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R童話-名無しの世界-情景童話

肴屋

作者: RYUITI

世間知らずな若い女と店主のお店のお話

 昔むかし、あるところに、一人の男がいた。


男の名は忘れてしまったが、その男は魚屋をしていた。

元来、魚屋というものは活きのよい時に売り捌き、

夕や夜をかけ、次の日の魚を取ろうとするものだと思っていたのだ。

だが、

その魚屋、朝はとんと客が来ずにいるではないか。

それどころか、朝を越え、昼になろうと、活きの良い魚を求めて人が集う事も

無かったもので、

さぞや、暇をしておるだろうと思っていたのだが、

そうではなかった。


穏やかな風と静かな川の音が聞こえる夕時、

その魚屋にぽつり、ぽつりと人が集い出したではないか。


何故今になって人が集い出したのだろうか。


少し風が止み、川の水によって寒々しくなろうとも、

人々の集いの流れは衰えず、あっ という間に、

来るわくるわ、なんという人の数だろうかという程に

賑わいを見せてしまったのだった。


何事か、 と思って魚屋の様子を見ていると、

皆、手に何かを持っているのが見えた。

それも一人二人などではない、大勢の者が持っているのだ。


その様子を見て、なんだか恐ろしくなってしまっていたところ、

一つの影がこちらへ向かってくるではないか。


.ううむ……これはきっと何か大きなことが始まるのだろうなと、

先ほどよりも深く用心していると、その影はぴたりと若い女の前に止まりこういったのだ。

 .お嬢さん、そのように用心しなくともこの店は恐ろしいことはなにもない。


信じがたい、なんとも信じがたいと思って、

ならば、人が来ぬ店にならば何故このように人が集っているのか。 と言い返すと

男は呆れたように言葉を紡いだ。

.この店は取った魚を、塩に漬けたり、酢で締めたりしたものを酒と共に出す所なのだ。と

それを聞いて女は、

ほう、そんなところもあるのかと思って危うく安堵しかけたが、

首をふるふると振り次の問いを投げかけた。

 集っている皆が持っている物はなんなのだと。


すると怪訝な顔をした男が一言。

 .あれは酒だ、酒の入った木の器だ。と


それを聞いて恥ずかしくなった若い女は直ぐ様、

その場から逃げようとしたのだが…その刹那、

手を掴まれてしまっていたのだ。





こうして、酒と肴を出す魚屋を知った女は、数年の折、

あの時知り合った男と共に妻として【肴屋】を生涯切り盛りさせていくことになるのだった。


【おしまい】


肴屋を読んで頂きどうもありがとうございます。

これからも宜しくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 昔話のような読みやすい文体で内容がスラスラと頭に入ってきました。楽しく読ませていただきました。 [気になる点] ラストが少々、唐突に感じました。何故、女性が魚屋の妻になったのか、ということ…
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