。

 ハルヤを可愛がっているのはアマヤだって同じである。

「大丈夫じゃ、わしが命に代えても守って見せるわい」

 クラトにだけ、こっそりと言うアマヤ。

 そういう問題じゃねぇだろうがよ……と、クラトはあきれ顔だが、どうしても止められないだろうとため息をついた。

「……ハルヤ、無理はするなよ」

 とだけ言うと、クラトは自分の仕事に戻って行った。

「じいちゃん、クラおじさんがまた元気がなくなってたけど、変な副作用とか出ちゃったのかな?」

 ハルヤの瞳が不安げに揺れる。

「大丈夫じゃ、ちょっと心配ごとを抱えておるのじゃよ。ハルヤの薬でなんとかできる代物ではなさそうじゃ。さて、仕事を続けようか」

 クラトが来たことで、止まっていた困りごとの解決を再開するアマヤ。

 シルバーバッチを手に入れたことで、魔法薬関連のことは大抵任させるようになったハルヤは、嬉しさと同時にクラトの事も気になっていた。

 帰ったらもっと改良した変身薬を作ろうと心に決め、まずは今目の前にある仕事をしようと、薬の調合リストを作り始めた。


前作の半年後くらいに書いたものです。

なんてこった!三人称だとやたら上から目線で腹が立つ!

精進しまーす


これ投稿する時に三回くらいエラーくらってこれ書くの三回目。くそー


そしてプロローグに第一話を更新してしまっていたという悲しい事実。慌ててプロローグ挿入しましたとさ。ヤベェエエエエエエエエエエ

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